「三権分離」で農業の大規模化を推進、外資の進出も=中国
中国は2014年、農地についての「所有権」、「請負権」、「経営権」の分離により、農業の大規模化をこれまで以上に推進する見通しだ。中国新聞社などが報じた。
中国は社会主義国家として、個人や法人による土地所有を認めていない。国家あるいは国家が資格を付与した「集体」が土地を所有する。しかし改革開放後、土地を所有する「集体」は長期間にわたる土地の使用権を個人や企業に「貸し出す」方式で、事実上の「不動産市場」が出現した。
農地の場合、耕作者が土地を利用した農業活動などを「承包(請け負う)」形で、個人経営が行われるようになった。当初は農業生産を請け負うに農民は農業税が課せられたが、立ち遅れた農村・農業・農民の問題(三農問題)の打開策の一環として、農業税は2012年までに撤廃された。
農地の「請負権」を持つ農民が、他者と契約して土地の使用、つまり経営権を譲渡する試みは、すでに始まっている。
安徽省では、農地の「信託制度」として、一定期間内の農地の経営と管理を農民が信託会社に委託し、さらに信託会社が他者と契約することで、農業に対する資本投下を促進している。
ドイツのバイエル(バイエルAG)の中国法人である拝耳作物科学(中国)有限公司は外資として初めて、安徽省内で農地を利用して生産を行うことを決めたとされる。
農地の「請負権」と「経営権」を分離すれば、「請負権」所有者には安定した収入がもたらされ、仮に「経営権」を取得した企業などが事業に失敗したとしても、本来の農民が持つ「請負権」には影響しない利点があるという。
農村経済体制と経営管理司の張紅宇司長は、「請負権」と「経営権」の問題は、食糧確保にも貢献するとの見方を示した。中国には2億6000万世帯ほどの農家があるが、60%-80%は主要食糧を自家で消費している。
商品として流通する穀物を生産しているのは経営主体の20%-40%というのが現状だが、商品化される作物の供給を向上させるには、土地制度の解決が不可欠との考えだ。
実際には請け負った土地をさらに他者に貸し与える動きはかなり進んでおりおり、2013年11月末までに、全国の農地のうち26%が、「請け負い権利保持者から第三者に貸し与えられてる」状況という。
2014年には、「請負権」と「経営権」の分離がさらに進み、制度化されていくとの見方がある。実現すれば、中国において農業の大規模化が推進されると考えてよい。
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◆解説◆
農業の大規模化で生産効率は上昇するとみてよいだろう。経営側が効率重視の経営を行うことは間違いない。ただし、新たな「農場」でも労働力は必要であり、「農場従業員」の権利保護や法外な搾取の防止など、行政側の監視と管理の意思とその能力が試されることになる。
中国には、日本の労働組合に似た組織である「工会(ゴンフイ)」がある。ただし、「工会は共産党の指導を受ける」となっており、共産党が経営側と工会の調整を行うことになる。
そのため、一般労働者が「工会は自分らの利益を代表していない」と怒った結果、事実上のストライキが発生する場合もある。極端な場合には、暴力事件に発展する例もみられる。
農場を経営する企業は人件費などコストをできるだけ抑えようとするのは確実であり、農業の大規模経営の推進はひとつ間違えれば、社会不安を増大させることになる。
また、家族規模の農業経営ならば、「自分の農地を大切に、子子孫孫まで使えるようにする」という考えも育ちやすく、農業活動が環境の保全に結びついていくという利点もある。代表的な例が、日本で行われてきた水田による稲作だ。
大規模経営で契約期間も限られている農業の方式を極度に推進した場合、その場の効率のみを追求した結果、表土の流失や塩害が発生し、「持続する農業」が困難になる可能性もゼロとは言えない。(編集担当:如月隼人)
中国は2014年、農地についての「所有権」、「請負権」、「経営権」の分離により、農業の大規模化をこれまで以上に推進する見通しだ。中国新聞社などが報じた。
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2014-01-14 13:00