マイナス金利で円高が進む? =外為オンライン佐藤正和氏

 日銀によるマイナス金利導入以後、円安に進むと思われていた為替相場は、変動幅の大きな荒れる相場になっている。それに伴って株式市場や商品市況もボラティリティ(変動幅)が高くなっており、トレードは難しい局面に入っている。マイナス金利導入によって進むと思われていた「円安」はどうなるのか。不透明さを増す為替市場はどこへ行くのか。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に3月相場の行方を伺った。 ――マイナス金利の導入で円は安くなるのではなかったのでしょうか?  本来であれば、金利が全体的に下がって円が売られるはずですが、金融市場ではそう簡単に判断されないようです。ただ時間はかかるかもしれませんが、長期的に見れば円安の傾向は強まるのではないでしょう。実際に、国債の金利はイールドカードを見ても分かるように、期間別にみて金利が一律に下落していますから、徐々に金利が低下して行くことになると思います。  ただ、輸出関連企業などの想定為替レートは円安に設定されていますから、年初からの急激な円高では、どうしても企業の業績悪化を招いてしまいます。実際に、最近になって業績の下方修正を出した企業が多かったと思います。業績悪化予想で株が売られ、その結果としてドル円相場などもボラティリティの高い不安定な市場になってしまいました。  また、日本国債の金利が下落している状況では、国債本体の価格が上昇しているため、ヘッジファンドなどの海外投資家は高い価格の国債に積極的に投資しています。「通貨スワップ」と呼ばれるデリバティブ取引を使って、ドルを円に替えて高い上乗せ金利を得る投資家が多く円高に振れやすい。そんな状況もあって、当面は円高トレンドが続く可能性が高いかもしれません。 ――今後、日銀のさらなる金融政策というと何があるのでしょうか?  まずは3月14~15日に行われる「金融政策決定会合」で、どんな政策を打ち出してくるかですが、マイナス金利のさらなる拡大があるかもしれません。また、国債やETF、REITの購入額を拡大する量的緩和の拡大もあるかもしれません。  このところの急激な円高で、アベノミクスが重視している賃金上昇が思うように進んでいません。賃上げ要求を見送る労組も出て来ており、賃上げのシナリオを確実にする意味でも、日銀が何らかの量的緩和策などの手を売ってくる可能性はあるかもしれません。  日銀の政策決定会合の直後には、米国FRBのFOMC(連邦公開市場委員会、3月15-16日)もあります。米国経済は、マークイットの米製造業PMI(景況感指数、2月、速報値)が節目の50を割り込んで49.8になってしまいました。  雇用統計では、直近3か月で非農業部門雇用者数が平均23.1万人増と堅調。失業率も4.9%と低下しており、少なくとも雇用に関しては順調に推移しているものの、PMIの50割れは2年ぶりでちょっと気になるところです。 ――3月のドル円相場の見通しを教えてください。  とりあえずは、4日の米雇用統計の行方に注目したいところですが、ドル円の予想レンジは「1ドル=110円-115円」と見ています。110円を割り込むと一気に105円程度まで円高が進んでしまう可能性も捨てきれませんが、3月は各国中央銀行の金融政策を決定する会合が続いているため、慎重にマーケットを見定めたいものです。  また、2月27日に閉幕した「G20(主要20か国財務相・中央銀行総裁会議)」では、市場の安定化を求めるメッセージは出ましたが、具体策に乏しく、安心感は与えたものの相場への影響は限定的、と見ている市場関係者が多いようです。いずれにしても、現在は「円の独歩高」の状態。3月相場はやはり急激な為替変動に細心の注意を払う必要があると思います。 ――EUは英国の離脱を巡って揺れ動いていますが……?  英国・キャメロン政権の目玉ともいうべきEU離脱の是非を問う国民投票が、この6月にも実施されようとしています。次期首相とも言われるロンドン市長のボリス・ジョンソン氏が英国のEU離脱支援に回るなど、国民投票の結果は予断を許さない状況です。  こうした動きに対して、EUは英国の「特別扱い」を決めていますが、移民問題などが絡んでいるため、やはり国民投票で決着をつける以外に結論は出ないかもしれません。そんな状況の中で、英国ポンドは活発に取引されて大きく売られています。とりわけ、ポンド円相場では1ポンド=200円直前まで行ったレートが、いまや瞬間的に152円台までポンドが下落。ここでも円の独歩高が進んでいるようです。  一方、ECB(欧州中央銀行)は10日にも理事会がありますが、マイナス金利や量的緩和の拡大が予想されます。英国の離脱も気になるところですが、何らかの景気対策が必要かもしれません。 ――英ポンドとユーロの予想レンジは?  英国ポンド円は「1ポンド=150円-160円」というところでしょうか。1日で3円も動くことがありますから、ボラティリティには要注意です。ユーロ円は「1ユーロ=120円-130円」と予想しています。ワイドな予想レンジになっていますが、これぐらいのボラティリティは想定しておいた方がほうが良いかもしれません。 ――豪ドルは、原油価格、中国危機の割には落ち着いているようですが?  3月の豪ドルの予想レンジは、「1豪ドル=79円-83円」と見ています。3月は中国の全人代が5日から開催されますが、ここで何か新しいことが出てくれば豪ドルももう少し動くかもしれません。  原油価格に関しては、1バレル=26ドル台という底値を2度達成しており、テクニカル的にはダブルボトムを形成しつつあります。そういう意味で言うと、日経平均株価、ニューヨークダウもダブルボトムを付けており、テクニカル的にはそろそろこのリスクオフ相場も終焉に近いのかな、という予感はあります。 ――3月相場で注意すべきポイントは?  ボラティリティの大きな相場は、まだまだ続くと考えていいのではないでしょうか。やはり、ポジションを抑えたトレードが必要なのかもしれません。金融市場特有のリスクだけでなく、地政学リスクなども絡んできているため、どうしても構造的に円が高くなる傾向があります。当面、1ドル=120円を超えるような円安は望めないかもしれません。(文責:モーニングスター)。
日銀によるマイナス金利導入以後、円安に進むと思われていた為替相場は、変動幅の大きな荒れる相場になっている。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に3月相場の行方を伺った。
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2016-02-29 15:45