動かざること山の如し…中国軍の挑発には孫子の兵法に倣って冷静に対応すべし

日本経営管理教育協会が見る中国 第285回--水野隆張(日本経営管理教育協会営業部長) 《中国国防部が東シナ海上空に防空識別圏を設定》   2013年11月23日、突如として中国国防部が東シナ海上空に防空識別圏を設定したことで、日米と中国の間の緊張が一気に高まっている。日本政府は直ちに中国に対して撤回を求めたが、中国国防省の楊宇軍報道官は11月28日の記者会見で、中国が東シナ海に設定した防空識別圏の撤回を日本が求めたことについて、「まず日本が44年前に設定した自国の防空識別圏を撤回するよう求める、そうすれば中国は44年後に(撤回を)考えてもいい」と常軌を逸した発言を行っている。 《用兵攻戦の本は、民を壱にするに在り…荀子》   強気で南進政策を進める中国は国内で様々な問題を数多く抱えている。まず、中国国内では格差に対する不満が渦巻いている。中国の北京大学が2013年8月3日に発表した調査結果によると、都市部の最富裕層(上位5%)と最貧困層(下位5%)の世帯年収を比較したところ、242倍の格差が存在し、格差の幅も急速に拡大していることがわかった。北京では3中全会の前に、天安門前で車両突入・炎上事件が発生し、山西省の党委員会庁舎前では連続爆破事件が起きた。また、中国学者による推計では中国では年間20万件ものデモなどの集団抗議活動が発生しているという。その大半は、不当に安い価格で土地を奪われ、生活できなくなった農民によるものだ。さらに、収賄罪で無期懲役が決まった元重慶市党委書記の薄熙来受刑者の支持者らがネット上で「中国至憲政党」と名乗る新党を結成し、話題を呼んでいる。   振り返れば、古の昔から日本人は中国の古典文化に畏敬の念を抱き学び親しんできた。例えば孟子の性善説に対して荀子は性悪説を唱えた。即ち、「人の性はあるがままに放任しておけば、必ず自己中心の利欲をほしいままにして他の利害を顧みなくなり、そこに争奪が起こるがゆえに、礼をもってこれを抑制しなければならないといって礼論を書いている。そして戦いに関しては「用兵攻戦の本は、民を壱にするに在り」と説いている。その意味するところは「戦いの基本は、まず民の心を一つにすることである。民の心が統一されていなければ、いかに軍備がととのえ、戦略にぬかりがなくとも、戦いに勝つことはできない」というものである。 《動かざること山(霊峰富士)の如し…孫子の兵法》   公海上空の飛行の自由を認めた国際的な国際ルールを無視する中国の暴挙に対しては各国からの反発が強まっている。中国に擦り寄る姿勢が強かった韓国の朴政権も国防省の報道官が「韓国政府としては認めることはできない」と批判している。台湾政府も中国の防空識別圏設定は両岸関係の発展に無益だとの立場を明らかにしている。その他オーストラリア、フィリピン、EU、英国なども懸念を表明している。そして最も強く中国に反対の意思表示をしたのは米国である。11月26日早朝グアム島アンダーセン基地を離陸した戦略爆撃機B52二機が中国に事前通告することなく、中国が設定した防空識別圏に進入し1時間にわたって圏内を悠々と飛行してグアムに着陸したのである。   これによって中国は「米国、オーストラリア、韓国への対応は緩め、戦闘の標的を日本に絞るべきだ」との方針に転じたと報じられている。従って日本に対しては今後も中国軍によるあの手この手の挑発行動が継続されるであろう。これに対して日本はどのように対応すべきであろうか?中国の孫氏の兵法によれば「動かざること山の如し(守備するや山のように不動である)」とある。今のところ日本政府は中国軍の挑発に乗ることなく冷静に、慎重に対応している。引き続いてこれからも本年世界遺産に認定された霊峰富士山の如く如何なる自然災害にもビクともせず凛とした姿勢に倣って不動の姿勢を保つことが不可欠であろう。(執筆者:水野隆張・日本経営管理教育協会営業部長 編集担当:水野陽子)                       
2013年11月23日、突如として中国国防部が東シナ海上空に防空識別圏を設定したことで、日米と中国の間の緊張が一気に高まっている。日本政府は直ちに中国に対して撤回を求めたが、中国国防省の楊宇軍報道官は11月28日の記者会見で、中国が東シナ海に設定した防空識別圏の撤回を日本が求めたことについて、「まず日本が44年前に設定した自国の防空識別圏を撤回するよう求める、そうすれば中国は44年後に(撤回を)考えてもいい」と常軌を逸した発言を行っている。
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2013-12-18 17:30