【IPO】アビスト、3D-CAD設計技術者派遣・請負で成長堅持

アビスト <6087> は2013年12月18日、JASDAQ(スタンダード)に新規上場した。公募価格3450円に対して、初値は3450円だった。
■沿革
アビストは2006年3月に日本ビジネス開発(現JBSホールディングス)のエンジニアリング事業本部が、分離独立する形で設立。ハイエンド3次元CAD(3D-CAD)をツールとして機械・機械部品の設計開発、および、ソフトウェア開発等を行う、設計開発アウトソーシング事業として成長している。
自社で3D-CADの技術者を養成し、派遣業務、請負業務(受託型・常駐型)を展開。東日本と中部西日本の2事業本部制を敷き、主な取引先は、国内の自動車メーカー、および、その部品メーカー、家電メーカー、精密機器メーカーなどになっている。設計開発のアウトソーシングに特化するユニークな業態。2013年6月現在の従業員729名のうち、90%程度を設計技術者が占める。設計技術者の内訳は、派遣業務の技術社員が420名、受託型請負が同56名、常駐型請負が178名。
2013年3月に水素水事業を行う連結子会社アビストH&Fを設立し、熊本県菊池市に工場を建設中。新規事業として2014年2月から水素水の製造販売を開始する準備を進めている。水素水事業は、主力の設計開発アウトソーシング事業とは好不況のサイクルが異なる事業として互いに補完的な役割を期待している。
■業績
2012年9月期の売上高は43億6100万円(前年同期比6.5%増収)、経常利益は4億3857万円(同59.2%増益)。分離独立以来、経常利益は黒字を堅持している。
連結決算となった2013年9月期の売上高は47億2000万円、経常利益は6億4900万円と、過去最高収益を更新した。2014年9月期予想は、売上高52億円、経常利益6億3000万円程度を見込む。
同社の収益構造は、派遣業務よりも請負業務の方が利益率が高い構造となっており、請負の受託比率を高めることによって、経常利益率を高めてきた。近年、請負事業が比率を高めてきている関係で利益率が高まってきている。2013年9月期は、売上高経常利益率を9.8%で当初計画していたが、最終的には同13.75%と上振れした。2014年9月期は経常利益率を12%台の計画だが、「2013年9月期よりも、2014年9月期の方が経常利益率が伸びる可能性もある」としている。
■展望
同社の設計開発アウトソーシング事業の売上高の約68%を占める自動車・輸送機器分野は、ランプ、ボディー(アッパーボディ)、内装(シート、ドア、インパネ)、機能部品(ワイパー、サイドミラー)、電装部品(ワイヤーハーネス)、HV・EV関連など、約3万点におよぶ部品の設計に対応可能な多くの技術者を抱える主力部門になっている。
代表取締役社長の進勝博氏は、「自動車業界が安価な車づくりを志向し、部品点数をモジュール化によって減らす方向にあることは事実だが、たとえば、当社が得意とするランプは、車の個性を決定する重要な部品であり、今後もより個性的な形状を求めて進化し続ける分野。また、自動車業界向けは、派遣型から請負型にシフトする傾向が強まり、今後10年を展望しても、依然として力強い成長が可能な分野と見ている」と語る。
さらに、「今後、電気自動車(EV)が拡大することになると、現在のガソリン車を主流とする自動車8社を中心とした供給体制が変化し、将来は300社ほどの電気自動車メーカーが誕生するという予測がある。自動車メーカーの数が増えるほどに、各社は競って個性的な車づくりを志向することになると考えられ、ランプやボディの設計技師を多数抱える当社の強みは、一層引き立ってくる」と見通す。
このため、同社は、成長戦略として自動車・輸送機器に関する設計技術者の養成に注力している。新卒の採用は、前期43名、今期の56名の採用実績を、来期は65名-70名で計画するなど、毎期採用数を10人程度増員する計画を立てている。3D-CADの技術者は、10年の経験で“1人前”といわれるほど高い技術レベルが求められる分野。自動車メーカーに対して、よく訓練された技術者を安定的に供給できる会社は、同社の他に競合がないという。「自動車メーカーと長年にわたって培ってきた信頼関係を今後も維持し、設計技術者の専門家集団として堅実な成長をめざしたい」(進氏)と語っている。(編集担当:徳永浩)
アビストは2013年12月18日、JASDAQ(スタンダード)に新規上場した。公募価格3450円に対して、初値は3450円だった。
japan,company
2013-12-18 18:45