日銀追加緩和見送りで円高圧力か?・・・外為オンライン佐藤正和氏

 4月27日の米FOMC(連邦公開市場委員会)では、市場の予想通り金利の引き上げはなかったものの、翌28日に発表された日銀の「金融政策決定会合」では、予想に反して追加緩和が見送られた。熊本地震による混乱の中で消費税率引上げの是非も問われており、今後の政治情勢には目が離せない状況だ。毎年、4月末から5月はじめの「ゴールデンウィーク」の相場は荒れることが多いが、直前の28日のドル円相場でも一気に3円弱も動くなど早くも荒れ模様だ。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に、5月相場の動向とゴールデンウィーク相場の対応法について話を伺った。  ――4月28日の日銀金融政策決定会合では予想に反して何も出ませんでしたが・・・?  市場関係者の間では、何らかのアクションがあるのではないかと期待されていたのですが、結局、追加緩和の実施は見送られました。物価上昇率2%の達成期間を「2017年度前半」から「2017年度中」と延長したことも加わって、金融緩和見送りの発表と同時にドル円相場は瞬間的に3円も円高が進み1ドル=108円台にまで突入。その後も、日本市場が休みに入った29日には106円台まで円が急伸してしまいました。  こうした動きの背景には、熊本地震による混乱、そして消費税率引き上げ再延長といったイベントがあり、日銀が何らかの形で動いてくるのではないかと予想されていたからです。マイナス金利の拡大は導入したばかりで新たに動くのは厳しい。従って、追加の金融緩和だろうと市場関係者は読んでいたわけです。  その場合、量的緩和の拡大によって年間80兆円購入している国債の枠を100兆円程度に増やす、あるいはETFやREITの購入枠も拡大するのではないか・・・。購入の対象も地方債にまで拡大してくるのでないか・・・。そんな思惑があったと思います。残念ながら、その期待が打ち消されたために、ドルの失望売り=円買いに市場が動いた、と考えていいでしょう。  ――5月は日本がG7の議長国を務めるわけですが、円安は進むのでしょうか?  為替市場で大きく円安に振れて、かつ株式市場が活況を取り戻すには、3点セットが必要だと言われています。ひとつは日銀の「追加緩和」の実施。そして「消費税率アップの再延期」。さらに、もうひとつ市場が期待しているのは「景気刺激策」です。公共事業によるばらまき政策の一種ですが、それでも10兆円単位で実施されれば大きなインパクトがあるはずです。  安倍政権に近い有識者の中には20兆円規模の公共事業にすることを進言する人もおり、そこまでやれば一時的には円安が進むことが確実視されています。今回、その3点セットの突破口になるのではないかと期待されていた追加緩和策が、先送りされて実現しなかったために「円安は当面ない」として円高が進んでしまった、というのが真相です。  さらにもうひとつ、5月26-27日に開催が予定されている伊勢志摩の「G7」の議長国として、どんな金融政策や財政政策、経済政策を打ち出してくるのか、極めて興味深いところです。また5月18日に発表されるGDP成長率の第1四半期(1-3月期)にも要注目です。マイナス成長に再び陥るような数字が出た場合は、円高方向へのトレンド転換がより鮮明になると考えましょう。  ――とりあえず4月の利上げは消えた米国、ドル円相場はどんな展開になるのでしょう?  4月26-27日に行われたFOMCでは、次回6月の会合での利上げの可能性があることを示唆したうえで「利上げを急がない」という姿勢を打ち出してきました。現在の米国は、次期大統領選挙で共和党候補のトランプ氏の勝利が現実味を帯び、浮き足立っている印象を受けますが、米国経済そのものは原油価格がやや戻しており、中国経済も落ち着いているため、あまり大きな混乱はないと考えられます。  問題はむしろ、日本の内政に多いかもしれません。そう考えると、5月のドル円相場の予想レンジは1ドル=102円~110円というところでしょうか。ゴールデンウィーク期間中はどうしてもボラティリティ(変動幅)が大きく、4月28日の日銀金融政策決定会合の結果発表直後の急激な円高を見ても分かるように、不安定なレンジが続くと予想していいでしょう。  ――いよいよ来月には英国の国民投票ですが、ユーロや英国ポンドの動向は?  4月21日に開催されたECB(欧州中央銀行)の理事会では、マイナス金利の拡大があるのではないかと予想されましたが、マイナス0.40%で据え置かれました。量的緩和策も継続され大きな動きもなく、ユーロ市場にも大きな変化は起こっていません。  ただ、気になるのは6月23日に実施される英国のEU残留を問う国民投票です。当初、残留派と離脱派は拮抗しているものの、やや残留派のほうが有利という予想でしたが、国民投票が近づくにつれてどんな動きになるか予想がつきません。5月相場では、ユーロとともに英国ポンドの動向も気になるところです。  予想レンジとしては、ユーロ円で1ユーロ=118円~126円、ユーロドルで1ユーロ=1.11ドル~1.16ドル。英国ポンド円では1ポンド=148円~157円というところでしょうか。ユーロ円は、ここのところボックス相場に入っているという印象ですが、国民投票の予想報道など新しい情報が入ってくると動きを活発にするかもしれません。  ――中国経済が落ち着き、原油価格も上昇の兆しですが、豪ドルの行方は?  原油価格がかなり持ち直しており、4月29日現在のWTI価格では1バーレル45ドル台で推移しています。さらに、中国経済もこのところ落ち着きを取り戻しつつあり、これまでオーストラリア経済を覆っていた不安要因が徐々に解消の方向に向かっていると言ってもいいのかもしれません。  特に、原油価格は底値の26ドルから40%超の上昇を見せており、資源価格に大きく左右される豪ドル相場に大きな追い風になるかもしれません。とは言え、米国利上げの影響を受けやすい部分もあり、もうしばらくは狭いレンジの中での取引が続くと予想されます。  5月の豪ドル円の予想レンジは、1豪ドル=79円~84円と考えています。狭いレンジのボックス相場になりますが、ゴールデンウィークの流動性の少ない相場では油断は禁物です。  ――5月相場、とりわけゴールデンウィーク期間中で注意すべきポイントは?  やはり日本がゴールデンウィークに入ってしまうと、投資家が少なくなり、その分流動性が低くなります。毎年のことですが流動性が少ないときには、海外の投資家がそこを狙って仕掛けてくる場合があります。ポジションを抑えて市場の動向を見守ることです。たとえば、旅行に行くといった人は思い切ってポジションをクローズしてしまうのもひとつの方法かもしれません。  さらに、要注意なのは円高が大きく進んだ時には、政府の介入があるかもしれないことです。1ドル=105円台まで来ると、介入があってもおかしくないと考えましょう。大きく円高に動いたからと言って、無防備に円高トレンドに賭けると思わぬ反動があるかもしれません。(文責:モーニングスター)。
外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に、5月相場の動向とゴールデンウィーク相場の対応法について話を伺った。
gaitameonline,economic,fxExchange
2016-05-02 19:15