大きなイベント控え、外為相場の価格変動率が大きくなる局面=外為どっとコム総研

当面は、どの通貨ペアも大きな動きをする可能性が高い。損益管理を重視して見通しが外れた時にも耐えられるポジションを持つようにしたい――外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員、神田卓也氏(写真)は、米国の6月FOMCや英国のEU残留を問う国民投票など、重要なイベントが接近する5月-6月の外為相場では、予想レンジを大きく取った投資戦略が重要と説いた。
――ドル/円はゴールデンウィーク期間に1ドル=105円台の安値を付ける場面もありましたが、連休明けは107円台に戻しています。方向感がつかみにくい展開が続いていますが、当面の見通しは?
ドル/円が107円台に戻したのは、5月6日に発表された米国4月の雇用統計で、非農業部門雇用者数などの数値が市場の事前予想に届かず、全般に冴えないデータだった中にあって、賃金上昇率が前年比2.5%増と比較的高い伸び率になったため、「6月利上げの可能性が残った」という考えが広がったためと考えられます。目先は、雇用統計発表前に付けた1ドル=105円台半ばの安値を割り込むリスクは後退したと考えて良いでしょう。
米国の雇用統計については、ほぼ完全雇用といわれる中にあって、大幅な失業率の改善や雇用者数の増加ペース拡大は期待しづらい状況にあります。したがって、ポイントは賃金上昇率に移行しつつあり、この数値が堅調に推移している間は、FRBが利上げを考える要因になるといえます。米国GDPの行方を左右する個人消費が順調に回復しているかどうかは5月13日に発表される小売売上高のデータなどで確認していく必要がありますが、このような景気指標が取り立てて悪い数値にならず、6月利上げの可能性が残っている限り、当面のドル/円は110円をめざした上昇相場が続くと考えます。
一方、円サイドの材料としては、これまでアベノミクスが推進してきた円安政策への不信感がを払しょくできるかどうかという重要なイベントが迫っています。伊勢志摩サミット(5月26・27日)でG7の議長国として、協調的財政出動について合意にこぎつけられるかがポイントです。合意が得られれば、リスクオンの地合いとなって円安方向に振れることが考えられます。7月の参院選に向けて、来年4月の消費税増税を予定通り行うか再延期するかの判断にも注目が集まりそうです。
また、このところ話題になっている円売り介入について、G7の枠組みで介入が正当化されるようなお墨付きが得られるかどうかも気になります。介入に対する否定的な発言が頻繁に出てくれば、思わぬ円高圧力になりかねません。
このように、日米の両サイドに相場を左右する材料があるため、材料が重なった場合にはドル/円のフレ幅が増幅されて大きくなる可能性があります。たとえば、米国の利上げ観測後退によるドル安とリスク回避の円高が同時に進行すれば、1ドル=105円台半ばの下値を突き破って104円台に落ち込むこともあるでしょう。したがって、当面の予想レンジは1ドル=104円~112円とやや広めに見ています。
――英国のEU加盟の是非を問う国民投票が6月23日に迫っています。英ポンド/円への影響は?
英国の国民投票については、パナマ文書が明らかになった頃はキャメロン首相への批判の高まりもあって、EU離脱支持が優勢と伝わり、ポンド売りが活発になりましたが、現在は各種世論調査の結果をみても残留・離脱の支持率は、ほぼ拮抗しているといえます。調査結果の概要は、残留:離脱:保留の割合が40:40:20というところでしょう。残り1カ月程度の間で、この保留の人たちが残留と離脱のどちらに傾くかが注目されています。国際社会は残留を望む声が強いのですが、今後の世論調査などで投票日が近付いてきても離脱派の割合が低下しない場合など、思わぬポンド売りになる可能性があります。
また、英EU離脱問題は、ポンドの重しになるとともに、ユーロへの悪影響も懸念されています。仮に離脱の可能性が高まれば、ユーロとポンドが同時に売られる一方で、安全通貨とされる円に想像以上の上昇圧力が掛かる可能性があります。反対に、国民投票を控えて、EU残留支持が大きく高まると、一気にポンドを買う動きが強まる可能性もあります。英中銀はEU離脱回避となればタカ派的な姿勢を強めるとみられているため、ポンド高に振れた時の振れ幅も大きくなりそうです。
当面のポンド/ドルのレンジは、1ポンド=1.40ドル~1.49ドル程度とみていますが、ポンド/円で考えると、ドル/円の振れ幅が加わることもあって、1ポンド=147円~167円程度のレンジになります。
――その他、注目の通貨ペアは?
ゴールデンウィーク中に想定外の利下げを実施した豪ドルの動きに注目しています。豪中銀は、今回の利下げについて1-3月のインフレ率が低調だったことに加え、住宅投資が落ち着いていることを理由にあげました。また、金融政策報告において、今年のインフレ率の見通しを従来のプラス2%~3%から、プラス1%~2%に引き下げていて、これは、今後の追加利下げの可能性を残しているということを示唆しています。
当面の重要な経済指標としては、5月19日の雇用統計、6月1日の1-3月期GDPの発表と続きますが、今回の金融政策報告では成長率見通しの水準は引き下げていないため、もし、GDPの発表数値が市場予想を下回るようであれば、一気に追加利下げ観測が高まる可能性があります。
ただ、豪中銀のこれまでの金融政策変更において、連続利下げを実施したケースは多くありません。利上げは連続して行うことが良くあるのですが、利下げに関しては数回見送って様子を見るという慎重な態度を取ってきています。こうした経緯もあって、今のところ市場は6月の連続利下げを見込んでいません。このため、いざ利下げとなれば豪ドル売りが大きく進む事になるでしょう。当面の予想レンジは1豪ドル=75円~83円とみます。
このようにドル/円をはじめ、ポンド/円、豪ドル/円など、当面は値動きが大きくなると考えられる通貨ペアが多いと予想します。FX投資にあたっては、損益管理について日頃以上に慎重に実施する姿勢が重要です。(編集担当:徳永浩)
外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員、神田卓也氏(写真)は、米国の6月FOMCや英国のEU残留を問う国民投票など、重要なイベントが接近する5月-6月の外為相場では、予想レンジを大きく取った投資戦略が重要と説いた。
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2016-05-10 12:15