英国のEU離脱で「円高」続くか? ・・・外為オンライン佐藤正和氏

まさかの結果になった英国の国民投票は、世界中のマーケットを震撼させた。とりわけ為替相場は激しく乱高下し、「ポンド円」は今回の騒動で27円も動いた。その後の為替市場も、ボラティリティの大きな相場が続いており、英国のEU離脱騒動はまだ始まったばかりという状況だ。今後の為替相場がどんな展開になるのか。外為オンラインアナリストの佐藤正和さんに7月相場の動向について話を伺った。
――英国のEU離脱は為替相場にどんな影響を与えたのでしょうか?
市場関係者は無論のこと、世界中の人々が「残留派有利」と見ていた英国の国民投票ですが、開票が進むにつれてEU離脱派の勝利が濃厚となり、最終的にメディアが離脱派勝利を伝えると、英国ポンドは暴落し、同時にユーロも大きく売られました。その反面で米ドルと円が買われましたが、ドル円では円が買われて円高が進みました。
特に、ポンド円相場では6月のはじめには1ポンド=160円台だったのが、133円台にまで大きく下落しました。ユーロ円も大きく下落し、瞬間的には1ユーロ=110円台を割り込む水準にまで下落。離脱決定から1週間以上が経過した現在、ポンド、ユーロ共に国民投票前のレベルにまで戻っていません。逆に、大きく買われたのが米ドルと円です。とりわけ、円は対ドルに対しても買われ、一時的には1ドル=99円台にまで上昇。2年7か月ぶりの円高が進んでしまいました。
ちなみに、株式市場は、離脱決定直後大きく下落したものの米国市場を中心に回復し、英国でさえも元の水準に戻ってしまいました。もっとも、遠く離れた日本の株式市場も例によって大きく変動し、日経平均は瞬間的に1200円超の下落。英国と違って、離脱決定前の株価にはまだ戻っていません。
――EU離脱、今後の展開は?
EU離脱そのものは、英国がEUに離脱を通告してから2年以内の実施になるために、今すぐ景気が悪化する、といった問題ではありません。ただ英国が決定を下した以上、離脱が覆ることはなく、さらにはEUが柔軟な姿勢を示すこともないと思います。
離脱する英国に穏健な姿勢を見せたら、他のEU加盟国に飛び火する可能性が出てきます。EUは英国に対して厳しい姿勢を見せる以外に方法はないと思います。そう考えると、今後は英国やEU内が落ち着くまでは、ポンド、ユーロ共に「対ドル」「対円」に対して下落して行くことになるはずです。とりわけ、英国で活動する銀行など金融機関の多くは、フランクフルトなどのEU圏に移転を始める可能性があり、そうなると英国経済は大きな打撃を受ける可能性があります。
将来的には、現在の水準から、もう一段低いポンド円、ユーロ円のレートがあるかもしれません。加えて、日本円では対ドルに対しても買われる可能性があり、今後の為替相場には要注意です。
――米国の雇用統計も注目されていますが、米国利上げの可能性は?
英国のEU離脱に加えて、7月相場ではいくつか注目されているイベントがあります。まずは7月8日に発表される米国雇用統計ですが、前回の発表では5月の非農業部門雇用者の増加数が3万8000人に留まり、市場予想と大きく乖離してサプライズになりました。
しかし、今回発表される6月分では大きく修正される可能性が高いと思います。具体的には、5月の雇用統計では通信大手「ベライゾン・コミュニケーションズ」の従業員によるストライキで3万5000人が失業者としてカウントされました。ストライキが終了した6月分では復活するはずです。さらに2011年以降、10万人を切った翌月は上方修正される確率が非常に高く、平均で6万4000人の上方修正があると言われています。そう考えると6月の雇用統計は14万人程度になる可能性が高いと思います。
ただし、予想に反して6月分の雇用統計も悪化しているようだと、7月27日-28日に行われるFOMCでの利上げの可能性は低くなります。統計の結果次第では、米国の景気減速が一時的なものではないと判断されて、その次の9月のFOMCでも利上げの可能性が低くなっていきます。そうなると円高がじわじわと進んでいく可能性が高くなってきます。
――日本では参院選がありますが、7月の予想レンジを教えてください。
日本では、参院選が10日にありますが、自民党が勝てばアベノミクス継続で円安が進み、負ければアベノミクスにブレーキがかかると見られて円高になります。円高が進むと気がかりなのが、28日-29日に行われる日銀の金融政策決定会合で追加緩和が行われる可能性が高くなることです。買い入れる国債やETFの拡大、そしてマイナス金利拡大などが予想されます。
全体的に、ボラティリティの高い相場が予想されますが、まずは「ドル円」ですが、1ドル=97円-105円、「ユーロ円」では1ユーロ=109円-117円、「ポンド円」に関しては、1ポンド=125円-140円と見ています。
現在、日本の長期金利はじわじわとマイナス金利が進んでおり、国内での運用が難しい状況になっています。とりあえず7月10日の参院選、そして28日-29日の日銀の金融政策決定会合には要注目です。また、政府による景気対策の有無にも注意しておきたいものです。
――豪ドルなどのクロス円は? また、7月相場のポイントと注意点は?
英国ショックでも、豪ドルはあまり動きませんでした。利下げもありませんし、中国も比較的落ち着いているので安定しています。7月2日に行われた上下両院議員を全員改選する総選挙では、2期目を目指す保守連合と、3年ぶりの政権奪還を狙う労働党が争い、大接戦を繰り広げています(7月3日現在)。「豪ドル円」のレンジは1豪ドル=70円-78円と見ています。
7月のポイントは、やはりEU離脱を決めた英国がどんな動きをするのか。そして、その経済的な影響が徐々にわかってくると思います。ここまで下落したから逆張りで「買い」を入れる、と言った安易なトレードは、今年に入ってからの大きな潮目の変化で通用しなくなっています。7月も同様にボラティリティの大きな相場になると思いますが、大きな損失を出しているポジションを抱えたままの人は、損を取り戻そうとして安易な勝負を仕掛けないことです。トレンドが変化している現実から目を背けず、慎重な投資スタンスが必要です。(文責:モーニングスター)
英国のEU離脱騒動はまだ始まったばかりという状況だ。今後の為替相場がどんな展開になるのか。外為オンラインアナリストの佐藤正和さんに7月相場の動向について話を伺った。
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2016-07-04 15:00