日銀緩和、市場の期待裏切り円高? ・・・外為オンライン佐藤正和氏

 7月29日、定例の日銀金融政策決定会合が開催されて、マイナス金利導入以来、半年ぶりとなる追加の金融政策が発表された。市場の期待が大きかった追加緩和策だが、為替市場は大きく乱高下した後、円高に向かいつつある。追加緩和の意味は何か、今後のドル円相場はどう動くのか。夏休み相場となる8月は流動性が少なくなり、毎年ボラティリティの大きな相場になりやすい。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に8月相場の動向について話を伺った。  ――日銀の追加緩和策は市場にどうとらえられたのでしょうか?  何もなければ急激な円高、株価暴落は避けられない・・・そんな市場関係者の声が多かった今回の金融政策決定会合でしたが、結果的には期待したほどの大きなサプライズはありませんでした。前日に安倍政権が28兆円規模の景気対策を打ち出していたために、より期待が大きく膨らんだせいもありましたが、結果としてETFの買い入れを現在の2倍近い6兆円にする、という内容にとどまりました。  為替市場は、この結果を見て瞬間的に大きく揺れて、1ドル=103円台を割り込む水準に振れ、その後102円台にとどまり、さらなる円高をうかがう状況です。何もしなければ大きなショックとなり円が買われる状況の中で、ETFの購入額を増やす追加策を発表せざるを得なかったというところでしょうか。  今後も、状況次第では1ドル=100円を割り込むような状況に至る可能性もあります。心配なのは90円台に突入して定着してしまうと、今度は100円が上値抵抗線となり90円台が定着してしまう可能性があることです。ちなみに、次回9月の金融政策決定会合では、これまで行って来た金融緩和策に対して「総括的な検証」を行うことが発表されました。この点も、注目されるところです。  ――米国は大統領選が佳境を迎えていますが、注目すべきポイントとは?  まず注目すべきは8月5日に発表される米雇用統計ですが、前回6月の非農業部門雇用者数は市場予想18万人に対して28万7000人と大きく上振れしました。今回、再び大きく減少するようなことになれば、ドルが売られて円高圧力が増します。  8月は米国の金利政策などを決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)はありませんが、8月末のワイオミング州ジャクソンホールで開催される年次経済シンポジウムで、今年はイエレンFRB議長が講演を行う予定になっており、そこでの発言が注目されます。9月に開催されるFOMCで金利引上げがあるのか、そのヒントになるような発言の有無によって為替相場はまた大きく揺れ動くことになります。  いずれにしても8月は、夏休みで市場関係者が少なくなり、流動性が減少します。毎年8月中旬には、想定を超えるボラティリティで相場が動くので要注意です。8月の「ドル円」の予想レンジとしては1ドル=98円~107円を想定しています。  ――相次ぐテロや英国のEU離脱に揺れる欧州ですが、為替市場はどう動くでしょうか?  英国のEU離脱は、英国からの離脱宣言が遅れているために、当面は大きな動きはないかもしれません。むしろ、ドイツにも飛び火したテロが心配です。テロのリスクが今後どんな形で経済に出て来るのか、不安材料のひとつになりそうです。  もうひとつ、不安材料と言えば金融機関に対する信用不安です。多額の不良債権をめぐる懸念からイタリアの銀行株が急落。ブレグジットが決まって以後、イタリアの銀行株指数は3割下落し、年初来の下げ幅も6割に達しつつあります。とりわけ、イタリア最古の銀行「モンテ・ディ・パスキ・シエナ」の不良債権処理の遅れがイタリア発の金融危機を誘発するのではないかと指摘されています。  同様にトレーディングで大量の損失を出したとされる「ドイツ銀行」に対する懸念も拡大しており、欧州は当面金融セクターへの不安がくすぶりそうです。欧州関係の予想レンジとしては、「ユーロ円」で1ユーロ=110円~120円、「ユーロドル」では1ユーロ=1.07ドル~1.14ドル、「ポンド円」では1ポンド=130円~140円と見ています。欧州関係の通貨も8月の変動幅は大きくなりそうです。  ――豪ドルの動きについてはどう見ればいいでしょうか?  オーストラリア準備銀行(RBA)による金融政策委員会が毎月第1火曜日(8月は2日)にあり、政策金利の引き下げの可能性もあります。とはいえ、オーストラリア経済に大きな影響を与える資源価格や中国経済が落ち着いているため、そう大きな為替変動の動きはないと考えられます。  「豪ドル円」の予想レンジとしては、1豪ドル=75円~81円と見ています。市場参加者が少なくなるシーズンですが、現在の相場はドルと円が強く、ドルと円では円が強い傾向があります。そういう意味では、豪ドルが大きく揺れるケースはあまり考えにくいかもしれません。  ――8月はいつも金融市場が乱高下しますが、どんな点に注意すればいいでしょうか?  FX全体の出来高を見ると、2015年10月~2016年4月の半期で前年同期に比べて4%増えています。とりわけ、ドル円は27%も増加しており、ドル円のボリュームが大きく増加していることが分かります。それだけ市場参加者が増えているわけですが、最近はドルの上値が重い傾向が続いています。  ここ数カ月、予期しない出来事やニュースによって市場が大きく動くことが多くなっています。8月相場も大きなイベントはありませんが、たとえば米国の大統領選挙の行方次第では大きくドルが売られて円高が進む可能性もあります。夏休みで市場参加者が少なくなり流動性が乏しくなるため、より大きく揺れる可能性があります。  ポジションを低く抑えて、長期間の旅行に行くような場合はいったんクローズするのもひとつの方法かもしれません。(文責:モーニングスター)
夏休み相場となる8月は流動性が少なくなり、毎年ボラティリティの大きな相場になりやすい。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に8月相場の動向について話を伺った。
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2016-08-01 10:45