ドル/円は起こり得る3つのシナリオを念頭に慎重なトレードを=外為どっとコム総研

7月の日銀政策決定会合が開催された当日(29日)にはドル/円は、1ドル=102円割れ~105円半ばの間で大きく振れた。Brexit(英国のEU離脱)の結果を受けた6月24日には1ドル=99円割れ~106円台後半の間で動くなど、瞬間的に価格が大きく動く展開が続いている。当面のドル/円を中心とした見通しについて外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員、神田卓也氏(写真)に聞いた。神田氏は、「ドル/円は3つのシナリオを念頭に慎重なトレードを行いたい」とポイントを語った。
――7月最終週に米FOMC、そして、日銀の政策決定会合を通過しました。結果的に、米国の政策金利は据え置かれ、日銀はETFの買い入れ額を増額するという追加緩和策を発表しました。ドル/円相場は、重要な政策イベントを受けて神経質に動く場面もありましたが、当面の見通しは?
9月に開催される日米の政策決定会合までは、日米それぞれの金融政策の変更について、手がかりを探る展開が続くことになります。
たとえば、米国については、9月に利上げを実施するかどうかが注目点ですが、8月5日に雇用統計、12日に小売売上高、そして、26日にFRBイエレン議長の講演が予定されています。雇用統計については、毎週発表される失業保険申請件数の推移が7月は雇用改善を示す内容が続いているだけに、強い数字が出てくると予想されます。この雇用の改善が確認できれば、それを受ける小売売上高も好調な数値が予想され、9月の利上げ期待が徐々に高まっていく展開が見通せます。
ところが、イエレン議長の講演については、利上げに対する姿勢を、どのように表現するのか読みにくいところがあります。11月に大統領選挙を控え、9月は候補者による討論会が本格化するタイミングです。その9月に利上げ、ドル高という状況を作り出してしまえば、共和党のトランプ候補を利する結果になりかねません。このため、8月の講演では9月利上げについては、明確な態度を示さない可能性があります。利上げが実施されないという見方が強まれば、雇用統計等で膨らんだ期待がしぼむことになりかねません。
したがって、8月には3つのシナリオを念頭に、一つひとつのイベントの結果によって投資スタンスを調整するような慎重な態度が重要だと考えます。
まず、メインシナリオとしては、雇用統計や小売売上高の数値が強くでるものの、イエレン議長が利上げに対して明確な姿勢を示さないパターンです。この際には、ドル高が進んでも105円程度で頭を抑えられるでしょうから、1ドル=101円~105円での値動きになると考えられます。
次に、雇用統計等の数値が弱く、利下げが見送られるケースです。この場合は、失望感から、ドルは99円台を試すことになるでしょう。ただ、100円を割れると介入警戒感が出て下げ止まると考えられるので、1ドル=99円~103円のもみ合いとみます。
そして、雇用統計等の数値が強く出て、イエレン議長も9月利上げをはっきりと意思表示した場合は、108円をめざして、ドル/円は一段高に進むでしょう。その際には、1ドル=102円~108円付近まで期待できます。
――豪ドル/円は、2日の豪州の利下げによって、1豪ドル=76円台に売られましたが、今後の展望は?
豪ドル/円はオーストラリアのインフレ率が中央銀行の目標とする年2%の水準を下回る状況が続いていることから、利下げの予想が強くありました。ただし、オーストラリア最大の輸出品目である鉄鉱石の価格が、一時期の安値から持ち直してきていることに注意する必要があります。すでに、7月‐9月価格は、4月‐6月価格に対して30%以上値上がりしています。
豪ドル/米ドルは、鉄鉱石価格と連動し、下値を切り上げる展開にあるため、豪ドル/円についても、ここから一段と売り続ける理由はないと考えます。今後、再利下げの必要性が高まるのであれば、1豪ドル=74円台まで売られる可能性も残りますが、基本的には、今回の利下げで打ち止め感が台頭し、豪ドルの戻りが優勢になるでしょう。その場合、1豪ドル=81円台まで高値が期待できます。
――その他、注目する通貨ベアは?
ポンド/ドルの値動きから目が離せません。6月のBrexitは多くの投資家の期待を裏切る結果となり、1ポンド=1.27ドルという31年ぶりのポンド安をつけるほどに、ポンドが売り込まれました。落ち着きを取り戻したことによって、1ドル=1.32ドル近辺に戻ってきてはいますが、これからBrexitが英国経済にどのような影響を与えるのかを見極める場面です。
すでに発表された7月の製造業PMI(景況感指数)は50を下回り、先行きの不安を映しています。8月第1週にはBOE(英中央銀行)の理事会が開催され、今回はインフレレポートが発表されるとともに、カーニー総裁の会見もセットされている「スーパーサーズデー」になります。ここでの利下げは決定的と見られていますが、そこから量的緩和策など、一段の金融緩和に踏み込むのかどうかが注目されます。
17日に発表される雇用統計、18日の小売売上高で、英経済減速が明確になってくれば、一段の金融緩和が必至とみられ、ポンド/ドルは再び、1ポンド=27ドル台に向けて下値を探る展開が予想されます。反対に、雇用統計等の数値が悪い内容でなければ、金融緩和拡大の思惑が後退し、1ポンド=1.36台への戻りが期待されます。1ポンド=1.28ドル~1.36ドルという大きな幅で動く可能性があるため、当面の動向から目が離せません。
当面のドル/円を中心とした見通しについて外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員、神田卓也氏(写真)に聞いた。神田氏は、「ドル/円は3つのシナリオを念頭に慎重なトレードを行いたい」とポイントを語った。
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2016-08-02 16:00