リセッション入り回避:「深港通」に期待=香港ポスト

特区政府が8月12日に発表した第2四半期の実質域内総生産(GDP)伸び率は前年同期比で1.7%となり、前期(第1四半期)の同0.8%から拡大。前期比では1.6%で、前期のマイナス0.5%からプラスに転じ、技術的にはリセッション(景気後退)入りを回避した。12月にスタートすることが明らかになった香港と深センの両証取の相互乗り入れ「深港通」にも景気回復の期待が寄せられている。
政府はリポートで「世界経済の成長は第2四半期も依然緩慢だが、年初に比べれば改善し域内の貿易活動も回復傾向が見え始めた」と言及。このため香港の輸出は4期連続のマイナス成長を経て第2四半期に緩やかな伸びを回復し、前年同期比2.0%増となった。第2四半期の来港者数は同3.5%減で、第1四半期の同10.9%減に比べ減少幅が大幅に縮小し、観光業にも回復の兆しが見られている。個人消費は同0.6%増の微増にとどまったが、投資は建設需要の伸びが加速し減少幅が同4.9%減に縮小した。
英国の欧州連合(EU)離脱決定による影響はまだ進行中で「世界経済・金融にさらなる打撃を与える可能性は排除できない」と指摘。ほかにも注視すべき点として、米国の金利正常化の不確定性、主要中央銀行の通貨政策の食い違い、欧州・日本の経済回復のぜい弱性、多くの地域での地政学的リスクなどを挙げた。上半期のGDP伸び率は同1.2%だったことから、通年伸び率予測は2月の財政予算案で発表した1.0〜2.0%に据え置いた。
香港政府観光局(HKTB)が発表した初期統計によると、7月の来港者数は前年同月に比べ2.6%増加。昨年6月以降で初めて増加に転じた。うち中国本土からの旅行者は同2.2%増、本土以外の国・地域では短距離市場が同5.3%増、長距離市場が同2.6%増だった。ただし来港者数が増えても消費拡大にはつながっていない。上半期の宿泊客の平均消費額は前年同期の7598ドルから14.6%減の6492ドルに下落、うち本土の宿泊客の平均消費額は8441ドルから15.8%減の7105ドルに下がった。HKTBは今年通年の来港者数は前年比1.8%減との見通しを示している。
日本経済新聞社と金融統計機関マーキットが発表した7月の香港の購買担当者指数(PMI)は47.2で、6月の45.4から1.8ポイント上昇。再び上昇に転じたものの17カ月連続で景況判断の目安となる50を下回った。マーキットのエコノミストは「7月の香港の民間企業の経営環境は引き続き下振れしている。生産、新規受注など分野別指数の下落幅は縮小したものの、全体では依然下落幅が大きい。多くの企業がコスト削減に努めているため、就業率も急速に下落している」とコメントした。
香港生産力促進局は8月4日、スタンダード・チャータード銀行との協力による「渣打香港中小企業領先営商指数」の第3四半期の数字を発表した。同指数は中小企業を対象に第3四半期の「ビジネス状況」「収益」「投資の意向」「採用の意向」「世界経済の状況」の5つについて見通しを調査したもの。総合指数は前期比0.7ポイント上昇の41.1で、3期連続の下落から上昇に転じた。ただし依然として景況判断の分かれ目となる50を下回っている。5つの分類指数では「採用の意向」が51.1で唯一50を上回ったほか、「ビジネス状況」は40.1、「収益」は36.2と前期より上昇。だが「投資の意向」は46.1に下落、「世界経済の状況」は16で、前期より7.2ポイントも下落した。3大業界指数はいずれも50を下回り、製造業(37.8)と小売業(38.3)が下落、貿易.卸売業(37.7)は上昇した。チャータード銀の劉健恒・高級エコノミストは「英国のEU離脱決定が中小企業の世界経済の見通しをさらに慎重にさせた」と分析している。
■1日210億元が流入
昨今の住宅市場の回復傾向を受け、大手不動産代理は今年の住宅価格予測を上方修正している。美聯物業住宅部は、第2、3四半期の住宅市場の反発を受けて住宅価格伸び率の通年予測を年初に発表した5〜10%下落から3〜5%下落に修正。1〜7月の新築住宅取引(500万ドル以下)が2222件と過去3年で最高となったことなどから、下半期の市場の活況を予想している。中原地産の施永青・会長も「英国のEU離脱決定後、香港の住宅価格は下げ止まった」とみなし、通年予測を10〜15%下落から横ばいに修正した。
李克強・首相は8月16日、国務院常務会議で香港と深センの両証取の相互乗り入れ「深港通」の準備作業が基本的に完了し、国務院は「深港通実施方案」を承認したと発表した。中国証券監督管理委員会と香港証券先物事務監察委員会(SFC)が16日夜に出した合同公告では「深港通」の準備に約4カ月を要する見込みであるため、開始は12月半ばとみられる。
「深港通」のシステムは主に上海・香港両証取の相互乗り入れ「滬港通」に準じるが、最大の変更は投資上限を設けないことで、同時に「滬港通」も上限が撤廃される。ただし1日の取引上限は香港から深センが130億元、深センから香港が105億元で、「滬港通」と同様の制限を維持する。取引が可能な銘柄は深セン株が約880銘柄、香港株が約417銘柄で、初期のうちは深セン創業板への投資は資産総額800万ドル以上のプロに限られる。深センから香港への投資では、個人投資家の資格は口座残高50万元以上となる。「滬港通」「深港通」を合わせると1日当たり最大210億元が中国本土から香港に流入することとなる。
特区政府財経事務及庫務局の陳家強・局長は8月21日、公式ブログで「深港通」による香港市場へのメリットに触れた。陳局長は「深港通」のスタートによって投資上限が撤廃されることは「中国資本市場の双方向開放における大きな一歩」と評したほか、それ以外に注目すべきこととして投資範囲が時価総額50億ドル以上のハンセン総合小型株指数の銘柄に拡大され、投資家の選択肢が増えることを挙げた。さらに重要なこととして、「深港通」が一定期間の運営を経て関連条件が整えば上場投資信託(ETF)も相互乗り入れに組み入れると両地の証券監督管理当局が合意したことを指摘。「現在、香港市場は異なる海外市場のETFとリンクしているため、ETFが相互乗り入れに組み込まれれば中国本土の投資家が海外市場に参入するのに寄与し、香港のETF市場の発展推進につながる」と説明した。
近年、住宅や店舗物件の賃貸料が調整を迫られる中でもオフィス賃貸料は上昇を続けている。「滬港通」や本土とのファンド相互承認がオフィス需要を後押ししたためとみられており、「深港通」による効果も期待される。国際金融センターとしての地位を強化するため、中国の資本市場開放と人民元国際化によるチャンスを存分に活用すべきところだろう。(執筆者:香港ポスト 編集部・江藤和輝 編集担当:大平祥雲)(イメージ写真提供:123RF)
特区政府が8月12日に発表した第2四半期の実質域内総生産(GDP)伸び率は前年同期比で1.7%となり、前期(第1四半期)の同0.8%から拡大。前期比では1.6%で、前期のマイナス0.5%からプラスに転じ、技術的にはリセッション(景気後退)入りを回避した。12月にスタートすることが明らかになった香港と深センの両証取の相互乗り入れ「深港通」にも景気回復の期待が寄せられている。 (イメージ写真提供:123RF)
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2016-09-01 16:15