追加緩和+米利上げのダブルイベント? ・・・外為オンライン佐藤正和氏

日本銀行が前回の金融政策決定会合で発表した「総括的な検証」が話題になっている。これまでの金融政策を総括するというのだが、その内容は分かっていない。その一方で、8月に行われた米ワイオミング州ジャクソンホールの講演で、米FRB(米連邦準備理事会)のイエレン議長は「早期利上げの可能性」を示唆。FRBが9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げに踏み切るのではないかと注目されている。波乱含みの展開が予想される9月相場だが、外為オンライン アナリストの佐藤正和さん(写真)にその動向について話を伺った。
――米国の利上げが話題になっていますが?
ジャクソンホールでのイエレンFRB議長の講演を受けて、早期の米金利再引き上げの可能性が高まってきました。後に、フィッシャー副議長がよりタカ派的な発言を行ったこともあり、政策金利である「FFレート」の先物をベースにした統計では、9月利上げの可能性は36.0%(8月31日現在)となっていました。
ところが、9月に利上げがあるかどうかは9月2日に発表された米雇用統計次第だったのですが、実際に発表された数字は微妙なものでした。米労働省が発表した8月の非農業部門雇用者数の伸びは15万1000人。市場予想の18万人に届きませんでした。
過去2カ月続いた大幅な伸びが押さえられ、時間当たりの賃金も前月比0.1%増となり、7月の0.3%増から後退。市場関係者の「9月利上げ」を予想する人の割合は、20%程度に後退してしまいました。これで、9月20-21日に行われるFOMCでの9月利上げ決定はかなり微妙となり、9月以降で利上げの可能性が高い12月へと関心が移りつつあります。
とはいえ、9月利上げが完全になくなったわけではなく、欧州の銀行危機やブレグジット、中国といった世界が抱えている様々なリスクを考えると、FRBは早めに利上げして、いざというときのために政策余地を残しておきたいという思惑があるようです。9月利上げの可能性はまだ残っているかもしれません。
――日銀も9月は「総括的な検証」を行うと予告していますが、追加緩和はあるのでしょうか?
日銀の金融政策決定会合は、FOMCと同日の9月20日-21日に実施されます。7月の金融政策決定会合で発表された「総括的な検証」がどんな内容になるのかはわかりませんが、さらなる追加緩和が期待されています。
実際、同じくジャクソンホールの講演で黒田日銀総裁は、日本のマイナス金利の水準である0.1%は「下限にかなりの距離がある」と発言し、さらなる深堀りの可能性を示しました。さらに、必要であれば「量・質・金利の3つの次元で躊躇なく追加緩和を講じる」とコメント。市場では、追加緩和への期待が高まっています。
むろん時差はありますが、日銀とFRBが同じ日にそれぞれ追加金融緩和と利上げを実施すると、当然のことながら「ドル高円安」は進むことになります。場合によっては、今年最大級のイベントになるかもしれません。ただし、仮に実現してもおそらく一般的に言われているほど円安は進まないのではないかと予想されています。
――実際にダブルで実施された場合、どの程度まで円安は進むのでしょうか?
日銀の総括的な検証の中身にもよりますが、日銀ができる追加緩和というのは、「目標達成時期の見直し」や「社債や地方債など購入債券の拡大」「マイナス金利の深堀り」と言ったところになると思います。購入できる国債にも限界が見えており、今後はより難しいかじ取りになることが予想されます。
9月の予想レンジとしては、ドル円で「1ドル=100円-105円」というところでしょうか。日銀の追加緩和、FRBの利上げがあったとしても、105円を大きく超えてドルが上昇するイメージは持ちにくいと思われます。
問題は、両方何もなかった時の方の影響が大きく、その場合は1ドル=100円割れも瞬間的にはあるかもしれません。いずれにしても、9月最大のイベントになります。10月に入ると、米大統領選が本格化しますから、また違った意味で市場は不安定になります。
――欧州についてはどう見ればいいでしょうか?
ブレグジット(英国EU離脱)が落ち着いていることもありますが、依然として「ドイツ銀行」の債務問題やイタリア最古の銀行「モンテ・ディ・パスキ・シエナ」の不良債権処理の遅れが注目されています。オクトーバー・ショック(10月危機)などとも呼ばれていますが、注目はしておきたいところです。
9月8日には「ECB理事会」が開催されますが、スタッフ見通しが発表されるものの大きな動きはないと予想されています。英国離脱のプロセスも、時間をかけて進められており、大きな波乱はないようです。
9月の予想レンジとしては、ユーロ円で「1ユーロ=110円-117円」、ユーロドルでは「1ユーロ=1.10ドル-1.14ドル」というところでしょうか。ポンド円は、「1ポンド=128円-137円」。大きなボラティリティはないかもしれません。
――豪ドルの行方と9月相場の注意点を教えてください。
オーストラリアの中央銀行である「オーストラリア準備銀行(RBA)」は、前回の「金融政策委員会」で政策金利を1.75%から1.5%に引き下げました。9月も続けて利下げという可能性は、ゼロではありませんが低いと思います。
予想レンジとしては、豪ドル円で「1豪ドル=72円-78円」。金利が動いても、あまり大きなボラティリティはないかもしれません。最近、豪ドル相場にも影響を与える「原油価格」が弱含みですが、この状態は11月の次回OPEC総会までは続くかもしれません。
9月相場は、9月20日-21日に開催される日銀の金融政策決定会合とFRBのFOMCの結果次第と言えます。言い換えれば、それまではやや不安定な相場が続くかもしれません。思惑絡みの円売りが進んだかと思うと円が買われるなど、ボラティリティは大きくなると覚悟しておいたほうが良いと思います。
「利食い」ができる人は、大きなイベント前に清算して、ポジションを抑えておくといいでしょう。(文責:モーニングスター)。
波乱含みの展開が予想される9月相場だが、外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)にその動向について話を伺った。
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2016-09-05 10:45