次期立法会議員に脅迫も:公共住宅供給の壁=香港ポスト

 梁振英・行政長官らは9月21日、新界・元朗の公共住宅開発をめぐる問題について記者会見を行った。きっかけは立法会議員選挙で当選した朱凱迪氏(無所属)が、尾行や脅迫などを受けて身の危険を感じるとして選挙後に香港警察に通報し保護を求めたことによる。政府が明らかにした経緯によって香港の住宅問題の複雑さが浮き彫りとなった。  朱氏は新界西選挙区で出馬し、直接選挙枠で最高の票数を獲得。社会運動・環境保護団体「土地正義連盟」メンバーで、「セントラル占拠行動」後に台頭した「民主自決」を唱える新興勢力に属するが、本土派(排他主義勢力)からは同じく当選した羅冠聡氏、劉小麗氏とともに「左膠(サヨク)」とのレッテルを張られ攻撃されている。  選挙活動期間から何度か身の危険を感じ、4日の投票日も選挙運動員らが尾行され、特に当選後の2、3日は自身や家族への脅威が悪化したとして8日に通報。朱氏と家族は同日から警察の保護を受け、安全な場所に身を移した。朱氏は「今後4年の任期中は引き続き脅迫を受ける」との見込みから、家族とともに立法会議事堂に住むことを考慮しているほか、「脅威は地元勢力によるもの。香港域外の勢力は関係ないと思う」と述べた。選挙時に官・商・郷(新界先住民)・黒(暴力団)の癒着によって元朗・横洲の公共住宅開発の規模が1万7000戸から4000戸に縮小されたと訴え、それによって脅迫を受けたとみている。  新界郷議局の劉業強・主席らは12日、特区政府発展局と討議した後の会見で「新界の開発・事務について意見を発表した者が脅迫を受けることは受け入れられない」と表明。十八郷郷事委員会の梁福元・主席も同日、商業電台の番組に出演し、「官商郷黒の癒着」は誇張と批判したほか、朱氏が新界条例を理解していないと指摘。横洲開発については、政府の賠償が不合理であることや交通問題が解決していないことなどから住民らは1万7000戸の建設には反対していると説明した。  梁長官は13日の記者会見で、特区政府は「先易後難(簡単な問題から片付ける)」の原則に基づき第1期として4000戸を建設するが、依然として当初からの1万7000戸を目標としていると釈明。「特区政府または房屋委員会が地域の某勢力や暴力団と妥協することはない」と強調した。  さらに19日には梁長官が、計画の詳細は曽俊華(ジョン・ツァン)財政長官が率いる土地供応督導委員会が対応していると指摘。だが財政長官弁公室は同日夜に声明を出し、曽長官は横洲開発の作業部会メンバーだが会議に出席したことはなく、土地供応督導委員会は横洲の段階的開発を決定したこともないと反論した。梁長官と曽長官の発言の食い違いが取りざたされたため、梁長官は20日、関係部門で急いで関連資料を整理し、21日に記者会見を開くと発表した。  21日の会見には梁長官のほかに曽長官、運輸及房屋局の張炳良・局長らが出席。今後の公共住宅の主要供給源となる横洲と粉嶺・皇后山の開発に関する作業部会は梁長官が主宰し、13年6月の会議で横洲は第1期(23/24年)4300戸、第2、3期(26/27年)1万2700戸の計1万7000戸を供給すると決定。だが4回にわたる地元関係者への非公式諮問で、交通、電気・水道などのインフラ整備の問題ほか、第2、3期の予定地は露天駐車場、倉庫、コンテナ置き場、自動車修理場、廃品回収場などが大きな面積を占め、地域住民の生計にも影響するため1万7000戸の建設には強烈な反対の声が上がった。  14年1月の会議で運輸及房屋局は計画が全体的に遅れるのを避けるため、まず第1期を完成させて第2、3期は先送りすることを提案。ただし1万7000戸の目標は維持することとした。梁長官は自らこの決定を下したことを認め、あくまで公共住宅の供給を急ぐ手段と強調した。張局長も「第1期と第2、3期を併せて開発するとなれば、恐らく今日になっても横洲開発プロセスは始動条件が整わず、4000戸は24/25年度内の完成も無理だった」と述べた。 ■ 前政権の怠慢で問題深刻化  一方、香港警察は朱氏の通報を受けて元朗一帯での大規模捜査を開始。10〜12日には警官約200人を投入し、暴力団の資金源となっているバー、雀荘、按摩屋など無認可の娯楽施設を摘発し106人が逮捕された。香港警察新界北区刑事総部は22日、投票日に朱氏と運動員を尾行した疑いで6人を逮捕したと発表。うち2人が指示役で、4人が車での尾行を担当、すべて暴力団組織「和勝和」のメンバーとされる。現在のところ6人には朱氏の訴えている脅迫行為や横洲開発、新界先住民に関連する証拠はみつかっておらず、さらに動機や黒幕の有無について捜査を進めている。  房屋委員会が発表した6月末現在の賃貸型公共住宅の累積入居申請(当選待ち状態)は28万8300件で、前期(3月末)の28万4800件から約1・2%増。一般(家庭)の申請者は同2500件増の15万3000件となり、平均待ち時間は4・1年。前期の3・9年から悪化し、01/02年以降の過去15年で最長。政府が目標とする平均3年をはるかに超えている。房屋委員会資助房屋小組メンバーを務める招国偉・公屋連会総幹事は「近年、公共住宅の供給量は1万5000戸以上を維持しているものの、申請者の増加数はこれを上回っている」と述べ、年末には平均待ち時間が4・5年に延びるとの見通しを示した。  董建華・元行政長官が主席を務める団結香港基金は7月、「住宅市場の展望と土地供給戦略」と題するリポートを発表した。今後5年の公共住宅の完工数は10万戸で、政府が目標とする14万戸を30%下回る。今後30年で人口は822万人に増え、その間に新たに9000ヘクタールの土地を開発しなければならず、政府には住宅建設と土地供給の手を緩める余裕はないと指摘している。  香港の住宅問題は曽蔭権(ドナルド・ツァン)前行政長官の任期の7年間に供給量が激減したために深刻化したとみられているが、曽氏は9月に退任後初の単独インタビューとして『am730』の取材を受け、任期中の住宅政策の怠慢を認めた。曽氏は「1999年の金融危機によって住宅相場が大幅に下落したため、土地放出を減少させる必要があった」と説明。特区政府が打ち出した住宅用地の定期競売停止、分譲型公共住宅の建設停止は対症療法として投じた「劇薬」で、当時は適切な対処と思っていたが、「競売せずとも積極的に新たな土地を開発して備えるべきだった」と述懐した。ただし新たな土地開発は環境保護関係者や地域住民の抵抗に遭うなどで「最も難しい仕事」だと指摘した。まさに横洲開発の問題はこの言葉を裏付けている。(執筆者:香港ポスト 編集部・江藤和輝 編集担当:大平祥雲)(画像は香港ポスト提供)
 梁振英・行政長官らは9月21日、新界・元朗の公共住宅開発をめぐる問題について記者会見を行った。きっかけは立法会議員選挙で当選した朱凱迪氏(無所属)が、尾行や脅迫などを受けて身の危険を感じるとして選挙後に香港警察に通報し保護を求めたことによる。政府が明らかにした経緯によって香港の住宅問題の複雑さが浮き彫りとなった。(編集部・江藤和輝)
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2016-10-04 16:45