日本を陰で支える中国製造業の瞬発力

2020年の東京オリンピック開催の日が確実に近づいている。開催地東京の再開発が急ピッチで進んでいるか、というと、正直なところイマイチだ。計画はできている。それにも関わらず足踏み状態、遅々として進んでいない。読者諸兄は、原因をご存知のはずだし、それを引っ張り出して批判や論評するのは、本稿の主旨ではないので、それには言及しない。しかし、“ケツ”は決まっている。再開発工事が本格化すれば、間違いなく突貫に次ぐ突貫の工事になる。前回開催の1964年のことを筆者はリアルに知らないが、当時と今では、日本の製造業の勢いが違う。日本の製造現場は、突貫工事を後方から支援するだけの瞬発力を失っている。アフター2020に市場がシュリンクすることを誰でも想像できる。つまり、それを承知している製造現場は、すでにシュリンクが進んでいる。
都市再開発の箱物にしても、道路(高架橋やトンネル)にしても、現地工事は、計画全体の一部にすぎない。自動車の製造と同様にピラミッド型の多層のサプライチェーンによって成り立っている。建設現場作業員の高齢化や絶対数の不足は、さまざまなメディアで報道されているが、部材の製造現場の供給キャパも不足している。部材の製造工場は、建屋を増築し、設備を購入すれば、オリンピック特需を満たすことは可能だが、オリンピック特需で設備投資金額を回収できるケースは極めて限られる。繰り返しになるが、アフター2020を考えれば、特需を辞退しても設備投資は控えるに終結する。
筆者自身も首都再開発のサプライチェーンの一端を担っている。サプライヤーに見積照会をしても辞退されることが多々ある。サプライヤーの工場の負荷が高いと言うのが理由ではない。「量が多すぎる」、「納入が短期間に集中している」といったもので、今のところは、「納期まで短すぎる」という理由は、そんなに多くない。それでも、調達部門は、いずれかに発注しなくてはならない。どこに発注先を見つけるかと言うと、他でもない中国サプライヤーである。筆者の取り扱うものの多くは、間接、間々接の官需である。物件の性格上、国内での製造、調達が基本となる。しかし、そんなことを言っていられない事態が現実となってきた。
以前のコラム(「234号激安スーパーからコンビニに変貌する中国」)で書いたように、まさに中国はコンビニ。ないものはない。現在の中国のサプライヤーは、設備過剰と低操業に苦しんでいる。継続性のない仕事でも、選り好みする余裕はない。おまけに中国サプライヤーの好むボリュームを満たしている。まさにカラカラに乾いた大地が水を吸い込むようにす~と取り込んでしまう。自社の人員が不足していれば、すぐに作業者を集める。自社で消化できないとなれば、彼らのネットワークを駆使して、下請け、孫請けをみつける。ともかく、短期間でなんとかしてしまう瞬発力は凄い。
発注先の目処が立ち、ヤレヤレといかないのが中国調達である。中国企業一般に言えることだが、請負時点では、空手形の可能性が高い。中国の「まず受注、それから考える」の発想がないのかに要注意だ。発注者の責任として、サプライチェーンを開示させ、バイヤー自らの目で、要求を満たすキャパ (「質」=生産技術と品質管理、「量」=設備と人員)を確認しなくてはならない。さらに生産が始まった後は、進捗管理と品質管理を発注企業自らがやる覚悟がないとならない。もちろん、そのような管理を含めて信用できる(実績のある)商社があるのならば、任せるのも一案である。繰り返しになるが、中国はコンビニ。ないものはないが、激安ではない。管理費を含めると、安い買い物ではなくなる可能性が高い。しかし、日本国内に要求を満たせるサプライヤーが存在しない以上、中国調達しかない。上海でY家やS家の牛丼が食べたければ、日本より高いカネを払うのと、ある意味で同じことかもしれない。
これらは“中国調達卒業”、ほんとうの意味のグローバル調達の始まりなのかもしれない。(執筆者:岩城真 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
2020年の東京オリンピック開催の日が確実に近づいている。開催地東京の再開発が急ピッチで進んでいるか、というと、正直なところイマイチだ。計画はできている。それにも関わらず足踏み状態、遅々として進んでいない。(イメージ写真提供:123RF)
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2016-11-07 09:00