「トランプ」で当面はドル高圧力か? 外為オンライン佐藤正和氏

 11月9日に行われた米国の大統領選挙は、世界中に驚きと衝撃を与えた。過激な言動で「アメリカファースト」を唱え、米国の栄光を取り戻すと訴えたドナルド・トランプ氏が、次期米国大統領となった。事前の予想では為替、株式ともにドルが売られて円高が進み、株安になるのではないかと見られていた。しかし、選挙が終わるや一転してドルが買われ、株価も大きく上昇。トランプ大統領の誕生は、世界経済全体に大きな変化をもたらすのではないかとさえ言われている。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に、12月の相場動向について話を伺った。 ――トランプ大統領の登場は、為替市場にどんな影響をもたらすのでしょうか?  トランプ大統領の可能性は、メディアや政治学者もほとんど予想しておらず、大きなサプライズとなりました。トランプ氏優勢が伝えられた直後、当初予想された通りドルが売られて一時1ドル=101円台前半をつけ、日経平均株価も一時1000円超の下落になりました。  ところが、トランプ氏の勝利が確実となり勝利宣言を行った直後から、ドルが買われて株式市場も大きく値上がり。トランプ政権の政策の中に大型減税や財政出動があり、当面は米国経済が上向くという予想が働いたため、ニューヨークダウやナスダックは、連日史上最高値を更新するなど「トランプラリー」が続いています。  こうした想定外の動きは、為替市場や株式市場で投資家を混乱させ、とりわけFX市場では判断を誤った人が多かったようです。トランプ勝利を予想できなかったこと、そしてその後の相場展開でもドル安円高、株安が進むと予想。2つの判断ミスが重なって真逆の相場展開になってしまいました。米国の大統領選挙の結果が、ここまで金融市場に影響を与えた記憶はなく、今後もトランプ氏の動向に振り回される展開になるかもしれません。 ――1月からトランプ政権が動き始めますが、それまで市場はどう動くのでしょうか?  トランプ大統領の就任式は、来年1月20日になりますが、それまでは国務大臣の人事や政策方針などが断続的に発表されることになります。新しい情報が流れてくるたびに、金融市場が揺れ動く可能性があります。  そもそもトランプ氏は選挙中に様々な項目を約束しており、就任と同時に「TPP脱退を表明する」と発表するなど、選挙前と変わらぬ過激さを見せるかと思うと、「オバマケアは一部を残す」など現実路線を使い分けています。大型減税や財政出動は「ドル高円安要因」となり株式市場も買われますが、保護貿易の動きは逆に「ドル安円高要因」となり株価は下がることになります。  大統領就任式での演説で何を語るかが注目されますが、12月中にも様々な情報が漏れ聞こえてくるため、きちんと情報を把握して市場の大きな動きに対応したいものです。いずれにしても、ボラティリティの大きな相場になることは覚悟すべきでしょう。 ――12月はFOMCなど様々イベントがありますが、ドル円のレンジは?  トランプ政権誕生前の準備期間ですが、12月中にも様々なイベントがあります。たとえば、FRBが金利引上げの目安とする「雇用統計」は、12月2日に発表された11月の「非農業部門雇用者数」で17万8000人増。失業率は4.6%と9年ぶりの低水準でした。市場予想の18万人には届きませんでしたが、これで12月13日-14日に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)でFRBが金利を引き上げてくることは確実と言って良いと思います。  レンジとしては、ドル円で1ドル=108円-116円と見ています。FOMCに続いて、日本銀行の金融政策決定会合も12月19日-20日にありますが、動きはないと思います。トランプ政権がどんな金融政策を展開するのか、見極める必要があります。 ―-欧州でも12月はいろいろなイベントがありそうですが、トランプの影響は?  欧州では、12月4日にイタリアの国民投票がありました。イタリアのレンツィ首相が提案する憲法改正案は、これまで決められない政治の原因とされていた2院制を実質的な1院制に移行させようとするものでしたが、反対多数で否決されました。  国民投票の結果を受けて、レンツィ首相は退陣の意向を示しており、イタリアの政局は不安定になることが予想されています。モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナのような経営不振に陥っている国内銀行を救済するための資本増強などが遅れるかもしれません。  こうした中で、ECB(欧州中央銀行)は8日に総会を開催しますが、大きな動きはないと思います。レンジの予想としては、ユーロドルが1ユーロ=1.03ドル-1.09ドル、ユーロ円が1ユーロ=114円-121円、英国ポンド円は1ポンド=135円-144円と見ています。 ――11月末のOPEC総会で減産合意が成立しましたが、豪ドル円の予想レンジは?  11月30日のOPEC(石油輸出国機構)総会で、8年ぶりとなる減産合意が成立し、OPEC非加盟国のロシアなども同調すると見られています。今後は、徐々に原油価格などの資源価格が上昇していく可能性があります。  資源価格の動向に大きく左右されるオーストラリア経済は、OPEC総会の決定によって上向くことが予想されており、豪ドルは今後上昇傾向に向くと思われています。12月の予想レンジとしては、豪ドル円で1豪ドル=80円-85円と見ています。 ――トランプ政権誕生前の12月、どんな点に注意すればいいでしょうか?  トランプ氏は、就任と同時にTPP脱退など様々な改革を実施すると宣言しています。大型減税や財政出動はドル高になりますが、逆に保護貿易に動くとドルが売られます。そういう意味では、トランプ政権は当面ボラティリティの大きな相場が続くと予想されます。  そう遠くないうちに「黒田ライン」と言われた1ドル=125円86銭を突破する日が来るかもしれませんし、また急激な円高も想定しておく必要があります。大きな変動幅に対応できるように緊張感をもってトレードすることが大切になります。(文責:モーニングスター)。
11月9日に行われた米国の大統領選挙が終わるや、ドルが買われ、株価も大きく上昇。トランプ大統領の誕生は、世界経済全体に大きな変化をもたらすのではないかとさえ言われている。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に、12月の相場動向について話を伺った。
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2016-12-06 17:30