設備、人材、ブランド、そして企業を買う中国企業

 足りないものがあったら自ら作るのが日本人、買ってくるのが中国人。その類のことは、よく言われるし、実際に中国企業と仕事をしていると、「やっぱり!」と思うことが、しばしばある。  不良品が流出(出荷)される事故があると、高性能な検査機器を購入する。それでは、ダメだというと、最新鋭の生産設備の導入を検討する。ちょっと前の中国企業にありがちな不良対策であり、中国人の発想そのもののような気がする。「このような考えは間違っている、だから中国製品は、いつまでたっても二流なのだ。」と批判する日本人は少なくない。  確かに日本人の視点で考えれば間違っている。自ら知恵を絞ることで、それがノウハウとなり、組織を成長させる。しかし、中国人の視点で考えれば、全否定されるものではないし、筆者も、その辺は理解している積りだ。自ら知恵を絞っていれば、それなりに時間が掛かる。スピードが求められる現代は、そんな悠長なことをいっていたら商機を逃し、元も子もなくなる。そのような発想も間違っていない。この30年間で中国社会が加速度的に大発展を遂げたのは、スピード重視の発想があったからだ。  筆者がはじめて訪中した2000年当時は、まだまだ年季の入った汎用旋盤が大活躍していたが、あれよ、あれよという間にNC旋盤に替わり、さらには3次元測定器までもが、導入されるようになった。その3次元測定器であるが、買っただけでは、威力を発揮することができない。それを操作するオペレーターを養成しなくてはならない。見様見真似で測定できたとしても時間が掛かって、仕事にならないのである。  筆者の取引先のある企業は、メーカからインストラクターを招集し、自社の検査員を教育したのだが、どうにも思うように自社の検査員のスキルがあがらない。そこで、どうしたかと言うと、教育に来ていたインストラクターをヘッドハントしたのである。設備だけでなく、人材まで買ってしまった。流石に元インストラクターは、テキパキと3次元測定器を使い、取引先の期待に応えた。  事業を縮小せざるを得なくなった日本のメーカから多数の技術者が中国企業にヘッドハントされた時期がある。中国企業は、短期間で日本の技術を学んだ。確かにノウハウとして完成した技術は伝授されたのだと思うが、新しいノウハウを生みだす思考まで伝授できたケースは稀である。依然として中国メーカが、機能や品質で世界のトップに立てないことが何よりもの証拠だ。また、日本の熟練技能者に直接指導を受けた第一世代の技能者のスキルは高いが、直接の指導を受けていない第二世代となると、元のレベルに落ちてしまうという話もよく耳にする。「人は育てたが、組織は育てられなかった。」と自嘲気味に語る大先輩が気の毒になる。  2010年の吉利汽車のボルボ買収と前後して、中国企業は、次々と日欧米のブランドを買収した。単に商標権の買収にすぎないものから独自技術までを含めたものまで様々であるため一概に評価することはできないが、成功例は少ない。基本的にブランド価値というものは、売買できるものではない。  近年は、中国企業の日欧米企業の買収が取り沙汰されている。設備は買ってしまえば、消失することもなく、機能は維持される。人材も、どう生かすかの問題はあるが、契約で縛っている限り消えてなくなることはない。しかし、企業の買収となると、活用の難易度は格段に高くなる。企業価値の中身は、有形資産、商権、技術・・・となるが、肝になるのは人材である。人材を縛りつけることはできない。買収企業に不満があれば、次々に離職していく。特に日本企業の強さは、個人ではなく組織にある。ひとり抜け、ふたり抜けとなると、仮に半分の人材が残っても、残った組織は、半分の価値(技術)もなくなる。外資企業の買収は、設備を買うようにはいかない。買収先の人材のマネージメントを学ばなくてはならないのである。3次元測定器のインストラクターをヘッドハントしたようなことになるのだろうか。(執筆者:岩城真)(イメージ写真提供:123RF)
足りないものがあったら自ら作るのが日本人、買ってくるのが中国人。その類のことは、よく言われるし、実際に中国企業と仕事をしていると、「やっぱり!」と思うことが、しばしばある。(イメージ写真提供:123RF)
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2016-12-13 12:45