脱炭素時代を切り拓く「脱炭素関連 世界株式戦略ファンド」、新時代のリーダー企業に厳選投資

 三井住友トラスト・アセットマネジメントが設定・運用する「脱炭素関連 世界株式戦略ファンド(資産成長型)/(予想分配金提示型)」は、2021年5月21日の設定から約半年で純資産総額が1,600億円に到達するなど支持を集めている。好調なスタートを切った同ファンドの運用の特徴と今後の展望について、同ファンドを実質的に運用するニューバーガー・バーマンのグローバル株式マルチアセット運用部の三浦洋平氏(写真)に聞いた。 ◆際立つパフォーマンス実績  「脱炭素関連 世界株式戦略ファンド(資産成長型)」と代表的な国際株式の指数「MSCIオールカントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円ベース)」とでパフォーマンスを比較すると、21年12月末現在で設定来のトータルリターンは同ファンドが20.69%に対し、代表的な国際株式指数は15.13%であり、5.56%の差がついている。  このパフォーマンスについて三浦氏は、「株式市場が上下に振れやすい局面だった中、世界的に『脱炭素』の機運の高まりによる関連銘柄に対する期待感がプラスに働きました。また、期待のみならず、投資先企業が良好な業績を発表した事も追い風になったと考えます」としている。期待値の部分では、7月に欧州で「Fit for 55」という脱炭素化を進める具体的な取り組みが発表され、米国ではインフラ投資法案の議会審議が進んだ。  ただ、期待感だけでは株価の上昇は続かない。三浦氏は「私どものテーマ型株式戦略では、テーマの拡大に伴う関連企業の成長性に注目しています。銘柄選定をする上では中長期的な業績成長が重要だと考えているからです。例えば、パワー半導体に強みを有する米国のオン・セミコンダクターや、太陽光発電の効率を高める周辺設備「マイクロインバーター」を手掛ける米国のエンフェーズ・エナジーなどは好業績が評価され、株価が上昇し、設定来のファンドパフォーマンスにプラス寄与しています」と銘柄選択の効果がパフォーマンス押上げに貢献していると語っている。 ◆同一カテゴリーファンドとの比較で高いリターンを低リスクで実現した高い運用効率  同一カテゴリーファンドと比較すると同ファンドの高いパフォーマンスが際立つ。同ファンドの過去6カ月(2021年7月1日~2021年12月末)のトータルリターンは14.88%であり、同一カテゴリーファンドの平均1.90%を大きく上回り、かつトップのリターンとなった。  また、リスク(年率)では、同ファンドは4.68%であり、同一カテゴリーファンドの平均の6.04%を1.36%下回る低い水準だった。  比較期間が半年と短いためあくまでご参考になるが、同一カテゴリーファンドと比較して抑制されたリスクで高いリターンをあげており、パフォーマンスに明らかな差異が生じているのは、同ファンドの銘柄選定の効果を感じさせる。  脱炭素関連ビジネスは、ビジネス経済圏が2020年の385兆円から35年には2,700兆円になると試算されている。これは年率14%成長となり、市場全体の高い成長が期待できそうだ。また、「現在のポートフォリオの加重平均した予想EPS成長率は、向こう3年間の年率換算で約40%という水準になります(2021年12月末時点、主要投資対象ファンドベース)。成長性の高い銘柄を適切なバリュエーションで投資することによって、中長期的にグローバル株式市場よりも高いリターンが創出できると考えます」(三浦氏)としている。  このように、同ファンドは基本的に成長企業に投資するという観点で組入銘柄を決定しているが、産業分野として3つの分野に着目し、投資比率(2021年12月末時点、主要投資対象ファンドベース)は「脱炭素エネルギー関連」に23%、「脱炭素ユーザー関連」に41%、「脱炭素マネジメント関連」に35%という投資比率にしている。運用期間が短いものの、この3つの分野からピックアップした銘柄群のバランスが良く、結果としてリスクが抑えられたポートフォリオを構築できているものと考えられる。 ◆IoT社会の進展でも成長が期待される脱炭素関連  脱炭素は世界的に大きなうねりとなっているが、同時に社会のIoT化・デジタル化が進展している。三浦氏は、「5Gが普及してIoT社会が本格到来すると、通信インフラや様々なデバイスをストレスなく稼動させる上ではエネルギーの消費量が非常に大きくなることが想定されます。こうした中、通信のための電源をクリーンなものにしていくことは、大きな社会課題になっています。利便性を追い求めるだけではなく、環境に配慮する必要があり、IoT社会実現のためにも『脱炭素』はなくてはならない技術領域になると考えます」という。  加えて、「各国が威信をかけて脱炭素に取り組んではいるものの、平均気温の上昇を1.5度以内に抑えるためには、技術面やインフラ面のピースが足りていない状況です。即ち、今後イノベーションが必要不可欠な領域になってくるといえます」(三浦氏)と、脱炭素関連には技術的なブレークスルーによって新しい市場を拓くような企業が誕生する可能性も高いという。  例えば、脱炭素社会の代替エネルギー源として期待される「水素」は、「グリーン」「ブルー」「グレー」の3種類が存在する。現状は火力発電の副産物として水素が生成される「グレー水素」がメインとなり、生成過程で二酸化炭素が排出されている。また、「ブルー水素」は水素生成時に排出される二酸化炭素を回収・除去して生成する方法だ。そして「グリーン水素」は再生可能エネルギーを電源として、水を電気分解する二酸化炭素フリーな生成方法である。しかし、水素生成の理想形ともいえる「グリーン水素」の安定供給のためには、インフラや技術力が不足している状況であり、サプライチェーンが構築されるには時間がかかると見られている。「脱炭素社会の構築には一朝一夕では解決が困難な課題に対してイノベーションを通じてゴールに導くことが重要となるため、長期投資の魅力があると思っています」(三浦氏)と脱炭素が長期にわたる投資テーマである理由を解説する。  そして、今後の展望について三浦氏は、「現在はインターネット時代といえます。インターネット時代を築き、我々の生活を大きく変えたアマゾンやアルファベット(旧グーグル)などの企業は、成長と共に株式市場において存在感を高めてきました。近い将来『脱炭素時代』が到来することが想定されます。現在は企業のサイズが小さくとも脱炭素社会に貢献する技術やサービスを提供し、勝ち組となる企業には長期的な成長余地があると考えます。『脱炭素』というテーマには、こうした魅力的な企業への投資機会が豊富に存在していると考えます」と同テーマの将来性を語った。
三井住友トラスト・アセットマネジメントが設定・運用する「脱炭素関連 世界株式戦略ファンド」の運用の特徴と今後の展望について、同ファンドを実質的に運用するニューバーガー・バーマンのグローバル株式マルチアセット運用部の三浦洋平氏(写真)に聞いた。
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2022-02-07 10:15