【為替本日の注目点】ドル円続落し143円台に

 ドル円は大幅に続落しNYでは143円台まで上昇。東京時間では141円台で推移していたが、前日に続くパウエル議長のタカ派発言などで143円23銭と、およそ7カ月ぶりの円安に。ユーロドルではドル安が続き、ユーロは約1カ月半ぶりに1.01台に。対円でも157円に迫る。株式市場はまちまちの展開。ダウはほぼ横ばいながらナスダックとS&P500は上昇。債券は続落し、長期金利は3.79%台に上昇。金は3日続落し1923ドル台まで売られる。原油も中国の景気減速などを背景に大幅安。 新規失業保険申請件数 → 26.4万件 経常収支(1-3月) → -219.3b 5月中古住宅販売件数 → 430万件 5月景気先行指標総合指数 → -0.7% ドル/円 141.76 ~ 143.23 ユーロ/ドル 1.0949 ~ 1.1001 ユーロ/円 155.89 ~ 156.93 NYダウ -4.81 → 33,946.71ドル GOLD -21.20 → 1,923.70ドル WTI -3.02 → 69.51ドル 米10年国債 +0.076 → 3.795% 【本日の注目イベント】 日 5月消費者物価指数 中 中国5月消費者物価指数 中 中国5月生産者物価指数 中 中国5月貿易収支 独 独6月サービス業PMI(速報値) 独 独6月総合PMI(速報値) 欧 ユーロ圏6月製造業PMI(速報値) 欧 ユーロ圏6月サービス業PMI(速報値) 欧 ユーロ圏6月総合PMI(速報値) 英 英5月小売売上高 英 ブラード・セントルイス連銀総裁講演(ダブリン) 英 英6月製造業PMI(速報値) 英 英6月サービス業PMI(速報値) 米 6月S&Pグローバル製造業PMI(速報値) 米 6月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値) 米 6月S&PグローバルコンポジットPMI(速報値) 米 メスター・クリーブランド連銀総裁、イベント閉会の挨拶  ドル円が一段と上昇し、NYでは昨年11月以来となる143円23銭まで「円安」が進みました。きっかけは再びパウエル議長の上院での議会証言でしたが、この日は「中銀の利上げラッシュ」もあり、日銀の緩和スタンスがいやがうえにも目立ち、主要通貨に対して円が「独歩安、かつ全面安」の展開でした。筆者が現役のトレーダーであれば、やはりこの局面では円売りは避けられないところです。  通常、FRB議長の議会証言では、最初に行われる下院での証言内容が注目され、翌日の上院での証言内容は「前日の繰り返し」となることが多いため、市場への影響度は大きく低下します。しかしこの日は違ったようです。パウエル議長は、政策金利が適切に景気抑制的な水準に既に引き上げられていたとしても、経済がほぼ予想通り推移するならば、政策当局は「年内に再び、恐らく2回の利上げを行うことが適切になると感じている」と述べました。議長はこの日も、インフレを当局目標である2%に戻すことに全力を注いでいるとの考えを改めて示しましたが、前日の証言では利上げについては、「年末までに幾分(somewhat)」といった表現でしたが、この日は「Perhaps twice」(おそらく2回)といった言葉を使い、より具体的に言い表しています。また、「政策金利が適切に景気抑制的な水準に既に引き上げられていたとしても」という言い方もしており、FRBのインフレ抑制に対する強い意志も伝わってきました。明らかに前日の証言に比べ「よりタカ派的」であったと思います。  この日はボウマンFRB理事の発言もありました。ボウマン氏は、「私はFF金利の誘導目標レンジを据え置き、保有証券の縮小を続けるという先週のFOMC決定を支持した」と述べた上で、「インフレ率を時間とともに当局目標に引き下げるため、追加利上げが必要になると私は考えている」と発言し、利上げ再開が望ましいとの考えを示しています。円が主要通貨に対して大きく売られたのは、このような発言の影響だけではなかったようです。イングランド銀行は市場予想に反して0.5ポイントの大幅利上げを行い、政策金利を5%に引き上げました。前日5月の消費者物価指数(CPI)が「8.7%」と高水準だったことを受けての決定かと思います。スイス中銀も0.25ポイントの引き上げを決め、その影響でスイス円は159円98銭と、160円に迫る水準まで上昇しました。日本が「変動相場制」に移行した1973年以降の最安値を更新するものでした。さらにこの日はノルウェー中銀も利上げを決めています。  極め付きは、トルコ中銀の利上げです。昨日筆者はラジオ番組で、「トルコ中銀が利上げを行うのは確実とみられますが、焦点は利上げ幅です」とコメントしましたが、一気に6.5ポイントの利上げ決め、政策金利を15%に引き上げました。6.5ポイントの利上げは通常考えられないほどの利上げ幅ですが、市場予想は12ポイント程の利上げを予想していたこともあり、利上げ決定後トルコリラは対ドルで最安値を更新し、対円でも6円前後から5円70銭近辺まで急落しています。わずか30銭のことですが、5%の大幅下落です。トルコでは先の大統領選でエルドアン氏の再選が決まりましたが、新内閣では財務大臣にシムシェキ氏が就任したことで、新しい中銀総裁になったエルカン総裁も利上げが実施しやすいと見られていました。シムシェキ財務大臣は「トルコ経済を立て直すには利上げを行うしかない」と語っていました。今回の利上げ幅は市場予想を大きく下回るものでしたが、これもひょっとしたらエルドアン氏の圧力があったのではないかと疑いたくなります。エルドアン氏は「インフレを収め、景気を良くするには金利を下げればよい」との考えを持っており、2年ほど前から行ってきた相次ぐ利下げで通貨安が拡大し、これがインフレを高めるといった「悪循環」が続いていました。その意味でも、今回の新財務大臣と新中銀総裁に期待していましたが、トルコ金融当局のジレンマはまだ続きそうです。  このように、昨日は多くの中銀が追加利上げに踏み切ったこともあり、日銀のみが「蚊帳の外」状態で、ひときわ目立ったと言えます。昨日の午後日銀の野口審議委員が沖縄で行った会見でもその状況がはっきりと確認されています。野口氏はイールドカーブ・コントロール(YCC)政策について「当面、調整が必要だとは考えていない」と述べその理由に、消費者物価の先行きについては、「長い目で見た物価は下振れリスクの方が大きいという見立てだ」と説明しており、さらに「金融政策は為替を動かすことを目的にはしていない」と語っています。植田総裁を始め、多くの審議委員がこの考えを共有しているようで、金融政策決定会合のメンバーが政策運営について一言口にするたびに、円が売られる状況になっています。  本日のドル円は142円~144円程度を予想します。徐々に口先介入を誘発しそうな水準に近づいているようですが、本日は週末でもあり注意が必要です。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は大幅に続落しNYでは143円台まで上昇。東京時間では141円台で推移していたが、前日に続くパウエル議長のタカ派発言などで143円23銭と、およそ7カ月ぶりの円安に。(イメージ写真提供:123RF)
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2023-06-23 10:00