【為替本日の注目点】ADP、7月も上振れる

 日経平均株価が大きく下げたこともあり、昨日の東京市場ではドルの上値は重く、142円23銭近辺まで売られる。NYでは前月同様ADP雇用者数が大きく上振れ、米金利上昇に伴いドル円は143円46銭まで買われる。ユーロドルは下値をやや切り下げたものの、前日と同じく1.09台で推移。株式市場は前日、格付け会社フィッチが米国債を格下げした影響からリスク回避の動きが強まり3指数が大幅に売られる。債券も格下げの影響から続落。長期金利は一時4.12%まで上昇し、4.07%台で引ける。金と原油は続落。 7月ADP雇用者数 → 32.4万人 ドル/円 142.72 ~ 143.46 ユーロ/ドル 1.0917 ~ 1.0987 ユーロ/円 156.52 ~ 157.10 NYダウ -348.16 → 35,282.52ドル GOLD -3.80 → 1,975.00ドル WTI -1.88 → 79.49ドル 米10年国債 +0.055 → 4.078% 【本日の注目イベント】 豪 6月貿易収支 中 7月財新サービス業PMI 独 6月貿易収支 独 6月経常収支 独 7月サービス業PMI(改定値) 欧 ユーロ圏7月サービスPMI(改定値) 欧 ユーロ圏6月卸売物価指数 英 BOE金融政策発表 英 ベイリー・BOE総裁会見 英 BOE金融政策委員会(MPC)議事録 米 新規失業保険申請件数 米 7月ISM非製造業景況指数 米 7月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) 米 7月S&Pグローバル総合PMI(改定値) 米 4-6月雇用コスト指数 米 6月製造業受注  昨日の東京時間では日経平均株価が大きく下げ、これがドル売りにつながり、一時は142円23銭近辺まで「ドル安円高」が進む場面がありました。昨日の早朝、格付け会社「フィッチ・レーティングス」が米国債の格付けをこれまでの「AAA」から「AA+」に1ノッチ引き下げたことが日本株にも影響した格好です。NYでは再び「ADP雇用者数」が市場予想を大きく上回り、ドル円を押し上げ143円46銭までドルが反発しましたが、前日の高値である143円54銭を抜けるには至っていません。7月の「ADP雇用者数」は市場予想の「19万人」に対して「32.4万人」と、6月にも大きく上振れした状況と同じ結果でした。部門別では、特に娯楽・ホスピタリティーで「20.1万人」が増えていたのが特徴的でした。6月の同指標では予想の「22.5万人」に対して「49.7万人」と大きく上振れていました。ただ、その2日後に発表された「6月の雇用統計」本番では市場予想を下回る結果が発表され、「ADP雇用者数」と「雇用統計」本番では、必ずしも傾向が一致しないことが改めて意識されました。ドル円はこの「雇用統計」の下振れをきっかけに、米利上げ観測の後退を材料に143円台から137円台まで売られたことは記憶に新しいところです。明日の「雇用統計」本番でも同じことが起こるのか、あるいは上振れするのか注目されます。  昨日早朝のフィッチによる米国債格下げのニュースは、当初大きな影響は出ないと思われていましたが、上でも述べたように日本株や米国の株と債券にも大きく影響しました。個人的にも、米国債は既に「スタンダード・アンド・プアーズ」(S&P)が10年程前に格下げしていることから、影響は限定的と認識していました。これで、米国債の最上級格付けを維持しているのは「ムーディ-ズ」のみとなりました。因みに3大格付け会社から全て「最上級格」を取得しているのは、ドイツ、オランダ、スイス、デンマークなど欧州諸国とオーストラリアで、9カ国となっています。ただ、米国債は世界で最も安全で、かつ流動性が高い国債です。日本を含め、世界の多くの機関投資家が保有しており、債券市場でのベンチマークとしての存在が変わることはありません。米国の識者はこの唐突な決定に対して厳しい批判の声を挙げています。サマーズ元財務長官は、「米財政赤字の長期的軌道には懸念すべき理由があるものの、米国の債務返済能力に疑問はない」と指摘。アリアンツの首席経済顧問を務め、かつては「債券王」と呼ばれたエラリアン氏も「格下げは奇妙な動きであり、市場に影響を与える可能性は低い」と述べています。また、ノーベル経済学賞受賞者のクルーグマン氏は、「フィッチは米国を格下げしたが、この決定は広く嘲笑されており、それは当然だ。彼らが示した基準で見ても意味をなさない」と投稿しており、オバマ政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたハ-バード大学のファーマン教授は、「フィッチの判断は全くばかげている」と一蹴しています。  ただ、実際には日欧米で株価が大きく下落し、債券が売られ金利が上昇しています。米国の長期金利は一時4.12%まで上昇し、昨年11月以来約9カ月ぶりの高水準を付けており、ドルの支援材料になっています。もっとも米財務省が米国債の発行を増やすことを計画しており、需給面からも金利上昇圧力がかかっており、加えて昨日は「ADP雇用者数」の上振れも金利上昇につながったと思われます。落ち着きを取り戻すにはやや時間が必要かと思われます。  バンク・オブ・アメリカ(BofA)のエコノミストは、景気の先行きに対する楽観的な見方が強まる中、ウォール街の大手銀行としては初めて米国のリセッション予測を公式に撤回しました。同行のエコノミストは2日、顧客向けリポートで「最新のデータから、2024年の米経済は緩やかなリセッションに陥る可能性が最も高いとの従来予想を見直すことになった」と説明し、「過去3四半期の米経済活動の成長率は平均2.3%で、失業率は史上最低水準に近く、賃金と物価の圧力は徐々にではあるが正しい方向に向かっている」と指摘していました。(ブルームバーグ)2年債と10年債の「逆イールド」の拡大から多くの専門家は米経済のリセッション入りを指摘していましたが、パウエル議長も先週の利上げ後の会見では「もはや景気後退を予測していない」と述べていました。今後他の金融機関がこの見方に同調するのかどうかを見たいと思いますが、昨日の「ADP雇用者数」が示したように、米労働市場は驚くほど堅調に推移しているのも事実です。  本日のドル円は142円~144円程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
日経平均株価が大きく下げたこともあり、昨日の東京市場ではドルの上値は重く、142円23銭近辺まで売られる。(イメージ写真提供:123RF)
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2023-08-03 10:15