「アメリカ例外主義の終焉」、新興国など多様な資産への分散が重要に=HSBCアセットマネジメントの見通し

HSBCアセットマネジメントは6月16日、オンラインで「2025年 ミッドイヤー・セミナー」を開催した。HSBCアセットマネジメントのグローバル・チーフ・ストラテジストであるジョー・リトル氏が、昨今の市場環境に基づいて当面の投資戦略について語った。リトル氏は、「市場は『ニュールールズ』と呼んでいいほど、新しい市場の形を作ろうとしている。これまで、米国株式市場は別格とみなされてきた『例外主義』は終わった。全世界株式に占める米国の時価総額が70%に達するという異常な集中が是正され、欧州やアジア、フロンティア市場など複数の市場に資金が移動する時代を迎えた」と語っている。「特定の市場に集中するのではなく、分散投資が重要だ」とした。
リトル氏は、2025年に入ってからの市場の動きは「2024年の年末までと様変わりした」とし、「米国株式が出遅れ、欧州や中国、フロンティア市場が好調だ。主要国の中で米国だけが特別だった『アメリカ例外主義』が崩れ、主要国の成長率や魅力度が似通ったものになってきた」と語っている。
そこで、HSBCアセットマネジメントが考える『ニュールールズ』とは、(1)Gゼロ(無極化)経済:世界経済を主導する経済大国はみられなくなり、複数のリーダーが併存する考え方。(2)各国の政策の不確実性が顕著になり、ボラティリティ(価格変動率)が大きな不安定な市場が続く。(3)株式や債券という伝統的な資産が不安定化するなかで、「代替資産」が重要になる。選別された高品質な社債、プライベートクレジットなど。(4)例外主義の終焉によって、投資家が見落としていた米国以外の資産クラスが注目される。(5)グローバルからローカルへ:新興国市場において各国・地域間の相関関係は低下する可能性が高いため、詳細な分析が必要になる。
ただ、米国の影響力が低下するとはいえ、「米国がリセッションになるとは考えていない」とした。「年初、米国の成長率予想は年2.5%程度と比較的堅調な成長が見通されていたが、それが下方修正され、現在では年1.5%以下の水準になるだろうとみられている。ただ、企業収益や労働市場は引き続き状態が良いので、トランプ関税等の影響によって米国が不況に落ち込むということまでは考えられない」とした。「世界の株式市場の時価総額で米国が70%も占めるということが異常な事態だったということで、米国一極集中が分散に向かうというのが、これからの大きな流れになると考える」と語った。
特に、「アメリカ例外主義の終焉」によって、割高になった米ドルの是正としてのドル安が進みやすい環境にあり、米ドルが弱含むときに活躍してきた新興国市場にチャンスが広がっているという見方をしていた。新興国では利下げ局面に入っている国が少なくなく、メキシコ、ブラジル、ポーランド、インド、インドネシア、中国などといった国々では「関税で経済にマイナスの影響が出たとしても、利下げによってカバーすることができる」とした。
また、日本について海外の投資家の関心が非常に強いと語った。「株式市場は過去平均と比較して割安な水準にあり、かつ、米ドルが下落する中にあっては円高に進む可能性が強く、海外の投資家は為替差益も得られる。債券市場が安定的に推移していることも魅力だ」とした。
当面の市場について「不確実性が高く、ボラティリティが高い市場になりそうだが、まずまずリスクテイクができる市場」とし、当面の魅力的な投資対象は、「債券は欧州とアジア、社債はハイイールド債が割高な水準にあるため安全第一に考えたい。株式はアジアとフロンティア市場に魅力がある。出遅れているバリュー銘柄にチャンスがあると考える。さらに、ヘッジファンドや実物資産、プライベートクレジットなどオルタナティブ資産にも魅力がある」と語っていた。
HSBCアセットマネジメントは6月16日、オンラインで「2025年 ミッドイヤー・セミナー」を開催した。(画像はイメージ。提供:123RF)
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2025-06-17 15:45