松屋R&D・後藤秀隆社長に聞く:引き続き既存2事業の成長性高い
松屋アールアンドディ(松屋R&D) <7317> は縫製自動機の開発・製造・販売のほか、血圧計腕帯などのメディカルヘルスケア事業、セカーシート、エアバッグなどのセイフティシステム事業などを手掛ける。縫製工程を自動化する独自技術を持ち、それを生かした幅広い事業を展開している点が特徴。新規事業開発に積極的で、リハビリロボットは近く本格的な事業がスタートする計画だ。同社の現状と今後について後藤秀隆社長に聞いた。
――25年3月期の連結業績は期初予想(売上高92億円、営業利益18億円)を2度にわたり上方修正し、売上高95億6700万円(前期比13.4%増)、営業利益19億5300万円(同52.2%増)と好調でした。
「メディカルヘルスケア事業では、主力の血圧計腕帯が単価の高い機種を中心に出荷が増加しました。混迷する時代の中で、よりよいものを求める傾向が出て、高単価の商品が好調でした。為替の円安傾向による好影響もあり、前期の売上高は約61億円(同12.7%増)となりました。また、セイフティシステム事業はインド向けエアバッグ用縫製ラインが引き続き好調で、レーザー裁断機の受注も増加しました。南米などへ営業エリアも拡大しており、同事業の売上高は約34億円(同12.1%増)と伸びました」
――23年9月稼働開始のベトナム工場の効果が大きいですね。
「新工場は当社が新規に購入した土地に、従来の5工場をすべて集約する形で建設しました。従来は土地、建物ともレンタルでしたが、自社工場を保有することで、固定資産の減価償却費や借入の金利を加味しても通期で1.3億円ものコスト削減につながりました。前期にはべトナム工場において新たに工場用地1万2000平方メートルを取得し、今後、工場の拡張を計画しています。これが生産能力の拡大とともに、将来的にさらなるコスト削減につながるでしょう。また、環境省およびその執行団体である公益財団法人地球環境センター(GEC)が公募した『令和5年度二国間クレジット制度資金支援事業のうち設備補助事業』に採択され、同工場で太陽光発電プロジェクトを開始します。これにより、太陽光発電システム稼働による光熱費の削減も見込めるでしょう」
――海外展開はいかがですか。
「インド、中南米、欧州など世界の各地域で当社製品の需要が拡大しています。こうした状況に対応し、北陸新幹線が開通した福井駅前の『FUKUMACHI BLOCK』に世界戦略拠点『T-REX』を開設しました。県外からも広く人材を募集し、グローバル人材は着実に増えています。今後は営業とともに、ベトナムのMatsuya Innovation Center(MIC)と連携して開発も強化し、より一層の海外展開強化を推進していきます。海外展開では特にインドが活気付いており、大手エアバッグメーカーなどからの受注が好調です。また、南米ではメキシコ支店を中心に、ブラジル、ウルグアイなどへの営業を強化しています。今後は米国トランプ大統領の関税の影響により、コストダウンを目的とした自動化の需要増加が加速していくと予想されます。縫製を自動化する技術を持つ会社は世界的にも珍しく、当社にとってビジネスチャンスは大きくなっていくでしょう」
――リハビリ用ロボットなど新規事業はどんな状況でしょうか。
「メディカルヘルスケア事業では脳梗塞(こうそく)のリハビリ用ロボットを製造、販売しています。同ロボットには楽しみながらリハビリできるという面があり、病院やリハビリセンターでエビデンスを積み重ね、正式契約は近いと思います。また、同ロボットのメーカーであるポーランドのグローバル医療機器メーカーEGZOTech(EGZO)社がアジアに進出するという話があります。当社はインドを含めたアジアの生産を請負うよう交渉しており、将来的に大きな事業になっていきそうです。一方、ドローン用エアバッグに関して、米国で新たに特許を取得しました。ドローンについては筐体の製作を進めており、今期中には完成する見込みです」
――26年3月期の連結業績については、売上高96億円(前期比0.3%増)、営業利益20億円(同2.4%増)で、微増収微増益の見通しです。
「米国の関税問題や、ウクライナ、中東の紛争など、世界情勢が不安定で、今後も為替が大きく振れる可能性があります。また、営業および開発に関する人材採用の投資も引き続き積極的に行う方針で、今期業績については慎重な見方をしています。ただ、当社製品の需要が引き続き増加傾向にあることは間違いなく、中・長期的な成長性は変わらないと思います。一方、期末一括配当も前期と同様10円の予想ですが、配当性向は中期的に20%(前期は13.6%)に引き上げていく方針です」
――将来のビジョンを教えてください。
「セイフティシステム事業は主要顧客のトヨタ自動車 <7203> 以外の顧客との取引が増え、5月にはベトナム工場でエアバッグの新製品の出荷が始まるなど、さらに事業拡大が期待できる状況にあります。メディカルヘルスケア事業についても、世界的に健康志向が高まり、血圧計の需要は拡大しています。セイフティシステム、メディカルヘルスケアの既存2事業の需要は、今後、増えることはあっても、減ることはないでしょう。成長性は依然として高く、これからも両事業が当社業績の成長をけん引していきます。また、欧州やインド、中南米のブラジル、ウルグアイ、エルサルバドルなど、海外展開もより積極的に推進します。一方、リハビリ用ロボットなど、数年前から開発に取り組んできた事業の本格展開が見えてきたことから、新しい医療機器などその次の事業の開発にも注力していく考えです」
松屋アールアンドディ(松屋R&D) <7317> は縫製自動機の開発・製造・販売のほか、血圧計腕帯などのメディカルヘルスケア事業、セカーシート、エアバッグなどのセイフティシステム事業などを手掛ける。縫製工程を自動化する独自技術を持ち、それを生かした幅広い事業を展開している点が特徴。新規事業開発に積極的で、リハビリロボットは近く本格的な事業がスタートする計画だ。同社の現状と今後について後藤秀隆社長に聞いた。
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2025-06-20 09:30