「こどもでぱーと」、少子化時代の新価値創造―29年20棟体制へ

 進学個別指導塾の「TOMAS(トーマス)」、名門小学校・幼稚園受験のパイオニア「伸芽会」などで知られるリソー教育 <4714> とその親会社の不動産大手ヒューリック <3003> 、コナミグループ <9766> のコナミスポーツが共同で手掛ける「こどもでぱーと」がこのほど始動した。子どもとその保護者のための施設を集めた複合ビルを、2029年までに20棟を開業する構え。学習塾から学童保育や体操教室、ピラティスまで、ワンストップで利用できる環境により顧客を囲い込む。少子化時代における教育ビジネスの新たな価値創造の取り組みに注目が集まる。 <塾や学童、オールインワンで囲い込み>  こどもでぱーとは第1弾としてこの春、中野(東京都)とたまプラーザ(横浜市)の2拠点を開業した。ヒューリックの開発する物件にリソー教育とコナミスポーツがコンテンツを提供するほか、習い事やカフェなどニーズに応じて他の事業者も誘致する。  JR中野駅から歩いてすぐの好立地にある9階建てビルの「こどもでぱーと中野」は、3階にリソー教育の進学指導付き学童「伸芽’Sクラブ学童」、5階と6階にTOMASが入居し、4階にはコナミスポーツのジュニアスクールが入る。女性専用のピラティススタジオや、病児保育に対応する小児科のあるクリニックもオープンしており、まだ小中学生が学校にいる昼間の時間帯でもベビーカーで出入りする親子連れの姿がある。  TOMASはこの地で古くから教室を運営してきたが、こどもでぱーとの完成を機に移転。2フロアをまるごと使用した新校舎は電子黒板やWi-Fiを完備する。問い合わせは多く、前年の旧中野校との比較で生徒数は2割増のペースで伸びている。退会率も低く、現在およそ140-150人いる生徒数は来2月期の早い段階には約200人まで拡大する見通しだ。  200人という生徒数は、TOMASの全教室の中でずば抜けた大きさではない。しかし、こどもでぱーとは単純な規模ではなく、「オールインワンの教育ビル」という付加価値を追求した取り組みだ。  こどもでぱーと中野には英会話スクールや、バレエ教室などの習い事に利用できる多目的スタジオもある。利便性が差別化につながるほか、「ビル内の他の施設の利用客がTOMASを知り入会に結び付くなど、従来は取り込めなかった層へのアプローチができるようになった」(リソー教育の町田仁常務執行役員)というように相乗効果も生まれている。 ―TOMASについて―  TOMASは、リソー教育の展開する進学個別指導塾。全室ホワイトボード付きのブースで、生徒1人に先生1人が付く完全1対1の方式により個性に合わせた高品質な指導を行う。一般的な「1対2」や「1対3」の指導方法とは一線を画し、講師が生徒の学習状況に集中し、理解度に応じた指導を即座に行える点が特長の1つ。志望校から逆算した「合格逆算カリキュラム」で学習を進めるため、効率的な成果が期待できる。これにより毎年、難関校への高い合格実績を誇っている。 ――――――――――――  またTOMASは、授業をする講師とは別に社員が生徒1人ひとりの「担任」となり、学習の進捗管理や進路相談に対応する。生徒・保護者・講師と面談を行うことで、四者一体で緊密なコミュニケーションを図り、着実で確実な学力向上を支援し生徒や家族との信頼関係を築くことを大切にしている。 <「預かり所」と一線、真の学び提供>  主に中学や大学受験を控えた子どもに個別指導を提供するTOMASに対し、伸芽’Sクラブ学童は小学1-3年生が対象の学童だ。オープンしたばかりのこどもでぱーと中野校には現在、1学年の定員に当たる20人の1年生が在籍する。  カードキーと顔認証によるセキュリティーシステムを通過した先の教室には、小さな机が並ぶ。各児童が通う学校の特徴に応じた宿題対応に加え、国語・算数・理科・社会について独自の教材を用いた1つ上の学年レベルの学習時間を、午後4-6時の間に設けている。  全国規模の学童統一模試では毎回数十人の満点獲得者が出るという伸芽’Sクラブ学童だが、座学一辺倒ではない。月1回のディベートの時間や季節・行事に合わせた校外学習はもちろん、校舎対抗のドッジボール大会や合唱コンクール、夏休みのキャンプといったイベントを通じて豊かな人間性を養う情操教育も強みだ。  こども家庭庁によれば、学童の登録児童数は23年に約152万人と前年比で6.3万人増加した。ただ、コロナ禍以降の増加は一時利用による分が多く、離れるのも早いため業界では指導員が子どもの顔と名前をなかなか一致させられず安全面の懸念も生じている。一方、伸芽’Sクラブ学童は週3日以上の利用が条件の月極での契約を基本とし、単なる「預かり所」とは一線を画す。  伸芽会の利倉常高取締役は「政府の補助金効果もあり保育所や学童の数は拡充されたものの、それぞれの施設の特色がやや見えにくくなり、保護者としては逆に選びにくい部分もある」と話す。そうした中で同社は、「本当の学びを提供することで選んでいただき、先々まで顧客を囲い込めている」。伸芽’Sクラブ学童を修了して4年生からTOMASに入会する生徒も多いという。「こどもでぱーとたまプラーザ」には、小学校受験のための幼児教室「伸芽会」や受験対応型託児の「伸芽’Sクラブ託児」もあり、幼少一貫のワンストップでの教育サービスが充実している。 <ヒューリックも目標共有、地方進出視野に>  高品質な教育サービスで幼児教育から小中高大の受験指導まで幅広くカバーするリソー教育。出生数の減少が続く中で、教育ビジネスには「質の転換」が求められる。そうした環境で、1つの拠点で文字通り一貫したサービスを展開できるこどもでぱーとは、今後の教育業界における新たなスタンダードとなる可能性を秘めており、今後の大きな成長戦略として注目される。  27年には東京・渋谷でも開業を予定するほか、20拠点体制へ向けて現在6物件が具体化している。教育分野を強化するヒューリックとしても「その目標は共通のもの」(同社新事業創造部の中原雅範こども教育事業室長)だ。リソー教育の町田常務は、「将来的にはTOMASが1都3県の外側にも進出していくための原動力になることも期待される」と話している。
 進学個別指導塾の「TOMAS(トーマス)」、名門小学校・幼稚園受験のパイオニア「伸芽会」などで知られるリソー教育 <4714> とその親会社の不動産大手ヒューリック <3003> 、コナミグループ <9766> のコナミスポーツが共同で手掛ける「こどもでぱーと」がこのほど始動した。子どもとその保護者のための施設を集めた複合ビルを、2029年までに20棟を開業する構え。学習塾から学童保育や体操教室、ピラティスまで、ワンストップで利用できる環境により顧客を囲い込む。少子化時代における教育ビジネスの新たな価値創造の取り組みに注目が集まる。
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2025-06-26 12:15