「テンバガー(株価10倍化)」は欧州や日本の小型株に多くのチャンス=「テンバガー・ハンター」の共同運用主担当が来日

 フィデリティ投信は6月26日、「フィデリティ・世界割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンター)」が設定から5周年を迎えたことを機に、運用を担当する米フィデリティ・インベスメンツのポートフォリオ・マネージャー(共同運用主担当者)のモーゲン・ペック氏(写真:右)とサム・シャモビッツ氏(写真:左)が来日し、メディア向けに記者説明会を開催した。「テンバガー・ハンター」は2020年3月の設定。為替ヘッジの有無、決算期の違いなどで6コースを運用し、合計の運用資産残高が5月末時点で1兆4000億円を超えている。2024年1月には、同じ運用チームが同じ運用哲学で日本株に特化して運用する「フィデリティ・日本割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンター・ジャパン)」を設定し、2025年4月には同じく欧州株で運用する「フィデリティ・欧州割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンター・ヨーロッパ)」を新規に設定した。  「テンバガー・ハンター」は、フィデリティの徹底したボトムアップ調査とファンダメンタルズ分析に基づいて景気循環を超えて長期にフリーキャッシュフローを生み出す力がある企業を選定し、株価が割安な水準で投資する。「テンバガー」とは株価が10倍になると期待される銘柄のことで、割安な価格で投資した銘柄について、その価値に市場が気づいて株価が上昇することによってリターンの獲得をめざしている。米国では同じ運用方針で運用するファンドが1989年に設定され、運用残高は約3.2兆円規模の米フィデリティ・インベスメンツを代表するファンドの1つになっている。  米国の関税政策や中東情勢の緊張などによって2025年になって世界の株式市場が不安定な動きを続けているが、現在の運用環境においてペック氏は「より多くの投資機会が見出せる」と語った。「(シャモビッツ氏との)共同運用責任者の体制になって13年ほどの期間があるが、この間、コロナ・ショックや米国の地銀の経営危機など、何度かの急落場面を経験し、その変化に対応してきている。常に保有銘柄やウォッチリストに入っている銘柄の推移をみて投資チャンスに備えている」という。ペック氏は、「ファンドの運用方針は、強い忍耐が必要だ。将来にわたる魅力的な成長が期待できる銘柄がみつかったとしても、その銘柄が十分に割安な水準にあると判断できるまでは投資しない。常に準備をして投資できるタイミングを待っている」と語った。2025年4月のような急落場面では、ほとんどの銘柄の株価が大きく下がるため、投資のチャンスを待っていた銘柄も十分に割安な水準に下げて投資可能になった銘柄も少なくないという。  もっとも、リサーチチームは、米国関税政策の影響が業績や事業戦略にどのような変化があるのかについて個々の企業ごとに調査し、経営陣と対話するなど、企業情報は日々アップデートし続けられているという。さらに、他の株式運用チームのリサーチ担当や債券・不動産チーム、マネーマーケットチーム、ハイイールドリサーチチームなどチーム横断で協力することで、関税政策の影響やサプライチェーンの変更、財務の健全性などについて総合的な判断が下せることが運用の強みになっているとした。特に、関税政策の影響や景気判断についてはハイイールド債券のリサーチチームとの連携が有効だったという。  その結果、米国関税政策の影響が過度に警戒された4月には株価下落が大きかったシクリカル銘柄に投資機会があったという。小売り、自動車部品関連、産業機械などをあげた。また、5月のリバウンド局面では、市場の回復に遅れた高クオリティ銘柄に投資機会があり、食品サービス企業やビールメーカー、包装メーカーなどに投資機会があったとした。シャモビッツ氏は他の産業よりも一段高い関税が検討されている自動車部品関連企業に投資機会を見出したことについて「世界中の自動車関連企業の全てが関税の影響で企業価値が下がるわけではない。関税の影響は企業ごとに異なるため、個別企業ごとの評価が必要になる。その上で、関税政策の影響を考えても十分に魅力的な銘柄があらわれた」と語った。  今後の運用に関しては、中小型株において欧州株や日本株に依然として割安な銘柄が多いとした。MSCI世界小型株指数のPER(株価収益率)が13倍程度にあるところ、英国の小型株は12倍程度、日本の小型株は10倍割れの水準にある。米国の小型株が15倍程度であることと比較しても欧州株や日本株にチャンスは多いという。「全体の水準が良いというだけでなく、あくまでも個別銘柄の企業内容、そして、株価水準が十分に割安であるかが重要だ。世界中の株式市場を幅広くウォッチし、真に割安な水準にある魅力的な成長企業を発掘してポートフォリオに加えていきたい」(シャモビッツ氏)と語っていた。
米フィデリティ・インベスメンツのポートフォリオ・マネージャー(共同運用主担当者)のモーゲン・ペック氏(写真:右)とサム・シャモビッツ氏(写真:左)が来日した。
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2025-06-27 12:30