DC専用ファンドで初の純資産残高1兆円、5年で5倍になった外国株式インデックスファンド

 確定拠出年金(DC)専用ファンドである「野村 外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI(確定拠出年金向け)」の純資産残高が7月25日に1兆円を突破した。DC専用ファンドで純資産残高が1兆円を突破したのは初めてだ。7月25日時点で公募投資信託(ETF除く)の中で純資産残高で第10位にランクされる規模になっている。DC専用ファンドであっても1兆円の大台を超えるファンドが誕生したことは、DC市場の拡大を感じさせるとともに、DC市場が投信市場全体をけん引した大きく成長した米国の状況を踏まえると、国内の投信市場にも好影響を与えることが期待される変化といえる。  DC専用ファンドは、企業型DCおよび個人型DC(iDeCo)の運用のために設定されたファンドのこと。DC市場が積立投資を基本とし、長期に資金が積み上がっていくことが期待されるため、一般の公募ファンドと比較して割安な手数料(信託報酬等)が設定されるという特徴があった。ただ、近年はネット専用のインデックスファンドなど、公募ファンドの中にも手数料が極端に低いファンドが登場したため、DC専用ファンドだからといって、手数料率が公募ファンドよりも低いとは限らなくなってきている。むしろ、DC専用ファンドの方に設定が古いファンドが多く、インデックスファンドの分野では同じインデックスに連動するファンドで比較すると、DC専用ファンドの方が手数料率が高いというケースもある。  また、一般の公募ファンドがDCの運用ファンドに採用されることもある。運用会社では、「確定拠出年金向けファンド一覧」を公式ホームページ等で公表している。近年では低コスト・インデックスファンドの代表格である「eMAXIS Slim」シリーズも「確定拠出年金向けファンド」としてラインアップされている。すでに、SBI証券等のネット証券ではiDeCoに採用されていることが確認できる。今後、企業型DC市場への浸透も期待される。そのようになると、NISAで投資しているファンドと企業型DCやiDeCoで運用しているファンドが同じということにもなり、資産管理が一歩楽になることにもつながりそうだ。それは、DC資産のメンテナンスがおろそかになっている加入者が多いという状況を変えるきっかけになるかもしれない。  DC専用ファンドの残高ランキングでは、トップの「野村 外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI(確定拠出年金向け)」が1兆円を超えたことに続いて、第2位は「DIAM 外国株式インデックスファンド<DC年金>」の約6218億円、そして、「三井住友・DC外国株式インデックスファンドS」の約5169億円、「野村DC外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI」の約4440億円、「DCダイワ 外国株式インデックス」の約3835億円、「三菱UFJプライムバランス(安定成長型)DC」の約3485億円と続いている。残高トップ5は、全て日本を除く先進国株式インデックス(MSCIーKOKUSAI)に連動する外国株式インデックスファンドになっている。  DC専用ファンドの残高ランキングで外国株式インデックスファンドが上位を占めるようになったのは2020年以降のことだ。2020年6月まで残高ランキングのトップはバランス型の「三菱UFJプライムバランス(安定成長型)DC」だった(当時の残高は約2052億円)。その時、第2位だったのが「野村 外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI(確定拠出年金向け)」で残高は約1989億円だった。その後、「野村 外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI(確定拠出年金向け)」は残高がどんどん伸びて5倍超の1兆円を超えるまでに成長したが、「三菱UFJプライムバランス(安定成長型)DC」は緩やかな残高増加にとどまった。  この差は、2020年以降5年間の世界の証券市場が米国株式を中心にした先進国株式市場の上昇にけん引されたということが大きい。実際に、2020年6月末から2025年7月25日までのファンドの基準価額を振り返ると、「野村 外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI(確定拠出年金向け)」は2万6398円から7万6733円へと2.9倍に上昇したことに対し、「三菱UFJプライムバランス(安定成長型)DC」は2万129円から2万9830円へと48%値上がりしたに過ぎない。外国株式インデックスファンドは、株高によって基準価額が値上がりするとともに、資金流入額の拡大もあって、純資産残高が飛躍的に拡大することになった。  「野村 外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI(確定拠出年金向け)」はわずか5年間で純資産残高が約2000億円から1兆円超えに5倍増した。そして、DC市場は原則として企業型DCの場合は60歳などに設定されている定年退職まで資金が引き出されないため、よほど大きな市場変動がない限りは残高が純増していくことになる。米国の投資信託残高は2025年3月末時点で38兆5220億ドル(約5700兆円)という規模になっているが、この半分程度は米国の企業型DC(401k)とIRA(個人退職勘定)を通じた積立投資の残高だといわれている。日本国内の投資信託残高は2兆3720億ドル(約350兆円)と16分の1しかない。IMF統計によると名目GDPでは米国の29兆1849億ドルに対し、日本は4兆262億ドルで約7分の1の水準ということになる。GDPとの比較では、日本の投信市場はもっと大きくなっても良い。  DC専用ファンドの1本が残高1兆円に到達したことによって、DC市場全体が盛り上がってきたとは言えないものの、iDeCoやNISAという制度面の整備が進むとともに、インフレも実感されたことで資産運用のニーズが高まる環境が重なっていることが重要だ。5キロ2000円台で買えていたコメが、わずか1年間で4000円でも買えなくなってしまった。パンや乳製品、酒類・飲料、調味料など日常生活に必要な食品分野が年間で2割、3割値上がりするようなことを経験した。極端なインフレが生活を圧迫しているが、このインフレから家計を守ることに、資産運用は力があるはずだ。5年で5倍に成長した「野村 外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI(確定拠出年金向け)」は、積立投資の効用を表しているともいえるだろう。
確定拠出年金(DC)専用ファンドである「野村 外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI(確定拠出年金向け)」の純資産残高が7月25日に1兆円を突破した。
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2025-07-30 08:00