【為替本日の注目点】トランプ大統領、FRB理事にミラン氏を指名

ドル円は上値の重い中再び、147円割れを試す。トランプ大統領がFRB理事候補にCEA委員長のミラン氏を指名したことや、失業保険申請件数が高水準だったことでドルが売られた。ユーロドルは前日からほぼ変化なく、1.16台で推移。株式市場はまちまちの展開。ナスダックが73ポイント高と、最高値を更新。他の2指数は反落。債券は小幅に続落。長期金利は4.25%台に上昇。金は反発。原油はトランプ関税の影響から世界景気が鈍化するとの見方から6日続落し63ドル台に。
新規失業保険申請件数 → 22.6万件
6月消費者信用残高 → 7.371b
7月NY連銀インフレ期待 → 3.09%
ドル/円 146.95 ~ 147.58
ユーロ/ドル 1.1611 ~ 1.1671
ユーロ/円 171.26 ~ 171.68
NYダウ -224.48 → 43,968.64
GOLD +20.30 → 3,453.70ドル
WTI -0.47 → 63.88
米10年国債 +0.012 → 4.250%
【本日の注目イベント】
日 6月国際収支・経常収支
日 7月景気ウオッチャー調査
日 自民党両院議員総会
米 ムサレム・セントルイス連銀総裁、座談会に参加
加 カナダ7月新規雇用者数
加 カナダ7月失業率
トランプ政権は7日、各国・地域への新たな「相互関税」の適用を始めました。日米での合意に認識の違いがあったことから赤沢経済再生相が訪米しラトニック商務長官と会談。合意した税率の履行と、自動車関税の15%への早期引き下げを求めましたが、見切り発車となったようです。日本政府は、既存の税率が15%未満の品目は一律15%になり、牛肉など15%以上の場合は上乗せされずに従来の税率が維持されると説明していましたが、日本からの輸入品は既存の税率に関係なく、15%の関税が上乗せされることになるようです。昨日は自民党の小野寺政調会長も、「米国の対日関税はEUのような特例が認められず、通常の関税率より15%上乗せされているのが、今の現状だ」と話していました。土壇場で日米間の解釈の差が表面化した格好です。
今後円高方向に振れるとすれば、その要因の一つに、トランプ大統領が次期FRB議長を早期に指名し、発表することだと筆者は予想していますが、トランプ氏は昨日、議長ではなく本日辞任するクーグラー理事の後任として、経済諮問委員会(CEA)のミラン委員長を指名しました。これだけでも、トランプ氏のお気に入りの人物だということで、「利下げが進む」との見方からドルが売られました。また、次期FRB議長候補には4名ほどの候補者がいますが、ウォラーFRB理事が最有力候補だという見方が浮上しています。トランプ氏が早期に次期議長を任命するようだと、ドルが下落する可能性は高いと言えます。筆者はパウエル議長の圧力に負けない毅然とした姿勢や考え方など、個人的には強く支持していますが、昨日利下げに踏み切ったイングランド銀行のベイリー総裁も同じようです。ベイリー氏は、パウエル氏が直面している重圧について問われ、「米国の出来事についてコメントするつもりはないが、パウエル氏は私の友人であり、私たちは非常に近しい関係にあり、極めて密接に連携している」とした上で、「この上なく誠実な人物だ」と称賛していました。また、ECBのラガルド総裁も先月、「勇気ある中央銀行総裁の規範を体現している」と述べていました。「『遅い』パウエル」などと罵詈雑言を浴びせているトランプ氏とは大きな違いです。
サマーズ元財務長官は、トランプ氏の経済政策は、先進国と見られていたアルゼンチンが戦後に発展途上国へと転落した道に「酷似している」とブルームバーグ・テレビジョンの番組で警告していました。「アルゼンチンがカナダやオーストラリア、ニュージーランドなどとともに、天然資源に恵まれた先進国として一部で評価されていた1946年、ファン・ペロンがポピュリスト運動を始めた。ペロン主義は輸入代替と高関税を掲げ、国内産業の振興を図った。多くのシンクタンクが2023年の分析で、こうした保護主義こそがアルゼンチン経済崩壊の『主要な政策』だったと指摘している」と説明し、「考えてみれば、われわれが今やっていることに、恐ろしいほど似たモデルだ」と指摘しています。サマーズ氏はさらに、「米国には極めて強靭な制度が存在し、ペロン時代のアルゼンチンにはなかった強みだ。しかし、アルゼンチンの独裁的な過去との類似点として、保護主義や指導者への『個人崇拝』、メディアや大学、法律事務所など市民社会の一部に対して攻撃した」とし、その上で「米国民がもっと注意を払う必要のある警戒すべき教訓である」と述べていました。筆者はアルゼンチンの経済的背景はよく知りませんが、なかなか示唆に富んだ考察かと思います。
FRBの新理事を指名し、金融当局に対してさらに利下げ圧力を強めているトランプ氏ですが、市場も先週末の「雇用統計ショック」を境に、実態経済からしても大幅利下げは避けられないとの見方に傾いています。また、それ以降に発せられたFOMCメンバーの発言も、おおむねそれに沿ったものでした。そんな中、アトランタ連銀のポスティック総裁は、「年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらない」と述べています。ポスティック氏は、「関税の影響が一時的なものなのか、あるいはもっと持続的なものなのかという点が、現時点では恐らく最も重要な問題だ」と指摘し、「この日発動された関税の影響が、一時的な物価上昇にとどまるという教科書的な関税の例に当てはまるには、いくらか懐疑的な理由がある」と語り、「これは一度きりで、ある朝目が覚めたら全ての関税が明らかになっているという話ではない。むしろ、関税が頻繁に変化することで、消費者の意識の中に関税や物価上昇見通しが浮かぶ期間が長くなり、インフレ期待が高まるリスクがある」と指摘していました。FOMCメンバーの中では少数派に属すると思われ、足元では利下げには組みしやすい状況下、一考に値する見方かと思います。また、市場の関税に対する楽観的な見方にも一石を投じていると思います。
本日のドル円は146円~148円程度を予想します。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は上値の重い中再び、147円割れを試す。(イメージ写真提供:123RF)
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2025-08-08 10:30