松屋R&D・後藤秀隆社長に聞く:需要増のトレンドは変わらず
松屋アールアンドディ(松屋R&D) <7317> は縫製工程を自動化する独自技術を持ち、それを生かした幅広い事業を手掛ける。縫製自動機の開発・製造・販売のほか、血圧計腕帯などのメディカルヘルスケア事業、カーシート、エアバッグなどのセイフティシステム事業などを展開中。各事業の需要増に合わせてベトナム工場を拡充する計画で、今後、さらなる成長が期待される。同社の現状と今後について後藤秀隆社長に聞いた。
――26年3月期の第1四半期(4-6月)決算は連結売上高21億3700万円(前年同期比6.0%減)、経常利益5億600万円(同5.4%増)でした。
「メディカルヘルスケア事業では、為替が円高に推移したものの、ベトナムでの出荷が堅調に推移しています。主力の血圧計腕帯については、よりよいものを求める傾向が出て、高単価の商品が特に伸びています。セイフティシステム事業では、エアバッグ関連が5月からベトナムで新規製品の出荷を開始し、カーシート関連もベトナムでの生産が好調です。ただ、縫製自動機は前期に中国向けレーザー裁断機の大口売上があったため、その反動減がありました」
――通期では期初予想の売上高96億円(前期比0.3%増)、経常利益20億800万円(同1.2%増)を据え置いています。
「コロナ禍で2年間をロスした感はありますが、メディカルヘルスケア事業、セイフティシステム事業とも長期的に需要増のトレンドが続いています。それは今期以降も変わらないでしょう。需要は国内だけでなく、海外、特に欧州やインド、中南米のメキシコ、ブラジル、ウルグアイ、エルサルバドルなどでも拡大基調にあります。前期にはメキシコ支店を設立し、中南米の強化を図りました。また、北陸新幹線が開通した福井駅前の『FUKUMACHI BLOCK』に世界戦略拠点『T-REX』を開設し、海外志向の強い人材の獲得にも注力しています」
<27年にはベトナム新工場が稼働開始へ>
――御社の事業展開において、ベトナム工場の役割が大きくなっています。
「現在のベトナム工場は当社が新規に購入した土地に、従来の5工場をすべて集約する形で23年9月に稼働を開始しました。従来は土地、建物ともレンタルでしたが、自社工場を保有することで、固定資産の減価償却費や借入の金利を加味しても通期で1.3億円ものコスト削減につながりました。セイフティシステム事業、メディカルヘルスケア事業とも、今後、さらなる事業拡大が見込まれ、現工場では早くも生産スペースが足りなくなる見通しとなっており、今回、新工場の建設を決めました」
――新工場の稼働開始はいつの予定ですか。
「完成は26年9月、生産開始は27年4月の予定です。従来工場に隣接した土地を既に取得済みで、投資額は6億-8億円とみています。新工場が生産能力の拡大とともに、将来的にさらなるコスト削減につながるでしょう。当社は自動化の技術に強みを持っており、新工場にもそれを生かして、より一層の自動化を進める計画です。これまで10人必要だった工程が1人で済むようなことにもなりそうです。28年3月期以降には売上拡大が続く上、収益力もより高まるでしょう」
――新規事業の状況を教えてください。
「メディカルヘルスケア事業では脳梗塞(こうそく)のリハビリ用ロボット『LunaEMG』を製造、販売しています。今期には日本リハビリテーション医学会学術集会に出展し、テスト出荷した病院による症例報告も行われました。今期中には正式契約もあると思います。また、同ロボットのメーカーであるポーランドのグローバル医療機器メーカーEGZOTech社がアジアに進出するという話があり、当社はインドを含めたアジアの生産を請負うよう交渉しており、将来的に大きな事業になっていきそうです」
「一方、当社は縫製品事業で安定成長を継続しながら、新規事業の開発で長期的な成長を目指しています。新規事業については、主にベトナム子会社のMatsuya R&Dにおいて、継続的に開発に取り組んでいます。リハビリ用ロボットなど、数年前から開発に取り組んできた事業の本格展開が見えてきたことから、その次の、現在、開発を進めている製品は、今後、徐々に明らかにしていくつもりです」
――将来のビジョンを教えてください。
「セイフティシステム事業のカーシートやエアバッグ、メディカルヘルスケア事業の血圧計腕帯の成長性は依然として高く、来期以降も両事業が当社業績の成長をリードするでしょう。中でも、ガソリン車に加えて、EV(電気自動車)なども生産を拡大していることから、カーシート、エアバッグの需要は増えることはあっても減ることはないと思います。トランプ関税が懸念材料ではありますが、関税の引き上げが自動化のニーズ増につながり、当社にとっては逆に追い風になる可能性もありそうです」
松屋アールアンドディ(松屋R&D) <7317> は縫製工程を自動化する独自技術を持ち、それを生かした幅広い事業を手掛ける。縫製自動機の開発・製造・販売のほか、血圧計腕帯などのメディカルヘルスケア事業、カーシート、エアバッグなどのセイフティシステム事業などを展開中。各事業の需要増に合わせてベトナム工場を拡充する計画で、今後、さらなる成長が期待される。同社の現状と今後について後藤秀隆社長に聞いた。
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2025-09-18 09:15