SBIとKKRの連携で実現した国内初の日々設定・解約可能なプライベート・デット商品、「SBI オルタナティブ・ハイインカム・セレクト・ファンド」の先進性

SBIアセットマネジメントは9月9日に「SBI オルタナティブ・ハイインカム・セレクト・ファンド(年4回決算型)」を設定し、運用を始めた。機関投資家の間で新しい投資対象として活用が始まっている「プライベート・デット」といわれる投資商品を個人投資家向けに日々設定・解約ができる商品にした。「プライベート・デット」に投資する商品が日々設定・解約できる仕組みで提供されるのは国内で初めてのケースになる。同ファンドの設定の背景や運用の仕組みについてSBIアセットマネジメント運用部部長の服部嘉章氏(写真)に聞いた。 ――ファンド設定の狙いは?  「オルタナティブ」というと「代替」と翻訳されて、株式を代替するとか、債券に投資する代わりに銀行ローンに投資するなど、運用形態も含めてさまざまな「代替投資」を指します。このファンドでいう「代替」とは、銀行の融資に対する「代替」です。伝統的な金融仲介機能としては、お客さまから預金として預かった資金を銀行が企業等に融資して、その融資からあがった収益を預金利息等としてお客様に還元していました。ところが、今、銀行は規制が厳しくなってしまって従来のように新興企業や中小企業などを対象としてリスクを取って融資をすることが難しくなってきています。そこで、銀行に代わってKKRやブラックストーンなどプライベートカンパニーが、プライベートに資金を提供するようになっています。銀行業務の代替が始まっているのです。この仕組みをお客様に還元できるような仕組みにしたのが「プライベート・デット」といわれるオルタナティブ投資の仕組みです。 個人投資家は、銀行などと違って3カ月ごとの決算や年次の決算がないので、一定程度の価格変動のブレを許容できます。資産形成に「株式」や「株式ファンド」を使ってその大きな値上がり益を資産の成長につなげることも広がっています。ただ、「株式」の場合は、たとえば、リーマンショックの時は2007年10月に直前の高値をつけた後、大きく下げて、ようやく戻ってきたのは2012年3月でした。また、「日経平均株価」が1989年12月末のバブル時の最高値を更新するまでに30年以上もかかった例もあります。 これに対し「デット」の商品は、中身がローンという融資の形態ですから、契約期間があり、その期間が経過すれば資金が戻ってきます。ローンは、1年あたり何%の利息で貸しますという契約ですから、「デット」の場合は、保有期間の間は利息収入もあります。いつ戻ってくるかわからない「株式」に比べて「デット」は戻ってくるまでの期間も、保有期間中の利息なども計算できる資産ということができます。資産運用にあたっては、「株式」のように大きな値上がり益も期待できる反面、大きく下落した場合はいつ戻ってくるのかわからないような資産だけでなく、ある程度期間を区切って収益が計算できる「デット」を加えて持っておいた方が良いと考えます。 そして、同じ「デット」の商品でも、しっかりと担保を取っている商品の方が、資金が期日までに戻ってくる可能性が高くなります。魅力的な利回りがあり、かつ、担保のある「デット」の商品を選んで、個人投資家の方々に、高い利回りを提供しつつ、可能な限り投資リスクの低い商品を提供したいという考えで生まれたのが「SBI オルタナティブ・ハイインカム・セレクト・ファンド(年4回決算型)」です。   ――ファンドの仕組みは? 「プライベート・デット」というオルタナティブ商品は、流動性がない商品であるため、そこに非流動性プレミアムといわれる上乗せ金利が付きます。ただ、一般的に最低投資額は500万円以上となり、基準価額は月1回公表され、購入申込みも月に1回で、解約(売却)は四半期に1度しかできなくて、解約代金は数週間後の支払いとなり、また、解約の上限額が設定されるなどさまざま制限が加わっていて、購入したいと考える人は限られてきます。実際には、オルタナティブ100%にして流動性を犠牲にしてでもより高い利回りがほしいというお客さま向けの商品も今現在はかなりの需要があるのですが、一般のお客さまを対象とした公募投信では日々解約できない商品は難しいですし、最低投資単位も1万円以内にしたいと考えました。 そこでオルタナティブ商品の高い利回りに可能な限り近づけた上で、日々の解約が可能という商品を設計しました。オルタナティブ商品の利回りと比べれば、利回りの水準は低くなりますが、「SBI オルタナティブ・ハイインカム・セレクト・ファンド(年4回決算型)」は、1万口当たり1万円(1口1円)で設定し、一般の公募投資信託と同様に基準価額は毎営業日に公表します。申込・解約は原則日次で可能、解約代金も6営業日に受け取り可能にしています。 ――投資対象ETFを選定した理由は? 投資対象のETFの中には運用コストが年1%を超えるものもあり、そのためにファンドの実質的な運用コストが年1.5%を超えてしまっています。 当ファンドは、世界最大級の総合的資産運用会社であるKKRやブラックストーンなどが運用するプライベート・クレジットやバンクローン、CLOなどに投資するETFを投資対象としています。 たとえば、「KKR CREDIT INCOME FUND」は、欧州のダイレクトレンディングとパブリック・クレジット戦略を組み合わせた運用戦略を行うファンドですが、その想定利回りは現地通貨(豪ドル)ベースで9.30%になります。現地の税金も含めた運用コストは1.10%になりますが、このコストを控除しても年8%を超える高いリターンが期待できるのです。また、ステート・ストリートが運用するパブリックとプライベートのクレジット投資を行うアクティブETF「SPDR SSGA IG Public&Private Credit ETF」もETFの運用コストが0.70%になります。ETFの想定利回りが7.70%なので、年7%程度のリターンが期待できます。 このファンドの設計にあたっては業務提携しているKKR社とかなり綿密なミーティングを行いました。当初はプライベート・デットに100%投資するような、よりアグレッシブにリターンをめざすファンドの構想もあったのですが、より広く国内の投資家の皆さまに使っていただきやすい商品性にしようということで、現在の姿になりました。 アセットクラス別にポートフォリオの内容を分類すると、プライベート・クレジットが11%、欧米のバンクローンが51%、CLOが25%、欧米のハイイールド社債等が10%などとなっています。運用会社別の内訳は、KKRが25%、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが5%、ブラックストーンが20%、フランクリン・テンプルトンとジャナス・ヘンダーソンがそれぞれ25%という比率です。オルタナティブ投資の運用会社として長い経験のある5社の投資商品を1つにまとめて提供するという点でもユニークな商品になっていると思います。 このように優れた運用を行っているETFを絞り込んでいった結果として、投資対象としたETFの運用コストが年0.68%程度となり、ファンドとしての信託報酬率を加えると実質的に年1.527%程度(税込み)の手数料を頂戴する形になりました。ファンドの設計時の運用ポートフォリオから想定される利回りは外貨ベース(米ドルと一部で豪ドル)で7.89%程度になり、運用に関するコスト0.68%を差し引くと年7.21%程度の利回りが期待できるものになりました。ここから投信の信託報酬等を差し引くと現地通貨ベースで年6.36%程度の利回りが想定される商品になっています。年4回の決算ですので、四半期ごとに投資元本に対して年1.5%程度の分配金を出すようなイメージです。 ――想定される利用方法は?  個人投資家の皆さまが運用される資産は、すべてが老後に向けた20年、30年先の資金ばかりではないと思います。30年くらいにわたって運用ができるような資金であれば、株式を中心としたファンドに長期投資するということで問題ないと思うのですが、5年後には住宅ローンの頭金にしたいとか、子供が大学に行くときの入学金に使いたいなど、ある程度の期限のある資金の場合は株式では売却時に損失が出るようなこともあり得ます。その場合は、リスクを抑えた債券型の商品の方が投資目的にかなっていると思います。当ファンドは債券ファンドの中で、利回り水準をできるだけ高くするように工夫したファンドです。 ただ、高い利回りを実現するために組み入れたオルタナティブ商品は、本来は流動性を犠牲にする商品であるため、これを日々決算ができるようにするために一部デリバティブ手法を用いています。このため、NISA(少額投資非課税制度)の対象商品ではありません。外貨ベースで年6.34%程度の想定利回りが20%源泉課税によって年5%程度の水準になりますが、安定的なリターンが想定できる商品としてご活用いただきたいと思います。
「SBI オルタナティブ・ハイインカム・セレクト・ファンド(年4回決算型)」の設定の背景や運用の仕組みについてSBIアセットマネジメント運用部部長の服部嘉章氏(写真)に聞いた。
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2025-09-24 12:30