【為替本日の注目点】パウエル議長追加利下げを示唆

 東京市場では一時152円台半ばまで買われたドル円は、日経平均株価の下落に合わせて151円台後半まで押し戻される。NYでは米中貿易摩擦への懸念が残り、152円台ではドル売りが優勢に。ユーロドルはフランス政局の改善から小幅に上昇。株式市場は米中貿易が不透明なことが重石となりナスダックとS&P500は下げたが、ダウは200ドルを超える上昇。債券相場は横ばい。長期金利は変わらず4.03%台で推移。金は続伸。原油は反落。 ドル/円 151.61~ 152.16 ユーロ/ドル 1.1549 ~ 1.1615 ユーロ/円 175.50 ~ 176.28 NYダウ +202.88 → 46,270.46 GOLD +30.40 → 4,163.40ドル WTI -0.79 → 58.70 米10年国債 ±0 → 4.032% 【本日の注目イベント】 日 8月鉱工業生産(確定値) 中 中国9月消費者物価指数 中 中国9月生産者物価指数 欧 ユーロ圏8月鉱工業生産 米 9月消費者物価指数 米 10月NY連銀製造業景況指数 米 ベージュブック(地区連銀経済報告) 米 G20財務相・中央銀行総裁会議(16日まで、ワシントン) 米 決算発表→ バンク・オブ・アメリカ、モルガンスタンレー、ユナイテッド  昨日の午後の東京市場では、株価が一時1500円を超える下げを見せた際、152円60銭台まで買い戻されたドル円が再び151円台後半まで売られました。米中貿易摩擦の不透明さに加え、日本の政局の不安定さが重石となり、「高市トレード」が巻き戻された一日でした。  「中国とはうまくいっており、心配はない」と述べたトランプ米大統領でしたが14日には、中国との食用油貿易を停止する可能性があると述べ、米中の貿易関係に新たな緊張を生じさせています。トランプ氏はSNSへの投稿で、中国が米国産大豆の購入を拒否していることについて、「経済的に敵対的な行為であり、意図的に米国の大豆農家に困難をもたらしている」と指摘。「食用油の貿易停止が実施されれば報復措置になる」との認識を示しました。また米通商代表部(USTR)のグリア代表もCNBCで、「最近の中国政府の声明から好戦的な文言が減った」とし、「中国が行き過ぎたことを認識している兆候が見られる」と指摘した上で、「どうなるかは見守るしかない。現時点で中国が出口を見つけるのは難しい」と語っていました。トランプ大統領と中国の習近平国家主席が月内に会談を行う可能性がある中、両国は報復合戦をやめる兆しをほとんど見せていません。トランプ氏と習氏は韓国で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の場で会うための「予定された時間」をなお確保していると、グリア氏は述べていました。  立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の3党は本日党首会談を行う見通しですが、立憲民主党が目指している「野党候補の一本化」が実現するのかどうかが焦点です。国民民主党の玉木代表は、「首相指名選挙に野党統一候補で臨むには、基本的政策で一致することが不可欠」との認識を示しており、特に立憲民主党に対し、現実的な安全保障政策に転換するよう求めており、立憲民主党の野田代表がこの点に関してどこまで歩み寄れるのかが注目されます。これまでの動きを見る限り、野党第一党の立憲民主党は「野党統一候補の実現」に向けて、「野党候補の首班指名は立憲民主党以外でもいい」などと、かなり譲歩してきたように見受けられます。高市自民党総裁も本日、野田、玉木代表と個別に会談するとの報道もあります。首班指名が行われると見られる21日(火)までに、自民、公明も含めた活発なかけ引きが行われます。  パウエル議長は14日、連邦政府機関の閉鎖で経済データの公表が滞る中でも、今月のFOMC会合で0.25ポイントの追加利下げを実施する方向にあると示唆しました。議長は全米企業エコノミスト協会(NABE)の年次総会で講演を行い、「米経済見通しは9月会合以降変わっていないと見受けられる」と述べ、「雇用の伸びが鈍化しており、今後さらに弱まる可能性がある」と指摘。「求人が一段と減少すれば失業率上昇につながる可能性が高い。求人数が減少してもこれまでは問題なかったが、失業率が上昇に転じる地点に近づいている」と発言しています。ただ、議長の発言後も市場への影響はほとんどなく、市場はほぼ100%の利下げ確率を織り込んでいると見られます。  また、ボストン連銀のコリンズ総裁も労働市場を支えるため、年内利下げを続けるべきだとの考えを示しました。ただ一方で、今後もインフレを確実に抑制できるだけの水準は維持する必要があるとも指摘していました。総裁は14日、ボストン連銀のイベントで講演し、「インフレリスクの抑制がやや一段と進む一方で、雇用への下振れリスクは強まっている。労働市場を支えるためには、年内に政策の正常化をさらに少し進めるのが賢明だと思われる」と述べ、さらに、「いくらか追加緩和を行っても、金融政策はやや引き締め的な状況が維持される。これは関税の影響が経済全体に波及した後、インフレの鈍化再開を確実にする上で適切だ」と指摘しています。追加利下げには前向きな姿勢を見せながらも、関税引き上げに伴うインフレには注意すべきだとの認識でした。  インフレが概ね中銀目標に達しているユーロ圏ですが、ラガルドECB総裁が政策金利に言及しました。ラガルド総裁は、「ユーロ圏の金融政策と経済は適切な状態」にあるとの見方を繰り返しつつ、利下げが終わったと宣言することはできないと表明しました。ラガルド氏はCNBCとのインタビューで、「米国との通商合意により不確実性は大幅に後退し、経済成長に対するリスクはいっそう均衡、インフレに対するリスクもまずまず均衡している」との見方を示しました。さらに、金融緩和は終わったのかと問われると、「そのようなことは決して言わない。中央銀行当局者の仕事に終わりはないと思っているからだ」と答えていました。ECBの金利水準は、景気を刺激も加速もさせない「中立金利」に近いと見られています。  「内憂外患」が、先週1週間続いた「ドル高・株高」の動きにブレイキをかけています。トランプ大統領の「恫喝外交」は今に始まったことでもありません。いずれ落しどころを探って来ると思われ、国内の政治的混迷も、最後は「高市首相誕生」かと予想していますが、どうでしょう。  本日のドル円は151円~152円80銭程度を予想します。 (編集担当:亜州リサーチ=サーチナ) (写真:123RF)
東京市場では一時152円台半ばまで買われたドル円(イメージ写真提供:123RF)
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2025-10-15 10:45