パフォーマンスの好調さが際立つ「東京海上・宇宙関連株式ファンド」、過去1年で65%超の実績の背景は?

東京海上アセットマネジメントが設定・運用する「東京海上・宇宙関連株式ファンド」のパフォーマンスが好調だ。2025年9月末時点での過去1年間のトータルリターンは65.46%で、代表的なインデックスファンドのリターン(「全世界株式(オール・カントリー)」連動型の22.06%や「米国株式(S&P500)」連動型の22.37%)と比較しても大幅に上回っている。特に、2025年に入ってからのパフォーマンスが好調だ。同ファンドの好調なパフォーマンスの背景等について東京海上アセットマネジメント執行役員 ビジネス開発本部共同本部長の浅野孝氏(写真)に聞いた。
――ファンドのパフォーマンスは2025年になってから向上しています。2025年になってどんな変化があったのですか?
2025年の変化は、トランプ政権が発足し、宇宙開発について政策として積極的に取り組むという機運が高まったことが宇宙関連業界への期待につながりました。
ファンドを設定した2018年当時は、「宇宙」というコンセプトが、まだ夢物語、SFの世界という印象が残っていました。現在、当ファンドの運用を実質的に行っているヴォヤ・インベストメント・マネジメントの運用チームは、サンフランシスコに運用拠点を置き、技術革新をリードする企業を発掘する成長株運用に強みがある会社です。そこが「宇宙」に着目した運用戦略を立ち上げるという話を聞き、将来的に大きな可能性があると感じてファンド設定に至りました。
「宇宙」という産業分野がSFの世界から、私たちの日常生活に深くかかわる存在としてより意識され始めたのはここ数年のことだと思います。たとえば、今では皆様が当たり前に使用しているGPSを使った位置情報は人工衛星からの情報に基づいていて、新たな人工衛星の打ち上げにより位置精度が向上しています。また、気象衛星の情報が天気予報に活かされていることは良く知られていますが、今では、特定の市町村の茶畑の茶葉を摘む最適な時期は何月何日かというようなことを、衛星情報を使って判定できるようになっています。また、衛星から魚群探知をして効率的な漁業をサポートするとか、デパート等の駐車場の稼働率を衛星で監視してマーケティング活動に活かすようなことも始まっています。このように今では宇宙を活用することが、私たちの生活を豊かにすることに役立っています。
一つの象徴的な事例が、閉幕した大阪万博において、アメリカ館のテーマが「スペース&テクノロジー」だったことです。万博は5年に一度開催されていますが、その時々のテーマは、各国がその時々の目玉政策の1つを取り上げているものだと思います。現在のアメリカにおいて、「宇宙」が1番目に記載するテーマに選ばれたのは、宇宙産業に対するアメリカの期待の表れと考えてよいのではないでしょうか。
当ファンドをテーマ型ファンドと捉える向きもあると思います。テーマ型ファンドというのは、これまでいくつも作られてきました。その中で、たとえば、「IT」もかつてはテーマの1つだったと思うのですが、今では情報革命・産業革命のように捉えられて、旬のあるテーマではなく、継続的に投資する領域になっています。これからは「宇宙」も大きな産業のくくりとして継続的に投資する領域になっていく可能性が強いと考えています。
その大きな産業トレンドが入口に差し掛かったばかりで、今後は10年、20年という長い期間にわたって続いていくトレンドになっていくと思いますので流行り廃りの強いテーマ型ファンドとは少し違うと考えています。そして、IMFの見通しでは今後数年世界のGDP成長率が年率3%程度で伸びていくことが予想される中、当社としては「宇宙」関連産業は年率10%弱の成長が続くと考えています。
――宇宙関連ファンドには、インデックスファンドを含めていくつかのファンドがあります。インデックスなどと比較して貴社ファンドの特徴は、どこにあるのでしょう?
当ファンドのパフォーマンスは、直近3年間程度の間で改善しており、特に過去1年間では当ファンドのパフォーマンスが良好です。
これは、宇宙産業自体が立ち上がってきたばかりで、これから大きく発展しようという中にあるため、アクティブファンドの銘柄選定の力が発揮しやすい環境にあるからだと考えられます。関連事業には今後の成長が確かなものや、事業が未成熟で評価が難しいものなど様々な段階の事業があります。その中で、当ファンドではヴォヤIMの企業調査を通じて、今後の成長性が高いと考える事業やその分野で株価上昇の余地が大きいと考える銘柄をピックアップしています。
――中長期の投資テーマとして「宇宙」が魅力的な理由について教えてください。
「宇宙関連株式」というのは、「AI関連株式」や「半導体関連株式」と同じように、中長期的な投資対象として保有していく価値がある産業分野だと思います。たとえば、国内では2024年1月の新NISAスタート以降に、「全世界株式(オール・カントリー)」や「米国株式(S&P500)」に連動するインデックスファンドで積立投資する投資家が急速に増えています。投資の入り口として市場平均に連動するインデックスファンドの利用は理にかなっていると思いますし、「預貯金」より「投信」を選択していただいたのは、将来の資産形成の第一歩として非常に良かったと思います。
ただ、過去5年、10年を振り返ると、インデックスファンドと「半導体関連株式」に投資していた場合のパフォーマンスの差は非常に大きくなっています。成長の著しい産業の関連株式の株価は、爆発的に上昇しています。今、「宇宙関連株式」は、その変化の入り口に立ったところです。たとえば、半導体関連産業は市場が成熟し始めて、どこかの企業が競争で勝ち残れば、どこかが負けるというような関係が生まれてきています。これに対して宇宙関連は、新しい産業として投資資金も豊富に流入してきているので、これからの成長性が未知数の新興企業も含めて株価は好調です。
「東京海上・宇宙関連株式ファンド」は、宇宙関連産業を「ロケット・衛星開発製造、打ち上げサービス」「宇宙データの利用サービス」「宇宙ビジネスを支える関連ビジネス」「新たな宇宙ビジネス」の4つのグループに区分し、それぞれの分野で成長が見込まれると考える企業に投資しています。この4つの区分は、どこかが決めたものなどではなく、運用を担当しているヴォヤ社が独自に作って調査を続けているものです。宇宙関連産業を網羅的にとらえて、整理して情報管理ができるほどに調査していることがわかっていただけると思います。この専門的な知見が、将来の成長企業を選び抜くベースになっています。
投資の第一歩から、踏み出した第2歩、第3歩の手段として高い成長が期待される産業にテーマを絞って投資する当ファンドなどをご検討いただきたいと存じます。
「東京海上・宇宙関連株式ファンド」の好調なパフォーマンスの背景等について東京海上アセットマネジメント執行役員 ビジネス開発本部共同本部長の浅野孝氏(写真)に聞いた。
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2025-10-24 09:45