「オール・カントリー」を上回る厳選投資ファンド「グローバル株式トップフォーカス」、運用担当者に投資銘柄の選定方法を聞く

アモーヴァ・アセットマネジメント(旧 日興アセットマネジメント、2025年9月に社名変更)が設定・運用する「グローバル株式トップフォーカス」は、設定来のパフォーマンスで常に「全世界株式インデックス(MSCI-ACWI)」を上回る運用成績をあげてきた。アクティブファンドが手数料控除後でインデックスを上回ることが非常に難しいといわれる中、安定的にインデックスを上回り続けることができる秘訣はどこにあるのか? 同ファンドを運用するスコットランド・エジンバラの運用拠点から来日したグローバル株式チームのポートフォリオマネージャーのイアン・フルトン氏(写真)に聞いた。  ――日本、新興国を含むグローバル株式市場から、相対的に魅力があると判断される40~60銘柄程度の銘柄に厳選投資するファンド「グローバル株式トップフォーカス」は、安定的に「全世界株式インデックス」を上回る運用成績を残しています。同ファンドで銘柄を厳選するにあたって、どのようなポイントで銘柄を絞り込んでいるのですか?  私たちは、「フューチャークオリティ」という概念を使って投資戦略を行っています。投下資本利益率(ROIC)が一貫して高い会社、将来に向けて高いと考えられる会社に投資するという考え方です。ROICが一貫して高いと考えられる会社は、長期的に高いリターンを実現できると信じています。  銘柄を特定するにあたって4つの柱となるエレメント(要素)があります。まずは、「フランチャイズ(事業性)」です。その会社が同業他社と比べてどういったポジショニングになるのか、また、業界の進展はどうなのか、それから、成長収益性などさまざまなところを見て、その会社の位置付けを考えます。ウォーレン・バフェット氏は「競合他社に対する優位性」といっていますが、それは、私たちが「フランチャイズ」と呼んでいる概念に近いと思います。  2番目は「マネージメント(経営のクオリティ)」です。この点は多くの投資家が見落としている部分であると思います。特に、どんな資本配分をしているのかという点を重視します。たとえば、コストカットをしている場合、ROICは短期的には上がるかもしれません。しかし、コストカットだけでは成長は期待できません。成長し、そして、再投資をすることによってROICを長期的に改善していく会社こそが良い会社だと私たちは思っています。将来のリターンに対してちゃんと投資をしていることが重要なのです。  3番目の要素は、「バランスシート(財務状況)」です。私たちは、債務に頼っている会社ではなくて、キャッシュフローによって成長を実現する企業、セルフファイナンスできる会社を好んでいます。  そして、最後の要素が「バリュエーション」です。バリュエーションが最後にみるピースなのですが、ROICを継続的に伸ばすことができるクオリティが高い企業でも株式を割高な水準で購入した場合、投資成果がクオリティの低いものになりかねません。  このクオリティ重視の銘柄選定が有効であることは、米国のあるストラテジストの分析でも裏付けられています。彼は17年にわたり、世界中の企業のROICやROE(自己資本利益率)を5年ごとに予測と実績値で検証してきました。その結果、ROICが上位20%(5分位の第1分位)に入る企業は、平均して年間8%ほど市場をアウトパフォームしていることがわかりました。  しかし、5年にわたって5分位の第1分位にいる会社は全体の5%くらいで、非常にレアな存在です。そういう会社を見つけること、選び抜くことは大変なことなのですが、実際に成果が出ると非常に達成感があります。  ――銘柄選定のプロセスは特別な考え方を採用しているというより、オーソドックスな考え方を実践しているように感じられますが、エジンバラのチームが実際の運用で成果をあげられる秘訣はどこにあるのですか?  2つの要素があると思います。1つはチーム文化です。私たちは8人のメンバーでチームを組んでいますが、リードPMは設けていません。チームとして運用活動を行っています。インセンティブも均等に分配されています。そこが競合他社のやり方とはちょっと違うように思っています。チームとして評価されることで、クリエイティビティが発揮され、クライアントの最善を考えて運用することができます。チームとして働くという文化が重要だと思っています。  2番目に大事なことは、チームメンバーが持っている多様な専門性・業務経験に基づいたインサイト(知見や経験)を持ち寄ってポートフォリオに反映させていくということです。メンバーは一人ひとりがアナリスト兼ポートフォリオマネージャーです。平均業界経験年数は25年を越えます。そのメンバーが、チームの経験をさらに高めて、どうやってモデルをさらに洗練させていくか、私たちが信じる投資収益性を今後5年間で最大化するには、どういったことをできるのかということを考えながら行動しています。  1つだけユニークなことがあるというよりも、チームとして10年以上にわたってほとんど同じメンバーで働いてきてさまざまな出来事が積み重なって組み合わされて文化といえるような関係性ができ、その関係から生み出される効果を発揮していることで成功につながっているのだと思います。  ――ファンドの特徴の1つとしてESG(環境・社会・ガバナンス)の総合評価を重視した銘柄選択を行っています。組み入れ銘柄全体として売上高あたり温室効果ガス排出量を主要な株価指数における水準の8割以下に抑えるという基準を設けていますが、ESG投資をすることによって投資収益が犠牲になるようなことはありませんか?  私たちはESGとパフォーマンスがトレードオフの関係になるとは思っていません。ESGは、全てのステークホルダーを正しく扱うことも含まれていると思います。自分たちが住む環境、お客様、スタッフのことも考えるということ。組合とか取引相手、そういったあらゆるステークホルダーを公正・適切に扱うということができている。それができている会社がいい会社、いいビジネスだと思います。  それは新しいことではありません。たとえば、米国のある代表的な小売企業は、サプライチェーンに対して大きな力を行使して簡単に彼らのサプライヤーのリターンを低くすることもできるのですが、決してそうはしません。彼らも成長して繁栄しないと自分たちもエコシステムの中で繁栄して行けないと分かっているからです。ESGを考えるということ、ステークホルダーのことも考えるということがいいビジネスのあるべき姿だと思っています。  また、二酸化炭素の排出量については、私たちが投資するビジネスは、ROICやROEが高い会社ですから、そういった会社は、資産を多く保有しないビジネスが多いのです。自然と二酸化炭素排出量は低くなりがちです。私たちはナレッジエコノミーに基づいたビジネスを中心に投資していますが、それらは総じて二酸化炭素排出量が低い企業群です。このため、温室効果ガス排出量を主要な株価指数における水準の8割以下に抑えるという目標を掲げていても、そのために組み入れたい銘柄が組み入れられないということはありません。  ――昨今の投資環境をどうみていますか? 先進国の株価は軒並み史上最高値を更新する高値圏にありますが、このような上昇相場はまだ続くのでしょうか?  アメリカは利下げに向かい、また、経済においても高成長とは言えなくても弱くはありません。特にAI(人工知能)で投資ブームが起きています。アメリカの第1四半期のGDP成長率は、40%くらいは直接もしくは間接的にAIに関連する投資に関連するものでした。かなりのグロースドライバーがAI投資から来ているわけで、AIはパワフルな分野です。もちろん、政策とか、地政学的なことなど懸念はありますが、同時に各企業の業績も強いわけです。そして、流動性、設備投資などは今後も強いとみています。  一部の人は、バリエーションが1999年の状況に近いとしてバブルが来ているのではないかと懸念しています。確かにバリエーションは高く、過去数年との比較でも高めです。しかし、1999年ほどには高くありません。また、設備投資にしっかりコミットして実行している会社、特にAIの分野に投資している会社は、主にキャッシュを生み出して利益が大きく出ている会社です。その状況を評価すれば、1999年的なバブルの崩壊は近い将来はないのではないかと考えます。  アメリカにおいては、おそらく一定のドローダウンはあっておかしくないと思うのですが、そのような局面があったとしても全般的には上がっていく基調だと思っています。AI投資は進んでいきますし、それがどこまで続くか次第でありますけれども、この上昇相場はサステナブルだと私は思っています。  ヨーロッパは、ダイバージェンス(株価とテクニカル指標が逆行する現象)があります。ヨーロッパはこれまでは経済指標と相関関係が強い市場だったのですが、近年はダイバージェンスが続いています。たとえば、大きな設備投資を政府からの補助金も得て計画している場合、それが実現するまでにかなり時間かかります。このような場合、市場の期待が先行し、実態がかなり遅れてしまうことになり、市場の評価との間でかい離が広がってしまいます。また、航空宇宙防衛関係でバリュエーションが一気に上がってしまうなど、ヨーロッパについて少し慎重になるべきだと考えています。クオリティが高い要素のある会社を厳選しています。  日本については、より明快で納得感のあるストーリーだと思っています。実際ROEも改善している会社で、マーケットリーダーである会社は、今後もROEがさらに上がっていくように思います。非常にポジティブに見ています。日本はまだROEのレベルがグローバル水準で見ると低めです。もっとその辺りの改善が進めばいいと思っています。一部の企業はROEをすでにかなり改善しているところもあります。まだまだ投資機会があると思っています。  ――ファンドは、「MSCI-ACWI」を常に上回る成績を残してきました。今後、アクティブファンドとしてインデックスを圧倒的に上回る成績は期待できますか?  非常に大きなアウトパフォーマンスが出せるかというと、「MSCI-ACWI」に対してそこまで大きなアウトパフォーマンスは期待していただかない方がいいと思います。大きな超過リターンを求めるということは、非常に大きなリスクを取るということを意味するからです。私たちはバランスの取れたリスクとリターンを取りたいと思っています。  私たちはインデックスを少し上回る水準のリターンを実現し、ボラティリティは市場と同等、もしくは少し低めでした。他の競合のファンドと比べてもボラティリティを低めだったと思います。  この運用戦略は2014年からトラックレコードがありますが、「MSCI-ACWI」を長期に年率3%上回る成果をめざして運用し、おおむねその目標を達成してきました。今後も過度なリスクを取ることなく、安定的にインデックスを上回る運用成績を届けられるよう、しっかり運用してまいります。
「グローバル株式トップフォーカス」を運用するアモーヴァ・アセットマネジメントのグローバル株式チームのポートフォリオマネージャーのイアン・フルトン氏(写真)に聞いた。
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2025-10-29 10:15