【為替本日の注目点】日本の財政悪化懸念からさらに円安進む

ドル円は続伸。日本の財政悪化懸念が意識され、円を売る流れが加速。ドル円は155円73銭まで上昇し、およそ9ヵ月ぶりの円安水準。ユーロドルは小幅に下落したものの、ユーロは対円で180円29銭近辺まで買われる。株式市場では3指数が揃って大きく続落。大型ハイテク株が売られ、連日の下落で「売りシグナルが点灯」との声も。債券は小幅に続伸。長期金利は4.11%台に低下。金は4日続落。原油は反発。
10月輸入物価指数 → Delayed by Government Shutdown
10月輸出物価指数 → Delayed by Government Shutdown
10月鉱工業生産 → Delayed by Government Shutdown
10月設備稼働率 → Delayed by Government Shutdown
11月NAHB住宅市場指数 → 38
ドル/円 155.05 ~ 155.73
ユーロ/ドル 1.1572 ~ 1.1607
ユーロ/円 179.78 ~ 180.29
NYダウ -498.50 → 46,091.74ドル
GOLD -8.00 → 4,066.50ドル
WTI +0.83 → 60.74ドル
米10年国債-0.025 → 4.113%
【本日の注目イベント】
豪 豪第3四半期賃金指数
日 10月貿易統計
欧 ユーロ圏9月経常収支
欧 ユーロ圏10月消費者物価指数(速報値)
英 英10月消費者物価指数
米 10月住宅着工件数
米 10月建設許可件数
米 FOMC議事録(10月28-29日分)
米 ウィリアムズ・NY連銀総裁、イベント冒頭あいさつ
ドル円はさらに上昇し、NY市場では155円73銭まで「ドル高円安」が進みました。昨日の東京時間でも、午前中は日経平均株価が大きく下落する中でも、ドル円は155円台前半で堅調に推移していました。さすがに同指数が1500円を超える下げを見せると、ドル円も155円台を割り込み、一時は154円80銭前後まで売られる場面もありましたが、その後再び155円台まで反発していました。リスク資産の株式が売られるとリスク回避が進み、円は買われる傾向がありますが、昨日に限ってはその傾向はほとんど観られませんでした。ひょっとしたらこれは「日本売り?」(Sell Japan)。そのような考えが頭をよぎりましたが、確かに、債券市場でも債券が売られ、昨日は長期金利が「1.75%」まで上昇。2008年以来となる高水準を記録しています。「為替で円売り、株式も売り、そして債券売り」と、昨日の動きは「ミニ日本売り」の様相といった状況でした。
円安が急速に進んだこともあり、高市首相と植田日銀総裁との初会談には注目していましたが、会談は25分程度で終わり、詳しい会談の内容は公表されず、特段材料にはなっていません。植田総裁は、物価と賃金が共に上昇するメカニズムが復活しているとし、「インフレ率が2%で持続的・安定的にうまく着地するように徐々に金融緩和の度合いを調整している」と伝えたと説明。総裁によると、高市首相は「それはそういうことかなと了解されていた」とし、金融政策への要請は「特になかった」ということでした。為替についても議論したようですが、具体的な内容については公表されていません。木原官房長官は会見で、政府と日銀は両者の関係を定めた日銀法4条と2013年の共同声明に沿って「密接に連携を図り、政策運営に万全を期していく考えだ」と語り、そうした中で会談は設定されたと説明していました。ただ、ドル円が155円台半ばまで上昇したことを受け、片山財務相は「非常に一方的な、また急激な動きも見られて憂慮している」と発言しています。このコメントを聞く限り、それほど強い口調でもなく、直ぐに介入に結び付くものではないと受け止めています。155-160円の新しいレンジが定着するようだと、介入も意識する必要があろうかと思いますが、現状では実弾を伴った介入は、ややハードルが高いように思います。仮に市場介入を実施するのであれば、事前に米財務省への通知も必要です。ベッセント財務長官は、円安の原因を「日銀の利上げが遅れているから」と考えている節もあります。「介入の前に、まず利上げを」といったところでしょうか。
ADPが発表した米民間雇用者数は、11月1日終了週までの4週間に週当たり平均で「2500人減少」していました。ADPリサーチ・インスティテュートとスタンフォード・デジタル・エコノミー・ラボが週次データを発表しました。今回のデータは、「10月下旬に労働市場の勢いが失速したことを示唆している」が、「雇用減少のペースは11月にかけて鈍化した」ようです。史上最長となった政府閉鎖の影響で公式な雇用統計の発表が遅れる中、ADPのデータは労働市場の動向を把握する上で手がかりを提供してきました。政府機関は再開されたものの、10月の経済データがいつ発表されるかは依然として不透明です。ただ、今週20日には「9月の雇用統計」が発表される予定で、非農業部門雇用者数(NFP)は前月比「5万5000人増」と予想されています。リッチモンド連銀のバーキン総裁は、楽観的なインフレ見通しを示す一方、労働市場は入手可能なデータが示唆する以上に弱い可能性があるとの見解を示しています。
自民党有志による「責任ある積極財政を推進する議員連盟」は18日、経済対策の裏付けとなる補正予算の規模を25兆円とするよう高市首相に求めました。首相への提言によると、経済政策の規模について、「現下の下押し圧力と投資競争の厳しさを踏まえれば」、直近の補正予算を大きく上回る規模が最低限必要だとし、今年度補正予算の規模は「総額25兆円超を確保すべきだ」としています。その上で、仮に25兆円規模の財政支出を決めても、「長期金利が大幅に上昇するリスクは低い。足元の金利上昇はむしろ持続的な名目成長を期待した、正常化の動きである」とも指摘していました。果たしてそうでしょうか?上でも述べたように、「日本売り」の最大の要因は、積極財政により日本の財政規律がさらに棄損され、ひいては「格下げ」のリスクがあるからです。積極財政は短期的には景気に好影響を与えるとしても、その財源を国債に求める以上、国債の売り圧力となり、金利が上昇します。金利上昇は国の利払いを増大させ、これがまた財政規律をゆがめ、円安が進めばさらに輸入物価がインフレを高める、といった「悪循環」に陥ることにもなります。「働いて働いて働いて働いて、働いて参ります」と、首相就任時に述べた高市氏。日中関係の悪化もあり、「内憂外患」といったところです。
本日のドル円は154円70銭~156円40銭程度を予想します。
(編集担当:亜州リサーチ=サーチナ) (写真:123RF)
ドル円は続伸。(イメージ写真提供:123RF)
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2025-11-19 10:15