2年足らずで残高2700億円を超えた成長ファンド、「One/フィデリティ・ブルーチップ・グロース株式ファンド」成長の背景を聞く

アセットマネジメントOneが設定する「One/フィデリティ・ブルーチップ・グロース株式ファンド」の残高が拡大している。運用資産の拡大をめざす「成長型」の残高は、2023年12月12日の設定日から2年足らずで約1900億円に達し、2000億円の大台に迫っている。「毎月決算・予想分配金提示型」と「隔月決算・予想分配金提示型」の3ファンド合計では残高が2700億円を超えている(2025年10月31日現在)。アセットマネジメントOneのマルチマネジャー株式部のファンドマネジャー高野大樹氏(写真:右)と、同ファンドの実質的な運用を担う米国フィデリティ・インベスメンツのインスティテューショナル・ポートフォリオマネジャーのトム・ロリンズ氏(写真:左)に運用状況等について聞いた。  ――「One/フィデリティ・ブルーチップ・グロース株式ファンド」は、設定から2年足らずで純資産総額が大きく拡大した理由は、どこにあると考えていますか?  高野 当ファンドの元戦略である、「フィデリティ・ブルーチップ・グロース・ファンド」は米国フィデリティ・インベスメンツ社の旗艦ファンドの1つですが、設定が1987年でかなり歴史の古いファンドです。この戦略が長期にわたってベンチマークや競合ファンドに対して、安定的に良質なパフォーマンスを出していることが多くの投資家から支持をいただいている理由だと思います。当ファンドは2023年12月の設定ですが、設定来のパフォーマンスで競合ファンドを上回る成績を残しています。  次に、今流行のアクティブファンドは、投資銘柄を絞って厳選するタイプのファンドが主流なのですが、当ファンドは200から500銘柄に幅広く分散投資しています。確信度の高い銘柄でしっかり市場の上昇を捉えつつ、その一方で将来高い成長期待が強い新興成長銘柄にも分散投資を行なっています。確信度の高い銘柄でしっかり組入上位を固めつつ、その一方で将来高い成長が期待される新興成長銘柄にも幅広く投資を行うことで、メリハリの効いた攻めの分散投資を行なっています。集中投資型のファンドですと、投資した銘柄が狙い通りに上昇しなければ、パフォーマンスが悪化することになります。当ファンドは、幅広く分散投資を行なっていますので、仮に一部の銘柄が狙いを外したにしても、その他の銘柄でしっかり超過収益を稼ぐことができます。実際、組入下位銘柄もしっかりパフォーマンス寄与度上位に来ることが多々あります。このためパフォーマンスが安定しています。  加えて、フィデリティ・インベスメンツの運用体制は、個別銘柄の調査からポートフォリオのリスク管理にいたるまで、専門的かつ高いレベルで提供されています。このことが継続的に期待を裏切らない運用成績を出せるベースになっています。この運用体制の品質と安定性もまた、当ファンドが投資家の方々に支持していただける要素だと思います。  ――ファンドは設定来、「S&P500」や「MSCI-ACWI」に連動するインデックスファンドを上回る運用成績を残しています。超過収益を生み出している要因は?  ロリンズ インデックスをアウトパフォームした要因は、AI関連の株にメリハリのある投資をし、AIの成長の恩恵を受けています。1つはAIインフラ関係の銘柄。もう1つはAIをうまく活用することによって収益を伸ばしていく銘柄に焦点をあてています。まず、AIインフラに関しては、「エヌビディア」をファンドの投資制限の上限近く(純資産総額の10%)まで投資しています。「エヌビディア」のGPUはAIデータセンター向けに旺盛な需要があります。また、AIの活用については、「アップラビン」がAI技術を導入することによってモバイルアプリ向けにデジタル広告を最適化するソフトウェア等を提供し、より高い収益性を実現しています。  確信度の高い銘柄については、インデックスの構成比率を上回る投資を行い、競争優位性がないと判断された銘柄はアンダーウエイトにしたり、ポートフォリオから外すような対応をしています。たとえば、現在はAIインフラの構築に関連する銘柄を強気にみてオーバーウエイトにしているケースが多いのですが、関連銘柄の全てをオーバーウエイトにはしていません。同じ製品やサービスを提供する企業であっても、技術力や品質などを調査して競争に勝ち残ることが難しいと判断する銘柄への投資は慎重に行っています。  ――ファンドはグロース株式を「セキュラー」「シクリカル」「オポチュニスティック」に区分して、それぞれのカテゴリーに属する株式を組み入れていますが、2024年から2025年へと約2年間の運用の中で、それぞれのカテゴリーがパフォーマンスに与えた影響に変化はありますか? ロリンズ 「セキュラー」は長期的に構造的な変化がプラスになっているところで、常に70%~80%ぐらいを投資してポートフォリオの中核にしています。景気循環によって収益が左右される傾向が強い「シクリカル」は10%~25%。そして、収益機会などを捉えて機動的に投資する「オポチュニスティック」をゼロ~10%としています。過去2年程度の間、この比率を変えるようなことはしていません。  たとえば、AI関連銘柄は「セキュラー」に分類されますが、現在は「セキュラー」が上限に近い水準にまで組み込まれています。関連銘柄の株高が続いた関係で組入れ上限に近づいてしまいました。  ――ファンドの組み入れ銘柄の中心である米国経済は、変わりやすいトランプ政権の関税政策等の影響もあって先行きの見通しが難しくなっていると思いますが、今後の投資環境をどのように見ていますか? ロリンズ 政策の影響は、市場にさまざまな影響が出ていることは確かです。4月2日にトランプ大統領が関税を発表した「解放の日」の時には、市場が混乱して大きな変動、ボラティリティの上昇を見ましたけれども、その4月の段階に比べると、かなりリスク水準も低減してきたと感じています。各国との関税交渉もかなり落ち着いてきたということから、当初よりは厳しくない状況になってきていると思います。  ただ、私どもは、4月の急落時においても、よりディフェンシブなスタンスを取るなどポートフォリオのリスクプロファイルを変更してはいません。当時、あらゆる方面に情報をもとめ、個々の企業の業績に対する影響等についてアナリスト間で議論もしましたが、投資スタンスを変えないという結論を得ました。結果的に、その後の株価の回復によって判断は間違っていなかったということがわかりました。  今後の米国経済の行方について楽観・悲観のどちらかに決め打ちするようなことはしていません。企業の成長期待について中長期の視点も交えて投資判断を行なっています。ですから、当ファンドのポートフォリオは、米国大型成長株指数である「ラッセル1000グロース」をベンチマークとして、それを上回る投資成果をめざして運用しています。米国籍の同戦略でみると2009年から2025年までの期間中1年間運用した際のローリングリターン(投資開始時点を1カ月ずつずらしながら計測したリターン)では手数料控除後で64%の期間でインデックスを上回っています。また5年間運用した際のローリングリターンをみると91%の期間でインデックスを上回ることができました。手数料分を加算すると100%勝っているという実績になります。中長期的に安定的にインデックスを上回る成績を残してきた運用をしっかり継続していく考えです。  他のファンドと運用成績を比較すると、投信評価機関の米モーニングスター社が分類する米国大型成長株ファンドに現在154本ありますが、2025年9月末時点で過去10年間にわたってベンチマークをアウトパフォームできたファンドは10本しかないという結果でした。その10本のうち4本はフィデリティ・インベスメンツが運用しているファンドで米国籍の同戦略もその1本です。ベンチマークにも競合ファンドにも負けない運用を継続していきたいと考えています。  ――大型化しているファンドですが、今後の販売サポートの点での取り組みの計画は?  高野 今年4月ごろより、当社で提供しておりますファンドの中から厳選して10~20銘柄程度を重点ファンドに位置付けていますが、外国株式部門の重点ファンドのうちの1本が当ファンドです。。重点ファンドについては、情報提供をより充実させるとともに、販売会社への勉強会開催などのサポートも積極的に実施しています。  特に、当ファンドについては継続的に優れた運用成績を残してきている実績がありますので、パフォーマンスへの影響が大きい組み入れ上位銘柄についてその選定の理由や株価の推移など、詳細なデータや情報をお届けできるように努めています。当ファンドは、できるだけ長期に保有していただくことによってより大きな投資収益につながるファンドであると考えていますので、運用の状況についてご納得の上投資を継続していただけることにつながるような情報提供を続けていきたいと考えています。
アセットマネジメントOneの高野大樹氏(写真:右)と、米国フィデリティ・インベスメンツのトム・ロリンズ氏(写真:左)に「One/フィデリティ・ブルーチップ・グロース株式ファンド」の運用状況等について聞いた。
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2025-11-19 11:45