スカラ、中期計画で大型M&Aも――DXサービス拡充へ=新田社長に聞く
企業や自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を主力とするスカラ(4845)は、前6月期までに構造改革が完了した。新たな成長フェーズを迎える中で、昨年4月から経営トップとして業績の立て直しを主導した新田英明社長(写真)に今後のビジョンを聞いた。
構造改革で進めたIT回帰、ストック売上積み上げ
――構造改革に至る以前のM&A(企業の合併・買収)による業容拡大期と、その後の経営多角化期を振り返ると?
新田社長(以下同じ)「2000年代序盤~10年代までは、IT関連企業をM&Aすることでストック売上の積み上げに注力した。特に16年にSFA(営業支援システム)を手掛けるソフトブレーンを買収するまでは、良好なサイクルを構築できたと評価している。ピーク時の時価総額も約230億円まで拡大した(現在約69億円)」
「しかし、ソフトブレーンを売却した21年以降に非IT領域への多角化へ舵(かじ)を切ると、経営資源が分散してIT領域の磨き込みが不十分になってしまった。この点を反省し、構造改革を通じてIT回帰を進めてきた。また、少子高齢化で人手不足が深刻化する中で、人材事業については引き続き主要事業に位置付けている。トレーディングカードを扱うTCG事業は、EC(=Eコマース、電子商取引)という意味でITととらえている」
――今期~28年6月期の中期経営計画では最終年度に売上収益118億円、営業利益11億円を目指す(IFRS、前期は各81.8億円、7.5億円)。この間のDX事業の戦略やM&Aについての考え方が知りたい。
「中計期間の投資額のうち、M&Aについては20億~100億円を見込んでいる。基本的にはITやその関連企業が対象だ。現在は主にアプリケーション部分を提供しているため、周辺分野を取り込むことで事業ポートフォリオを拡充する。買収額の見通しには幅があるが、上場企業も視野に50億円以上をイメージしている。資金はキャッシュと借り入れで賄いたい」
「DX事業は最終年度の目標を売上収益63.4億円(前期は46.2億円)としている。ここにはM&Aの貢献も一部含まれる。既存事業については引き続きITサービスの磨き込みや価格の見直し、生成AI(人工知能)を含めた新規サービスの投入などにより、ストック売上に相当するARR(年間経常収益)を30億円超(前期25.4億円)まで積み上げる」
――AIに関する取り組みの状況は?
「売上を伸ばすためのAI活用については、例えば既存のFAQサービスで質問項目の自動生成や自動添削、顧客の会社の規定との整合性チェックといった機能の搭載を始めている。米アマゾンなどが出資するアンソロピックの大規模言語モデル『クロード』もフル活用し、将来的にはエージェントのサービスにもつなげていきたい。また、コーディング(注)など、内部の生産性改善もAIを使って進めている」
注・プログラミング言語を使ったソースコードの書き出し
三菱UFJと協業、スタートアップ支援に成長性
――ふるさと納税のシステムを手掛ける事業会社のエッグに関して、制度変更の影響はないのか。
「エッグのふるさと納税関連事業はウェブサイトのバックエンドのシステムであり、ポータルサイトに対するポイント還元廃止の影響は直接的には受けない。同制度の寄付額については今後も拡大が見込まれるため、事業環境は良好だ。また、最近では自治体が上流から下流までをパッケージで調達する傾向が強いため、他社との提携などを通じて手薄だったプロモーションなど上流部分の強化を図っている」
――人材事業、TCG事業、インキュベーション事業の動向は?
「人材は体育系に特化した就活支援や紹介事業を手掛けている。従来は東京・大阪・名古屋圏で展開していたが、ターゲットを地方にも広げるため仙台や福岡に拠点を設ける。TCGは前期に倉庫を拡張して在庫を拡充した。世界的な日本のコンテンツ人気も踏まえて米国や中国など海外向け販売も伸ばしていく。また、AIによる画像認識などITによる業務効率化も進め、そのためのソフトの外販の本格化も検討する」
「インキュベーションは、官民競創プラットフォームのソーシャル・エックスのポテンシャルが大きい。三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行と共同で、官民共創による社会課題解決と持続可能な事業編成の両立を目指したスタートアップ支援のクラウドファンディングを運営している」
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2025-11-21 09:30