【為替本日の注目点】米9月の雇用統計は上振れ

 ドル円は続伸し、157円89銭まで上昇。9月の雇用統計の内容がそれほど悪化しておらず、FRB高官の利下げに慎重な発言もドルをサポート。ユーロドルは続落し、1.1500までユーロ安が進む。対円では182円近辺までユーロ高に。前日エヌビディアが好決算を発表したものの、市場のセンチメントを変えることは出来ず、この日も3指数は揃って大幅下落。FRB高官の発言も重荷に。債券は買われ、長期金利は4.08%台に低下。金は反落し、原油は続落。 9月失業率 → 4.4% 9月非農業部門雇用者数 → 11.9万人 9月平均時給 (前月比) → 0.2% 9月平均時給 (前年比) → 2.8% 9月労働参加率 → 62.4% 新規失業保険申請件数 → 22.4万件 11月フィラデルフィア連銀景況指数→ -1.7 10月景気先行指標総合指数 → Delayed by Government Shutdown 10月中古住宅販売件数 → 4.1百万戸 ドル/円 157.25 ~ 157.89 ユーロ/ドル 1.1500 ~ 1.1550 ユーロ/円 181.15 ~ 182.01 NYダウ -386.51 → 45,752.26ドル GOLD -22.80 → 4,060.00ドル WTI -0.30 → 59.14ドル 米10年国債-0.052 → 4.084% 【本日の注目イベント】 日 10月消費者物価指数 独 独11月製造業PMI(速報値) 独 独11月サービス業PMI(速報値) 欧 ユーロ圏11月製造業PMI(速報値) 欧 ユーロ圏11月サービス業PMI(速報値) 欧 ラガルド・ECB総裁講演 英 英11月製造業PMI(速報値) 英 英11月サービス業PMI(速報値) 英 英10月小売売上高 米 11月ミシガン大学消費者マインド(確定値) 米 11月S&Pグローバル製造業PMI(速報値) 米 11月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値) 米 11月S&Pグローバル総合PMI(速報値) 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演(サンチャゴ) 米 ローガン・ダラス連銀総裁講演(チューリッヒ) 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、討論会に参加 加 カナダ9月小売売上高  大幅に発表が遅れていた「米9月の雇用統計」が出ました。非農業部門雇用者数(NFP)は「11.9万人の増加」で、市場予想の「5.1万人の増加」を上回っていました。家計調査に基づく9月の失業率は「4.4%」で、こちらは市場予想の「4.3%」よりも悪化していました。ここまでは、米労働市場は思ったほど減速していなかったと受け止められますが、同時に発表された8月分は、「7.9万人」から「7.2万人」に、7月分も「2.2万人」から「-4千人」に、それぞれ下方修正されており、労働市場の緩やかな減速傾向は続いていると思われます。労働市場に対する過度の懸念がやや薄れ、前日発表されたエヌビディアの決算も良好だったことで市場のセンチメントが好転すると思われました。しかし、FRB高官からは依然として利下げに慎重な発言が相次いだことで、リスク回避の流れは変わらず、株式市場では主要3指数が大きく売られ、安全資産の債券が買われました。米金利は低下しましたが、このところ米金利とドル円との相関はほとんど観られず、ドル円は157円89銭と、158円に迫る水準まで買われ、堅調に推移しています。日本の財政規律の低下に加え、金融市場に近い政府関係者からは、足元の円安に対する厳しい口調のけん制発言は聞かれず、市場の介入警戒感もそれほど高まってはいない状況です。根底には、「FRBによる利下げ観測と日銀による利上げ観測」が、いずれも後退していることに主因があります。  今朝の日経新聞一面に、高市政権が「基礎的財政収支(PB)の目標を単年度から柔軟化すること」に関して、「適切であるか」どうか50人の経済学者にアンケ―トを行った結果が掲載されています。それによると「全くそう思わない」が8%、「そう思わない」が46%で、「54%」が適切ではないとの認識でした。「適切ではない」との回答では、「日本の財政規律の信任低下がさらに進む」との指摘が多かったようです。一方「適切」との意見では「景気変動への対応が可能になる」との見方がありました。PBの柔軟化は専門家の間でも意見が分かれているようです。  クリーブランド連銀のハマック総裁は、労働市場の下支えのために利下げを行えば、目標を上回るインフレの期間が長引き、金融安定へのリスクが高まる恐れがあるとの見解を示しました。ハマック氏は、クリーブランド連銀主催の会議で講演し、「労働市場を支えるために利下げを行えば、高止まりしているインフレの時期を長引かせるリスクがあり、金融市場でのリスクテークを助長する恐れもある」とした上で、「次に景気の減速局面が訪れた際には、本来よりも深刻になり、経済への影響がさらに大きくなる恐れがある」と指摘し、利下げには慎重な姿勢を見せていました。また、シカゴ連銀のグールズビー総裁もインディアナポリスでのイベントでインフレについて、「足踏み状態にあると見受けられ、むしろ悪化の兆しを見せているようだ。だから少し不安を感じている」と述べ、「米経済はかなり堅調だが、いずれは『金利を大きく引き下げることができる』状況に戻るだろうと感じている。ただ当面は、利下げを前倒しで進めすぎ、『一時的な現象でインフレ率はまた低下するだろう』との見方に頼るのは少し不安だ」と語っています。一方、ホワイトハウスのハセット国家経済会議(NEC)委員長は「自分がFRB議長であれば、今すぐに利下げするだろう」と話し。「データがそのようにすべきだと示していると考えられるためだ」と説明していました。トランプ政権からは執拗に利下げ圧力がかかる中、多くのFOMCメンバーが冷静に景気動向を観察している姿が浮かびます。  日銀の小枝審議委員は20日、新潟県金融経済懇談会で講演しました。同氏は、3月に早稲田大学教授から日銀審議委員に就任し、審議委員としての講演は今回が初めてです。小枝氏は、極めて低い水準にある実質金利を均衡状態に戻していく金利正常化を進めることが、「将来に意図せざるゆがみをもたらさないためにも必要だ」と述べ、タイトな労働市場の下で、「経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」必要性を指摘していました。具体的なタイミングには言及しなかったものの、早期の追加利上げに前向きな姿勢を示したと言えそうです。また、日銀が政策運営で重視している基調的な物価上昇率については、「総合的に見て2%ぐらいになってきている」と言及。2%の物価安定目標の達成に向けては、基調物価の定着度を確認することが重要だとの認識を示していました。同氏のスタンスは中立と見られ、市場への影響はまったくなかったようです。  本日のドル円は156円30銭~158円10銭程度を予想します。 (編集担当:亜州リサーチ=サーチナ) (写真:123RF)
ドル円は続伸し、157円89銭まで上昇。(イメージ写真提供:123RF)
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2025-11-21 10:30