イノベーションホールディングス・原康雄社長に聞く:店舗転貸借事業を中心に全事業好調で上方修正

 イノベーションホールディングス <3484> は持株会社で、傘下に不動産オーナーから賃借した物件を店舗出店者に転貸する店舗転貸借事業を手掛けるテンポイノベーションのほか、アセットイノベーション(不動産売買事業)、セーフティーイノベーション(家賃保証事業)と3つの子会社を持つ。主力事業である店舗転貸借事業を中心にすべての事業が好調で、11月には2026年3月期業績予想を上方修正した。同社の現状と今後について原康雄社長に聞いた。  ――今期の通期業績予想について、連結売上高を従来の188億7200万円から193億8800万円(前年同期比16.4%増)に、営業利益を16億400万円から17億4300万円(同28.5%増)に上方修正しました。  「主力の店舗転貸借事業はKPI(重要業績評価指標)の転貸借物件数が順調に積み上がり、ストック収益の安定的な成長が続いています。成約件数は3四半期連続で140件台と高水準を継続し、計画を上回って推移しています。家賃保証事業も支店展開による外販営業活動の成果が想定より早く出始めました。そして不動産売買事業における大型・高利益物件の売却が利益面を押し上げました。不動産売買事業では上期の段階で3物件を売却、新たに3物件を取得し、第2四半期末時点の保有物件は4件となっており、下期も売却と新たな仕入れに注力していく方針です」  ――御社が持株会社体制に移行し、1年が過ぎました。その効果をどうみていますか。  「当社グループは近年、店舗転貸借事業だけでなく、店舗物件の売買で収益を得る不動産売買事業、オフィス・倉庫・店舗などの家賃保証を行う家賃保証事業も手掛け、事業用不動産に特化した事業が多様化していました。持株会社化により、各子会社に社長が誕生し、事業をリードすることで、機動的な意思決定、人材の採用・育成、経営状況の変化に柔軟に対応できる体制の構築を図り、すべての子会社で着実な成果を上げています。不動産売買事業は上期に計画を上回る大きな成果を上げましたし、継続的に成果を出すための体制整備も進めています。また、家賃保証事業については、スタートした当初、自社の転貸案件のみを受注する方針でしたが、現在は東京日本橋、横浜、大阪に支店を開設しており、当社グループ初の全国展開を進めています。現状ではアセットイノベーション、セーフティーイノベーションはまだまだ伸び代が大きい状況ですが、将来的にはIPO(新規上場)を目指せるレベルにまで成長することを期待しています」  ――現在の事業環境はいかがですか。  「リーマン・ショックや新型コロナウイルスなど、これまで何度も飲食業界は厳しい事態に直面しましたが、首都圏で自分の店を開店したいというニーズは、長期間、大幅に減るということがなく、店舗転貸借事業のニーズも安定的に高い水準を維持しています。コロナ禍後はインバウンド(訪日外国人観光客)を含む人流が回復し、大きく増加していることも追い風です。人手不足が問題になっていますが、飲食店の出店ニーズが低調になっているかというと、そういうわけではありません。こうした中で、当社の店舗転貸借事業は既存の不動産業にはない独自のビジネスモデルで、有力な競合はいない状況です。また、首都圏1都3県の店舗物件数は13万物件ほどある半面、現状で当社が扱う転貸借物件数は3000件程度にすぎず、まだまだ市場の開拓余地は大きいと認識しています。今後も採用と人材育成に注力し、営業部門を量的にも質的にも強化していくことで、より一層の事業拡大を図ります」  ――28年3月期までの中期経営計画では、売上高253億4200万円、営業利益22億3700万円を目標としています。今期の業績予想を上方修正しましたが、見直すことはあるのでしょうか。  「中期経営計画に関しては、毎期ローリング方式で策定しています。前期業績は期初予想を上回って着地し、それに伴い中期経営計画の目標も上方修正しました。今期も予想以上に好調に推移し、既に通期業績予想を上方修正していることもあり、あくまで今後の業績の動向次第ではありますが、中期経営計画についても見直す可能性はあるでしょう。一方、長期目標として、31年3月期の転貸借物件数5500件、売上高300億円規模、営業利益30億円規模を掲げています。今後も営業力の増強を中心に、長期目標の達成に向けた施策を進めていきます」  ――株主還元についてはどう考えていますか。  「前々期に配当方針を変更し、より積極的な利益還元を行う方針としました。配当性向は40-50%台をメドとしており、今期は業績予想の上方修正で純利益を従来の10億3000万円から12億7400万円(前期比23.8%増)に引き上げたことから、期末一括配当も34円(従来予想30円、前期28円)に増額しました。5期連続増配になる予定です。また、株主優待にも力を入れており、当社株式500株以上の保有かつ1年間の継続保有でジェフグルメカード1万円分を贈呈しています」
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2025-12-09 12:45