「クオリティグロース」に厳選投資して長期保有、年率10%超のリターンを実現するコムジェストの投資戦略

 仏パリを拠点とする独立系運用会社のコムジェスト・グループの日本法人であるコムジェスト・アセットマネジメント(株)は12月5日、東京で「コムジェスト パートナーズイベント2025」を開催した。コムジェストのファンドに投資する機関投資家やコムジェストの戦略を取り扱うIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)に対してグローバル株式運用チームのロー・ネジャー氏(写真:左)が担当する「グローバル株式戦略」について国内の投資家向けに初めて講演を行った。また、日本株運用チームのアナリスト兼ポートフォリオマネジャーであるリチャード・ケイ氏(写真:右)が「日本株式戦略」の運用の現状と見通しについて解説した。また、同チームのアナリストのヘヤン・ピン氏が投資している日本企業の現状について解説し、2025年からコムジェストに加わったアナリストの春田かすみ氏はコムジェストのチームワークの良さについて語った。そして、来場者からの質問に答えるQ&Aセッションで率直な意見交換を行った。  コムジェストが運用するファンドは、代表口座のパフォーマンスでは「グローバル株式戦略」が1991年6月30日の設定から2025年9月末までに年率12.6%の運用成績となり、この期間の「MSCI オール・カントリー・ワールド指数」の年率8.0%を上回っている。同じように、「日本株式戦略」も2009年6月30日の設定から2025年9月末までに年率13.0%の成績と、この間のTOPIX(東証株価指数)の年率10.2%を上回る成績になった。同社の運用哲学は、向こう5年間で年率2ケタ以上の利益成長が実現できると期待される「クオリティグロース企業」を厳選し、長期で投資するというもの。企業のEPS成長率が長期的には株価に反映されるとの考えに基づいて運用している。 ◆「グローバル株式戦略」はEPS成長率14%  同社の「グローバル株式戦略」についてネジャー氏は、「2025年のEPS(1株当たり利益)成長率は、インデックスでプラス9.6%の見通しだが、コムジェストのポートフォリオはEPS成長率がプラス13.9%と、より高い成長率の見通しがある企業に集中投資している」と紹介した。また、グローバル株式インデックスでは、米国テクノロジー株式を筆頭にテクノロジー株式の投資比率が高くなっているが、コムジェストのポートフォリオでは製薬会社などヘルスケア等も含めることで成長の源泉を分散して投資しているとした。ただ、株式市場の勢いはテクノロジー株式に強く、インデックスのPER(株価収益率)は2024年から2025年にかけて8%程度拡大したが、コムジェストのファンドのPERは縮小したと振り返った。  ネジャー氏は、コムジェストが運用するポートフォリオの過去のバリュエーションの推移を振り返って、2021年のコロナ・ショック後に直近のピークを付け、その後は徐々にPERが低下しているとし、「現在は過去10年で最低の水準にまでPERが低下している。この水準は非常に魅力的な投資機会だと考える」と語っていた。コムジェストのポートフォリオのPERが過去10年で最も低い水準になってしまっているのは、「世界の投資家が過去になかったほど一部の銘柄に集中投資しているため」と解説した。  たとえば、「S&P500」構成銘柄の時価総額上位10銘柄だけで、時価総額全体の40%以上を占め、また、インデックスの動きへの寄与度が大きな銘柄は時価総額上位10銘柄のうち9銘柄が該当するなど、米国の大型テクノロジー株式に集中した投資が続いている。これに対し、コムジェストのポートフォリオでは、2025年のパフォーマンス寄与上位10社のうち、米大型テクノロジー企業は2社のみで、アイウェア世界最大手の仏エシロールルックスオティカや米製薬大手のジョンソン・エンド・ジョンソン、世界最大の美容企業の仏ロレアル等、多様な企業が名を連ねている。ネジャー氏は、「米ハイテク株ばかりが高パフォーマンスを残しているわけではない。市場の流れに左右されることなく、真に投資に値すると考える企業にしっかり投資を続けたい」と語っていた。  その上で、ネジャー氏は「グローバル株式戦略」がインデックスに対して高いリターンを上げてきた実績を示して「株価は長期的には企業の利益成長に連動する」というコムジェストのアプローチは長期投資に有効と強調した。また、2026年のEPS成長率予想はインデックスで13%近い成長がコンセンサスとなっており、2025年よりも高い成長が期待されている。コムジェストは引き続き高いEPS成長が期待される企業でポートフォリオを構築し、「過去平均の年率成長率12%以上を継続できるように運用を続けたい」と語っていた。 ◆日本株は国内企業の「成長力」を評価するタイミング  一方、日本株式運用チームのリチャード・ケイ氏は、「日本企業の利益の伸び率は他の市場を上回り、継続性もある。今、日本は自らの強みを見つめ直す時だ。依然として過小評価された市場であると考える。日経平均株価は5万円台乗せから次のステージに進むだろう」と語った。ケイ氏は日本企業の強さを表す指標として、本業によるキャッシュフロー創出力を示す「EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)」が国内企業は過去15年で2倍に伸びてきたことに対し、米国企業は「マグニフィセント・セブン」を除くと同期間で1.7倍程度にしか伸びていないと指摘した。そして、「コムジェストのファンドでは、国内企業の上位1%しか存在しないクオリティグロース企業に投資しているが、これは、世界の市場のトップ1%とも言える」と日本企業を高く評価していると語った。  ただ、ファンドのパフォーマンスは日本株インデックスに対してここ数年劣後する厳しい期間となった。この背景にあるのは、これまで日本株式に投資してきた投資家の多くがバランスシートに注目し、自社株買いなど株主還元に積極的な企業だったためとした。その結果、コムジェストの「日本株式戦略」ポートフォリオのPERは、設定来16年間で最低の水準に落ち込んでいる。ただ、ここ数四半期はインデックスを上回るようになっており、今後の見通しは明るいとした。  また、国内機関投資家が日本株に投資してこなかったために日本株式市場が米国など他の先進国に対して出遅れた状態になってしまったという見方を示した。「ホームカントリーバイアス」という言葉がある通り、米国の投資家は米国株の保有比率が80%を超え、オーストラリアでは90%に達するなど、多くの国で国内株が主要な投資対象となっているが、日本では5%程度しか保有していない。ケイ氏は、国内機関投資家の投資姿勢にも変化が表れているとし、「これまで日本株式市場で欠けていた『買い手』が徐々に増えている」と語った。その一例として、直近で面談した英国の機関投資家は、コムジェストの「日本株式戦略」について「ディファインド・フェイド(減速に逆らう)」と評価し、日本企業の継続的な利益成長を高く評価していたと紹介した。
コムジェスト・アセットマネジメントは12月5日、東京で「コムジェスト パートナーズイベント2025」を開催した。(写真は、左がグローバル株式運用チームのロー・ネジャー氏、右は日本株運用チームのリチャード・ケイ氏)
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2025-12-15 12:00