法整備の進展で2026年に更なる飛躍が期待される「暗号資産」、「暗号資産関連株式ファンド」の運用者に聞く展望

アセットマネジメントOneの「暗号資産関連株式ファンド(愛称:シークレット・コード)」は2025年7月31日に設定されたファンドだが、設定後3カ月足らずで基準価額が62%以上も上昇するロケットスタートをして市場の注目を集めた。2026年は不動産や株式、債券、純金、美術品などのRWA(リアルワールドアセット)をトークン化してブロックチェーン上で取引する動きが加速し、また各国の通貨と結びついたステーブルコインの法規制整備が進み、国際送金や企業間決済での実利用が広がる可能性が指摘される。こうしたトークンやステーブルコインといった暗号資産がいよいよ実社会のインフラとして活用される大きな転機になる年との期待も強く、関連企業の成長が加速する可能性がある。同ファンドを実質的に運用しているヴォヤ・インベストメント・マネジメントのリード・ポートフォリオ・マネジャーのジャスティン・サムナー氏(写真)に同ファンドの運用、そして、暗号資産関連ビジネスの展望について聞いた。
――ファンドは暗号資産に関連するビジネスに投資していますが、「暗号資産」が投資資産として価値があると考える根拠について教えてください。
3点お伝えしたいと思いますが、まず1つ目として、たとえば、代表的な暗号資産であるビットコインは「デジタル・ゴールド」といわれるように、純金(ゴールド)の代替としての価値があると考えられます。これは純金の埋蔵量がオリンピックの50メートルプールに1~2杯分しか残っていないといわれているように、ビットコインの発行量も2100万枚と決まっていて、今年中には発行量の95%に到達する見込みです。つまり純金やビットコインには希少性、言い換えるならば絶対量が変わらないといった価値があるといえます。これに対してドルやユーロといった法定通貨には発行量に上限がありません。発行量は国の財政状況などによって増大し、それは長く緩やかなインフレ(物価上昇)が続いていることでも確認できます。通貨の価値は発行量の増加に伴い希薄化する一方、発行量に上限のある純金やビットコインなどはその希少性によって価値を上げていくと思っています。
2つ目は、暗号資産市場に機関投資家の資金が流入し始めていることも、当面の需給関係には大きな変化になると見ています。米国では2024年1月に証券取引委員会(SEC)がビットコインの現物ETFを承認したことで複数のETFが上場され、機関投資家の資金が暗号資産市場に流入しましたが、その後も暗号資産取引に関する法整備が着々と進み、今は米国以外の国においてもそうした規制が整いつつあります。規制の進展によって暗号資産が株式や債券などと同等の投資資産として広く認められるようになると、今まで二の足を踏んでいた機関投資家をはじめ、個人投資家の本格的な市場参入が期待されます。分散という観点でも、既に純金は世界の時価総額の2%程度を占めており、純金を代替する、むしろ、持ち運ぶ際の利便性(スピードやコスト)を考えると純金よりも圧倒的に優れた暗号資産は将来それ以上の価値を持つと思われることから、ポートフォリオの3%~4%程度を暗号資産に分散投資するといったアドバイスも広く共有されてきています。
3つ目は、決済や送金といった金融サービス分野での暗号資産の活用が始まっています。日本でもビックカメラやオープンハウスでビットコインの利用が出来るようになっていますが、米国では暗号資産の中でも決済利用に特化したステーブルコイン(例:サークルの発行するUSDC)の登場により、従来の銀行送金では全く不可能だった世界が始まろうとしています。たとえば、配車サービスを行うウーバーは乗車料金を乗車毎に支払うといった試験運用を始めています。これは暗号資産のインフラを支えるブロックチェーン技術の持つ圧倒的な決済スピードやコストの安さ(約0.05%、つまり1万円の送金にかかる手数料は約5円)によって可能となり、この手続きの大半をAI(人工知能)が行うことによって人件費の削減にもつながります。こうした暗号資産の実社会への活用が爆発的に普及すると考えており、運用担当者としても多くの新しいビジネスチャンスが出てくることに期待しています。
――「暗号資産」はブロックチェーン技術によって価値と安全性が保たれたデジタル資産であると理解していますが、量子コンピュータなど新しい技術が発展することによってブロックチェーンが解読されるようなことは起こらないのでしょうか?
確かに何もせずに待っているだけであれば、量子テクノロジーは理論的にブロックチェーン技術や暗号資産を時代遅れにする能力があるかも知れません。しかし、実際は、ビットコインなどの暗号資産はフォーク(後方互換性のないルール変更であるハードフォーク、または、互換性のあるルール変更であるソフトフォークによって処理能力の向上、新機能の追加、セキュリティ問題の解決などに対応)と呼ばれるアップデートを行っており、ブロックチェーン側も量子技術(による暗号化など)を取り込みながら進化するため、引き続き時代とともに存在し続けることができます。
また、世界中でサイバー攻撃も猛威を振るっていますが、ブロックチェーン(オンチェーン)自体は今までもハッキングされたことはなく、日本でもたまにハッキングのニュースを目にするのは、保管などの理由でブロックチェーンから一旦切り離す際(オフチェーン)のセキュリティ対策の不十分さなどが主な理由です。ブロックチェーンは全ての参加者が相互に取引を監視するシステムであることから誰かの目を盗んで改ざんすることは不可能であり、実際システムを悪用して1ビットコインを作り上げたといったニュースを聞かれたことがないように、暗号資産は価値と安全性を併せ持つ非常にユニークな創造物であり、優れた技術を取り込みながら進化し続ける存在であると考えています。
――当ファンドで投資対象としている暗号資産関連ビジネスの現在の市場規模と、向こう3年~5年程度の成長性などを教えてください。
私どもは暗号資産関連ビジネスの発展を3段階で見込んでいます。まずは投資資産としても注目が高まりつつある、ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨に関連するビジネスの大きな成長が見られます。たとえば、こうした分野には、世界中の暗号資産取引を承認(分かりやすくいうと台帳管理)し、その対価として報酬を得ている多くのマイニング企業が含まれます。
次のステージには、規制の枠組みが整いつつあることやステーブルコインの登場により、先程も触れたウーバーのように世界の金融システムをデジタルネイティブなソリューションに移行させていく、次世代金融サービス企業の広がりが考えられます。
その更に先の3段階目にはこれも暗号資産の一つであるトークンによって、様々なものの流動化が始まると考えます。日本でも不動産の小口化などがこれにあたりますが、今では株式をトークンで発行(よって24時間365日、瞬時の取引が可能)する企業や、ウイスキーをボトルではなく樽のまま複数の口数(権利)に分けて販売するといった全く新しいビジネスも始まっています。
全く予想もしていない様なビジネスがこれからもどんどん生まれてくると思いますので市場規模の予測は簡単ではありませんが、控えめに見積もっても3年後に5000億ドル(向こう3年間で年率35%程度の成長)、ベースシナリオでは1兆ドル(向こう3年間で年率70%程度の成長)といっても言い過ぎではないかと思います。今日の市場規模は勿論AIや半導体に比べると未だ小さいですが、将来はそうした産業を凌ぐ市場規模になると考えており、また先程も触れました通り、暗号資産と一言にいっても「仮想通貨」「ステーブルコイン」「トークン」といったとても息の長い成長を見込んでいますので、投資家の皆さんの中長期の資産形成にもお役に立てるのではないかと思います。
――年間30%を超えるような成長率というのは大変なスピードですが、その見通しの根拠になっているのは何ですか?
たとえば、私どもの上位投資先企業(2025年11月末時点)の直近の決算(第3四半期)で発表された売上高成長率を見ますと、組入1位のサイファーが前年同期比+198%、組入2位のアイレンが+342%といったように、ポートフォリオの中で一番大きな割合を占めるマイニング企業が驚異的な成長を見せています。
また、マイニング企業以外でも組入4位のコインベースは暗号資産の交換所を運営する企業ですが、機関投資家や個人投資家からのビットコインをはじめとした仮想通貨の高まる需要に加え、決済手段としてステーブルコインの購入も大きく伸びており、今では利益の4割程度はステーブルコインからあがっています。こちらも直近の決算の売上高成長率を見ると+55%と、とても高い伸びとなっています。
組入8位にはオンライン証券を展開するロビンフッドという企業にも投資を行っていますが、米国でも親の世代からの子世代への資産の移管が急速に進みつつあり、こうした店舗を持たないオンライン証券の利便性が、また、暗号資産を含めた幅広いサービスのラインナップが、正にデジタルネ―ティブな若年層から圧倒的な支持を集めています。こちらも直近の決算の売上高成長率は+100%と前年から売上高はほぼ倍に増えました。
このような数値や状況を積み上げて、将来の市場規模を予測したものが先程の3年後に5000億ドルから1兆ドルという数字ですが、決して言い過ぎではないといったことがお分かり頂けたかも知れません。
――ファンドのポートフォリオ構築のポイントを教えてください。
これは私どもの運用する全ての運用戦略に共通することですが、サンフランシスコという私どもの運用拠点の地理的な優位性を活かした、徹底したボトムアップ(足を使った個別企業の)調査を大事にしています。世界中のテクノロジー企業が集まるシリコンバレーの目と鼻の先にあるこの場所で、私どもは50年間にわたり運用を行ってきました。企業の経営者と直接会い、経営者がその会社の中長期の計画にどの程度コミットしているか? そうした経営者の多くは前職、あるいは、前々職から知っている人間も多く、そこでの実績はどうであったか? 取引先や競合他社から見た評価は? といったことを多面的に分析します。
また、サンフランシスコでは数多くのカンファレンスも開催されますが、そうした場所にも出向き、企業のIRからは引き出せない情報を得ることにも努めます。たとえば、出展ブースでデモを行っているエンジニアに新しいサービスの使い勝手はどうか? どのブースにより人が集まっているか? 競合他社に対する優位性はどこか? など、一つの企業を徹底的に調べることで、会社の計画が本当に達成可能なものであるか、また、市場の予想と一致しているのかどうか? を理解します。
そして、一般的なポートフォリオ理論では、銘柄数を比較的多めに分散することで基準価額の値動き(ボラティリティ)を抑えようとしますが、私どもはテクノロジーの分野においては、むしろ最も確信度の高い銘柄に集中した方が値動きは下げられるというのが、50年間の様々なテクノロジー業界の変遷を経て辿り着いた答え/投資哲学です。このため、徹底して選び抜いた将来勝ち組になると思われる銘柄に集中投資を行うことも私どものポートフォリオ構築のポイントでもあります。
――シリコンバレー(米カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリア)近辺に拠点を置いて調査活動を行っているとのことですが、暗号資産関連事業を把握する上でも、シリコンバレーがこれからも世界の中心であり続けられるのでしょうか?
先ずシリコンバレーが多くの暗号資産関連企業、又はテクノロジー企業にとって魅力的な場所であり続けるのは、同じくこの地に多くの拠点を構える、巨額な資金の担い手でもあるベンチャーキャピタルの存在が大きいと言えます。特に暗号資産分野のように全く新しい企業やビジネスが誕生する過程においては、こうしたリスクマネーを供給する彼らが今何に注目し、どこに新しい資金を投じようとしているのかを知ることも非常に重要です。
また、これから暗号資産は様々な分野の技術とつながっていくことが見込まれますため、米国外の関連情報にも積極的に目を向けています。たとえば、暗号資産を安全に保管する上でもセキュリティの技術は必要不可欠と言えますが、私どもはサイバーセキュリティに特化したファンドの運用も行っており、多くの有力企業が存在するイスラエルの企業調査にも出掛けます。また、チームメンバーの一人はMITで電気工学の学位を取得したハードウェアと半導体セクターを担当する専門家ですが、台湾出身で北京語も堪能なことから、台頭が著しい中国における暗号資産関連企業の調査も行っており、実際当ファンドでも香港の暗号資産交換所を組入れています。
重要なのは、暗号資産及びテクノロジー業界全体のトレンドを理解し、それらのトレンドが世界のさまざまな地域にどのように影響を与えているかを把握することと言えます。
――ファンドのパフォーマンスのイメージは? 年率35%で成長する市場に連動する動きになりますか?
毎年安定的に35%のリターンはお約束出来ないかも知れませんが、業績が伸び続けているにもかかわらず株価を下げ続けている銘柄を多分見られたことがないのと同じように、中長期的には市場規模(つまり関連企業の売上高の合計)と同様の、または私どもはその中でも勝ち組になる企業に選別投資を行いますため、それを上回るパフォーマンスを目指します。
――「世界株」「米国株」「純金(ゴールド)」と当ファンドの相関関係は?
当戦略(手数料控除前、米ドルベース)と各種資産クラスとの相関関係は相対的に低く、既に株式や純金を保有されている投資家の方にも併せ持ちの分散投資効果が期待できると考えます。当戦略の運用開始時(2023年8月末)から2025年11月末まで日次ベースで各資産との相関係数を計算しますと、「世界株(MSCI World)」や「米国株(S&P500)」との相関がともに0.58、「純金(ゴールド)」とは0.08という結果です。「純金」との相関関係はほぼなく、世界株や米国株とも大きな相関はないため、当ファンドは多くの投資家の皆さんのポートフォリオに分散効果を発揮出来るツールになるのではないかと思います。
――今後の暗号資産関連ビジネスの展望を教えてください。
暗号資産関連ビジネスは、今後10年、20年と社会のデジタル化を支える重要なインフラとしても、中長期的に大きく成長する分野だと考えています。
今はまだ産業自体が黎明期であることから、関連企業の株価の値動き(ボラティリティ)は相対的に高いかも知れませんが、リスクとリターンは表裏一体の関係性であるのならば、大きなリターンを狙える投資機会であると考えます。また、大きなリターンが期待でき、ボラティリティが高いのであれば、たとえば、積立投資を行っていただくと最もドルコスト平均法を活かした投資にもつながるかも知れません。また、リターンの期待は勿論のこと、暗号資産といった従来のテックファンドや他のファンドとは異なる特性を持つ当ファンドを、分散という観点からも是非ご検討頂けましたら幸いです。
ヴォヤ・インベストメント・マネジメントのジャスティン・サムナー氏(写真)に「暗号資産関連株式ファンド」の運用、そして、暗号資産関連ビジネスの展望について聞いた。
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2026-01-20 22:45