【為替本日の注目点】トランプ政権の強硬姿勢に米国売りの様相

ドル円は朝方157円台半ばまで売られたが、その後米金利の上昇に伴い反発。158円30銭まで買われる。ユーロドルは大幅に反発。米国売りの影響もあり、ユーロを買う動きが加速。ユーロドルは1.1770まで上昇。グリーンランドを巡る米国と欧州との関係悪化を材料に株式市場では3指数が大幅に下落。ナスダックは561ポイント下げ、2.3%を超える大幅安に。債券も売られ、長期金利は4.29%台に上昇。地政学的リスクの高まりから金は大幅高。先週末比170ドル買われ、初の4700ドル台に。原油も反発。
ドル/円 157.48 ~ 158.30
ユーロ/ドル 1.1711 ~ 1.1770
ユーロ/円 184.93 ~ 185.43
NYダウ -870.74 → 48,488.59ドル
GOLD +170.40 → 4,765.80ドル
WTI +0.90 → 60.34ドル
米10年国債 +0.070 → 4.293%
【本日の注目イベント】
欧 ラガルドECB総裁、パネル討論に参加(ダボス)
英 12月消費者物価指数
米 12月中古住宅販売成約件数
米 12月景気先行指標総合指数
米 決算発表→ J&J、チャールズ・シュワブ
連休明け20日のNY金融市場では、株式と債券、ドルが揃って下落し、「米国売りの様相」となりました。トランプ大統領がグリーンランド領有を狙って、欧州の複数の国に新たな関税を課す考えを示すなど、双方の対立が激化していることが嫌気されました。一方、地政学的リスクが高まったことで、金は大きく買われ、初の4700ドル台半ばまで上昇。史上最高値を大幅に更新しています。ドル円は157円台半ばまで売られる場面がありましたが、米金利が大きく上昇したことで、再び158円台まで反発しました。
昨日の東京市場では、高市首相の解散会見を受け、一段と財政が悪化するとの懸念から債券が大きく売られました。超長期債の40年債は4.21%まで上昇し、長期金利の指標である10年債も2.38%台まで上昇。「食料品の消費税ゼロ」を与野党とも公約に掲げたことで、財政懸念がさらに強まったことが背景です。国債が大きく売られ、金利が急騰したことを受け、片山財務相は20日、「市場を安定させるためのことはやってきているし、これからもやることは必ず約束できる」と述べ、市場の鎮静化を促す発言を行っていました。一方ドル円は、東京時間に158円台を回復し、158円半ばまで円売りが進みましたが、欧州市場に入ると一転してドルが急落する場面もありました。トランプ大統領が、提案中の「平和評議会」への参加要請を拒否するフランスのマクロン大統領を批判し、「フランスのワインとシャンパンに200%の関税をかければ、マクロン氏は参加するだろう」と述べたことが、材料視されたようです。
グリーンランド獲得に反対する欧州に対し、トランプ氏の過激な舌鋒は止まりません。グリーンランドのニールセン首相は20日、ヌークで開いた記者会見で、「軍事紛争が起こる可能性は低いが、その可能性を排除することはできない」と述べました。同首相によると、グリーンランドの自治政府は日常生活で混乱が生じた際に対応できるよう、関係するすべての地方自治体代表らで構成するタスクフォースを設置しました。政府はまた、各家庭で5日分の食料を備蓄するよう勧告するなど、新たな指針を国民に配布する準備を進めている、と報じられています。これまで余りメディアの話題にされることはなかったグリーンランドでしたが、にわかにメディアに取り上げられています。昨日、現地入りしたNHKの取材班が報じた映像では、「Greenland is not for SALE」(グリーンランドは売りものではない)と書かれたプラカードを掲げたデモや、同様の文字がプリントされたTシャツが飛ぶように売れている様相が映し出されていました。トランプ氏は安全保障上の理由からグリーンランドを所有する必要があると主張しており、グリーンランドに米国旗を掲げる自身のAI生成画像を投稿していました。一方カナダでは、カナダ軍が米国が侵攻した場合にどう対応するかを想定したシミュレーションを行っていると、地元グローブ紙が伝えています。同紙によると、カナダ軍のシミュレーションでは、米国が侵攻した場合、米軍が陸海でカナダの拠点を1週間以内、早ければ2日程度で制圧し得ると想定されています。ブルームバーグは、「こうした動きは、第2次トランプ政権下で、長年の同盟国である米国とカナダの関係が急速に悪化していることを浮き彫りにする。両国が武力衝突したのは1812年の米英戦争が最後で、当時は英領植民地だったカナダが米国の進軍を撃退した」と、200年以上も前の両国の紛争にも触れていました。
金融市場でも米国離れが起きてきました。ブルームバーグによると、デンマークの職域年金基金アカデミカーペンションは、今月末までに米国債投資から撤退する計画だとしています。アカデミカーペンションのアナス・シェルデ最高投資責任者(CIO)は20日、「米国の政府財政は長期的に持続可能ではなく、米国は基本的に良いクレジットではない」とブルームバーグに対して語っています。アカデミカーペンションは教員や研究者向けに約250億ドル(約4兆円)の資産を運用しており、シェルデ氏は、「2025年末時点で米国債を約1億ドル相当保有していた。米国債の保有を続けているのはリスクと流動性の管理だけが理由で、それに代わる選択肢を見いだすことは可能だと判断した。米国の政府財政は長期的に持続可能ではなく、米国は基本的に良いクレジットではない」と説明しています。この発言後、米国債は下げ幅を拡大し、10年債と30年債の利回りはこの日の最高値に達しました。
米国の債券市場の規模から見れば微々たるものですが、アカデミカーペンションの米国債撤退は、現在の政治情勢を踏まえると象徴的な動きと言えます。安全な投資先とは何かを機関投資家が見直しているさなかでもあり、トランプ氏の脅しを受け続ける欧州が報復措置として保有する米国資産を「武器」として利用するとのドイツ銀行によるリポートも最近公表されています。シェルデ氏は米国債からの投資引き揚げを決断するに至った数多くの理由の一つに、トランプ氏のグリーンランド領有要求を挙げていました。「財政規律に対する懸念や、ドル安も米国資産への投資縮小を正当化する。一度引き起こされた事態は、もう元には戻せない」と同氏は指摘し、「数カ月後には事態が好転し、落ち着いているかもしれない。トランプ氏は再選できないため、次期大統領はやや違う可能性もある。だが、5年や6年、10年ならどうだろう。欧州全体で、自立することが必要だとの強い認識が広がっていると思う」と説明しています。翻って、世界最大の米国債保有国の日本は、どのように説明出来るのでしょうか。トランプ大統領の政策が、無視できないほど大きな信用リスクを生んでいるとの懸念が広がっています。
本日は米国株の大幅下落を受け、日経平均株価も下げを加速させそうです。ドル円も下値を試す可能性が高いと思われますが、一方で上述のように、米国債が売られ金利が上昇することが、ドル円の下落をどの程度緩和するのか、難しい判断です。ドル安・円安・ユーロ高の展開とも言えそうです。
本日のドル円は157円~158円80銭程度を予想します。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は朝方157円台半ばまで売られたが、その後米金利の上昇に伴い反発。(イメージ写真提供:123RF)
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2026-01-21 10:30