コーポレート・ガバナンス改革の進展によって国内株は長期にわたり魅力的な市場に=マン・グループの日本株ポートフォリオ・マネジャーの見方

 グローバルなオルタナティブ資産運用会社であるマン・グループが運用する欧州最大級の規模を誇る日本株アクティブファンド「Man Japan CoreAlpha」のポートフォリオ・マネジャーであるスティーヴン・ハーゲット(Stephen Harget)氏(写真)が2月19日、日本のメディア向けの説明会を開催し、今年の日本株式市場の見通しや進行中のコーポレートガバナンス改革の影響等の注目すべきテーマについて語った。ハーゲット氏は、「日本の株式市場は、マクロではデフレからリフレへの環境変化があり、企業ベースではコーポレート・ガバナンス改革が進んでいる。この2つが同時に進行し、日本株式市場は10年、20年にわたる長期の構造的な変化が始まっている」と日本株に対して中長期に魅力的な市場であるという見方をしている。その日本株市場の中から大型株を中心に「逆張り」「バリュー」という2つの着眼点を軸として綿密な企業調査を続けている。  マン・グループの代表的な日本株投資戦略である「Man Japan CoreAlpha」を採用している国内株公募ファンドは、あおぞら投信が設定している「ジャパン・コア・アルファ」がある。2024年12月10日に設定された比較的新しいファンドだが、2026年1月末時点の過去1年間のリターンが35.71%となっており、同期間の代表的な国内株インデックスファンド(「TOPIX型」30.89%、「日経225型」36.98%)と互角のリターンを残している。リスク(標準偏差)がインデックスファンドよりも低く、運用の効率性を示すシャープレシオは3.03とインデックスファンド(「TOPIX型」2.86、「日経225型」1.58)を大きく上回っている。  ハーゲット氏は、日本の市場は歴史的に「逆張り投資」が報われてきた市場であるにもかかわらず、「近年はAI、防衛、ゲームなどに関する少数のモメンタム株が市場のけん引役となる従来とは異なる性格の市場になっていた」と振り返った。ただ、2026年になってゲーム関連株に売り圧力が強まっている他、一部のAI関連株に対しても懐疑的な見方が出てくるなど、足元で伝統的な「逆張り投資」が報われる市場環境になりつつあると語った。そして、逆張り投資家の視点でみると、現在の市場においては「金融」「自動車」「実物資産」「国内ディフェンシブ株」などに投資妙味が大きいとした。  「金融」については、「これまで市場の注目を集めてきた銀行や損害保険会社よりも、証券に魅力が大きい」とした。「証券会社は依然としてバリュエーションが低く、かつ、株式市場が史上最高値を連続して更新する好調を持続していること、急増するM&A、コーポレート・ガバナンス改革に支えられた企業の事業ポートフォリオ再編の活性化から恩恵を受ける。また、国内経済がリフレにシフトし、家計部門の保有資産を現金から投資にシフトすることが求められており、この点でも証券に追い風になる」と解説した。また、国内長期金利の上昇によって生命保険会社にも投資妙味が出てきているとした。  「自動車」は中国との競争激化、EVシフトなどを背景に厳しい環境にあることに加えて2025年4月に発表された米国の相互関税によって一段と株価が下落したことで「株価は歴史的な安値圏」になったとした。そして、25年7月に日米貿易合意が発表されたにもかかわらず自動車株の株価の戻りは鈍かったため、一段と割安な水準になったとしている。ただ、関税の影響は不透明で対応策がとれない状態から個別企業の対応に移ってきていること、また、世界的なEVシフトがガソリン車や日本が得意とするハイブリッド車の見直しが始まっていることから、自動車株に魅力が増しているとした。  また、世界的に通貨価値のき損などによって「実物資産」の価値が相対的に高まり、地政学リスクの高まりからも実物資産への資金シフトが続いている。この傾向は、商社や建機、鉱山機械、石油精製、鉄鋼などの業界に追い風になるとした。そして、「サナエノミクス」などを追い風に株高基調が続いている時には、通信や食品、小売りなどの内需関連は市場の関心から外れがちで割安になっている。これら国内ビジネスは中国との競合とは隔離され、また、通信などは金融やデータサービスという新たな分野に打って出るなど企業変身の魅力も高まっているとし、内需関連の出遅れ銘柄にも魅力的な銘柄が少なくないとした。  このように国内株式に魅力的な投資対象が増えていることは海外投資家の国内株への投資意欲を刺激している。海外投資家の日本株現物の買い越し額は2025年に約5.4兆円と2024年比で35倍という規模に達した。ただ、アベノミクス当時の海外投資家の参入と比較すると、依然として投資額の水準は低く、今後一段の拡大が期待されるとした。  一方、日本株のリスクとしては、日銀の金融正常化の動きが鈍く、金融正常化のペースが遅い結果として円安が進んでいることをあげていた。現在の市場コンセンサスでは半年ごとの利上げを見込んでいるが、「加速が必要」との見方だった。日銀は2025年12月に政策金利を0.75%に引き上げ1995年以来の高い金利水準にしたとはいえ、インフレを考慮した実質金利は依然としてマイナスになっている。この上、円安による輸入インフレが実質金利を一段と押し下げるようなことは避けたい。今後のベストシナリオは、「日銀の上手な金融政策のかじ取りによってインフレが抑えられ、賃上げの進展によって実質所得が上昇することによって日本国内の景況感は上向いて株式市場にとって大きな追い風になる」とし、日銀による適切な政策判断が重要とみていた。  ハーゲット氏は、日本株の魅力について「コーポレート・ガバナンス改革が進展していることは、欧米の市場にはない日本独自のストロング・ポイント」として高く評価している。改革のフェーズは、低PBR(株価純資産倍率)企業の公表などを通じて改善を促される段階から、資本効率向上のための非中核資産の売却や持ち合い株式の解消といった「より本質的な構造改革に深化している」と評価している。そして、2026年半ばに予定されているコーポレート・ガバナンス・コードのさらなる大幅改訂では、「余剰資金」問題に焦点があてられる見込みとなっており、この改訂を通じて国内企業のROEの水準がもう一段上昇することが期待されるとした。このことが長期にわたって国内株の魅力を維持する力になると期待していた。
マン・グループのポートフォリオ・マネジャーであるスティーヴン・ハーゲット氏(写真)が2月19日、今年の日本株式市場の見通しを語った。
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2026-02-20 10:45