10兆円ファンド到達で「インデックスシリーズ」が新展開、手数料率引き下げ競争から投資アイデア勝負に

 2026年2月9日時点で「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(愛称:オルカン)の純資産残高が10兆円を突破した。一足早く1月7日時点で業界でETFを除くと初めて10兆円の大台を突破した公募投信になった「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」と合わせ、三菱UFJアセットマネジメントが設定する「eMAXIS Slim」シリーズは他の低コスト・インデックスシリーズを圧倒する残高を獲得している。購入時手数料を無料とし、運用中の手数料である「信託報酬」の水準を競うように引き下げてきたインデックスファンドシリーズの競争は、ひとまず「eMAXIS Slim」シリーズの勝利といえる。運用会社の動きも「信託報酬引き下げ」に競争から一線を画した「投資アイデア」を競う競争に移行しているようだ。  「eMAXIS Slim」シリーズが突出しているのは、「オルカン」の純資産総額の推移に象徴的に表れている。「オルカン」の設定は2018年10月31日。純資産総額が1兆円の大台を突破したのは2023年4月14日で、4年6カ月を要した。そこから1年8カ月後の2024年12月17日に5兆円を突破。さらに1年2カ月後に10兆円の大台にのせている。残高増が加速している。このスピードは、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が2024年6月24日に5兆円の大台を突破し、そこから1年半で10兆円の大台を超えたスピードを上回っている。  公募株式投信(ETF除く)の残高は2024年12月末で140兆9198億円。2026年1月末には179兆2067億円へと約27%増加しているが、この間に「オルカン」は倍増(100%増)したことになる。全体の成長スピードの3倍の速さで成長している計算だ。「オルカン」や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が他のファンドにはない支持を受けていることは残高の推移から明らかだ。  インデックスファンドの残高(2026年2月24日時点)では、SBIアセットマネジメントの「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」が約2兆5720億円。楽天投信投資顧問の「楽天・全米株式インデックス・ファンド(愛称:楽天・VTI)」が約2兆2490億円。三菱UFJアセットの「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(除く日本)」が約1兆1660億円、アッセットマネジメントOneの「たわらノーロード先進国株式」が約1兆1060億円で「オルカン」らと合わせて合計6本の1兆円超ファンドがある。  また、残高9000億円台と1兆円に迫るファンドも「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」(設定は三菱UFJアセット)、「ニッセイ外国株式インデックスファンド<購入・換金手数料なし>」(ニッセイアセットマネジメント)、「iFreeNEXT FANG+インデックス」(大和アセットマネジメント)の3本がある。このように1兆円超えや1兆円に迫るファンドを多数生み出してきたのが、インデックスファンドの低コスト化競争の結果といえる。  低コストの象徴は「オルカン」の信託報酬率0.05775%(税込み)にある。残高9000億円以上のファンドで比較すると、オルカン同様に全世界株式(MSCI-ACWI)に連動をめざす「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」が0.05775%。そして、「S&P500」への連動をめざす「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が0.0814%、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」が0.0938%、先進国株式(MSCI-KOKUSAI)に連動をめざす「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(除く日本)」、「たわらノーロード先進国株式」、「ニッセイ外国株式インデックスファンド<購入・換金手数料なし>」が揃って0.09889%になっている。ここまでが年0.1%以下(税込み)で提供しているインデックスファンドの代表格のファンドになる。  そして、注目されるのは残高が9000億円をこえる巨大なインデックスファンドでありながら「iFreeNEXT FANG+インデックス」は0.7755%とケタの違う手数料率になっている。これほど高い手数料率が容認されているのは、ファンドのパフォーマンスが圧倒的に優れているからだ。2026年1月末を起点とすると、過去3年のトータルリターンが「iFreeNEXT FANG+インデックス」は247.35%と、「オルカン」の102.04%や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の111.53%を大きく上回っている。優れたパフォーマンスを提供できれば、手数料率を大幅に引き下げなくても残高が1兆円を超えるような大型化が可能であることを証明した。  より高いパフォーマンスをめざすと、投資銘柄数を少数銘柄絞り込む、あるいは、特定の投資テーマに特化した商品などになる。2025年11月に設定された「ニッセイ・S米国グロース株式メガ10インデックスファンド(愛称:メガ10)」は米国の超大型グロース企業10銘柄で構成されるインデックスファンドだ。信託報酬率は年0.385%に設定され、2025年2月までに残高が500億円を超えた。  また、「たわらノーロード フォーカス 防衛・航空宇宙」も2025年11月に新規設定されている。「防衛」というテーマに特化したインデックスファンドで信託報酬は年0.77%だ。「たわらノーロード フォーカス」シリーズは「AI」、「次世代通信」、「ロボット・テクノロジー」、「フィンテック」が信託報酬年0.495%で出ているが、信託報酬率が高い「防衛・航空宇宙」がもっとも残高を集めている。  そして、アムンディ・ジャパンは「(アムンディ・インデックスシリーズ)欧州・戦略的自律株(愛称:でかユーロ)」を2026年2月に新規設定した。「ユーロネクスト欧州戦略的オートノミー指数」という欧州の自律性強化に関する10テーマに関連する企業で構成されたインデックスに連動をめざす。実質的な信託報酬率は年0.6255%だ。  新しいインデックスファンドは、まだ運用期間が短いためにパフォーマンスを評価する段階にはない。今後、パフォーマンスの点で代表的なインデックスを大きく上回るような成果を示せれば、「iFreeNEXT FANG+インデックス」のような大型化も可能だ。手数料率だけでなく、投資のアイデアでも競い始めたインデックスファンドのシリーズ展開に注目したい。
2026年2月9日時点で「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(愛称:オルカン)の純資産残高が10兆円を突破した。(イメージ画像提供:123RF)
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2026-02-25 11:15