FRONTEO、「トヨシバ方程式」で世界の創薬を大変革

 FRONTEO <2158> は今後の成長に向け、AI(人工知能)創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory(DDAIF)」を中心としたライフサイエンスAI事業に注力している。「DDAIF」の中核には同社の豊柴博義取締役・CSO(Chief Science Officer)が考案した「トヨシバ方程式」で駆動するAI「KIBIT」がある。創薬に関して世界的に突出した成果を実現しており、同事業は今2026年3月期の下期(25年10-26年3月)には黒字化する見通しだ。来期には本格的な成長局面に入り、これまで主力だったリスクマネジメント事業(ビジネスインテリジェンス・コンプライアンス支援分野、リーガルテックAI分野)に代わり、同社の成長をけん引する存在となりそうだ。  「DDAIF」は同社独自技術を活用したAI創薬支援サービス。数万件にも及ぶ膨大な文献情報を解析し、2万-3万個といわれる遺伝子に関連する標的分子の中から、創薬の成功確率が高い標的分子を迅速に抽出できる。さらに、文献に記載されていない疾患と標的分子の関連性を独自のアルゴリズムで解析し、人間の「ひらめき」に近い非連続的な発見を体系的に導き出せる点が特徴だ。この「ひらめき」のもととなっている独自のアルゴリズムが「トヨシバ方程式」だ。  「トヨシバ方程式」があるからこそ、「DDAIF」はスーパーコンピューターを使わず、CPU(中央演算処理装置)のみで文書や単語を意味を保持したまま解析できる。単語同士、文書同士などあらゆる組み合わせについて数百次元のベクトル計算を実行し、「ひらめき」で生まれるような、まったく新しい発見につながる仮説的推論を導き出す。結果として、医薬品開発の設計図ともいえる仮説を提示できる。「DDAIF」は使用電力量も圧倒的に少なく、効率性にも優れる。  一方、生成AIを含む既存の手法ではサブワード処理をしてもなお計算量が膨大となりGPU(画像処理半導体)が必要となるものの、仮説的推論は不可能だ。つまり、生成AIは業務の効率化には有効だが、新しい科学的発見はできない。これに対し「トヨシバ方程式」を使った「DDAIF」は「ひらめき」もあって創薬にかかわる画期的な標的分子候補を抽出できるだけでなく、その後に適応症や作用機序などの情報を裏付ける仮説の生成まで行える。さらに作用機序の解析を通じ、関連疾患のゲノム情報や新薬の安全性、実験モデルの提案まで一貫した仮説とパスウェイマップの作成も可能だ。  「『DDAIF』は創薬に関するシステムではあるが、創薬からというより、数学的なアプローチでAI構築を進めたことから、これまでにはない『方程式』を生み出せたのかもしれない。結果として創薬の成功確率の飛躍的な向上につながった」(豊柴博義取締役・CSO)。  事実、25年7月には「DDAIF」を活用して、約2万個のヒトの全遺伝子の中からすい臓がんの標的分子候補として17遺伝子の抽出に成功した。このうち、4遺伝子はこれまですい臓がんとの関連性を示す論文がなく、残りの2遺伝子も1論文における報告にとどまるなど、極めて新規性の高い結果となった。従来の手法であれば、こうした標的分子の探索には2年以上かかるケースもあるが、今回はわずか2日で結果を導き出したという。  こうした成果を背景に、23年7月のサービス開始以降、「DDAIF」の活用は急速に広がっている。当初は大手製薬会社などと特定の研究テーマや疾患単位で研究開発を進める「共創プロジェクト」をスタートし、その後は同社主導で仮説や創薬標的を創出する「自社研究・共同研究」へと発展。このような流れの中で、24年には同社を起点に各分野のスペシャリストと連携する「FRONTEO共創型創薬エコシステム」を構築し、創薬開発プロセスをワンストップで対応できる体制を整えた。  26年3月期の「共創プロジェクト」の受注は第3四半期(25年10-12月)末の段階で21案件と、通期KPI(重要業績評価指標)の10案件を大きく上回った。「FRONTEO共創型創薬エコシステム」の拡大も追い風となり、ライフサイエンスAI事業は売上高が増加し、下期の黒字化が見込まれている。また26年には、日本化薬 <4272> と同社が保有する創薬アセット(創薬候補化合物や開発中・上市済みの医薬品など、事業価値を持つ医薬関連資産)の価値最大化を目的とした共創プロジェクトも開始した。  「DDAIF」の新たな取り組みとして、共創プロジェクトを発展させた「包括的共創モデル」がある。2月には丸石製薬(大阪市)と創薬研究開発に関する戦略的業務提携契約を締結した。これは、従来のように特定の研究テーマや疾患に限定せず、製薬企業の研究開発の基幹機能として「DDAIF」を活用するというもの。両社で創薬戦略を構築し、導入判断から研究開発、育薬・LCM(Life Cycle Management)までを横断的に支援し、継続的なパイプライン創出と、創薬開発のスピードと成功確率の向上を支援する。  さらに2月には、「DDAIF Innovation Bridge」も開始した。これは、国内バイオベンチャーが創薬シーズを自社開発し、事業化へとつなげる過程で直面する課題の解決を図るサービス。バイオベンチャーは新薬開発にあたり、資金不足で追加検証・再実験が実施できない、再資金調達のロジックが立ちにくいなど数々の問題に直面することが多い。それに対し、同社は資金提供だけでなく、「DDAIF」を使って機序仮説の強化などを実施し、導出に向けた価値付与から成功確率の向上を支援する。  「『包括的共創モデル』『自社研究・共同研究』『共創プロジェクト』『DDAIF Innovation Bridge』の4ビジネスモデルをベースに、収益獲得スキームの幅が広がっている。今後は大手製薬会社との契約金のほか、導出に伴う一時金、研究の進ちょくに応じたマイルストーン収入、新薬上市後のロイヤルティー収入などが期待でき、ライフサイエンスAI事業は中・長期的な非連続成長が見込めるだろう。また、当社がかかわる創薬標的の中で、26年度中に導出できるものもあるかもしれない」(同社の守本正宏社長)。  さらに、「DDAIF」の可能性は、同社の業績成長をけん引するだけにとどまらない。世界的に標的分子の枯渇が指摘される中で、「DDAIF」を使って新規性の高い有望な標的分子候補を迅速に、続々と見つけ出すことで、世界の創薬市場に劇的な変化をもたらすこともありそうだ。将来的には薬を必要とするすべての人に適切な薬が届く世界を実現するとともに、日本の医薬品産業を自動車、半導体に次ぐ基幹産業へと押し上げ、「日本を再び創薬の地」へと導くことも期待される。
 FRONTEO <2158> は今後の成長に向け、AI(人工知能)創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory(DDAIF)」を中心としたライフサイエンスAI事業に注力している。「DDAIF」の中核には同社の豊柴博義取締役・CSO(Chief Science Officer)が考案した「トヨシバ方程式」で駆動するAI「KIBIT」がある。創薬に関して世界的に突出した成果を実現しており、同事業は今2026年3月期の下期(25年10-26年3月)には黒字化する見通しだ。来期には本格的な成長局面に入り、これまで主力だったリスクマネジメント事業(ビジネスインテリジェンス・コンプライアンス支援分野、リーガルテックAI分野)に代わり、同社の成長をけん引する存在となりそうだ。
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2026-03-17 09:15