経営改革で一段と投資魅力を高める日本株に世界の投資家が注目する=フィデリティ投信が日本株セミナー開催

フィデリティ投信は3月17日、「フィデリティ・日本株メディアセミナー」を開催し、中東地域での地政学リスクの高まりによって動揺する世界の市場の中でも好調なパフォーマンスをキープする「フィデリティ・日本バリューアップ・ファンド」を紹介した。セミナーでは、同社取締役副社長兼運用本部長である鹿島美由紀氏(写真:左)が日本株式市場の現状について概括し、ディレクター・オブ・リサーチの王子田賢史氏(写真:中央)が足元の日本経済と日本株式市場の現状を解説。ヘッド・オブ・エンゲージメントの井川智洋氏(写真:右)が同社が展開するエンゲージメント活動の実際について説明した。
鹿島氏は、現在の日本株式市場を2012年12月にスタートした「アベノミクス」を起点とし、2023年3月の「東証の資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の要請」をきっかけとした第2フェーズにあると語り、「東証要請を受けた企業変革は進展してきたとはいえ、企業価値の向上が表面化するのはこれから」として日本株市場の一段の上昇が期待できると語っていた。その上昇を支えるのが、アベノミクスによって転換された金融、財政政策によって日本の名目GDPが拡大し、デフレからインフレに転換したこと。そして、賃金が上昇し、企業の投資が拡大するという好循環が続き、企業業績は2026年3月期で5年連続で最高益更新を達成する見通しになっている。
また、2026年1月に施行された「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払いの遅延等の防止に関する法律(取適法=以前の通称は下請法)」によって中小企業の利益率の改善が期待されることが、日本経済全体の底上げにつながり、企業業績や賃上げの押し上げが期待できると語っていた。そして、割安な状態にある日本株に対しては中東情勢の緊迫化で世界の株式市場が動揺した3月においても海外投資家から需要があり、「国内投資家は海外投資家が動くと、その動きに追随する傾向が強い」として株式の需給の面でも今後の需要増大が期待できると語った。
◆日本株が行き過ぎた米国株投資「是正」の受け皿に
王子田氏は、日本株市場の現状についてさまざまなデータを用いて解説した。たとえば、日本企業の12カ月先予想1株当たり利益(EPS)については、アベノミクスが始まった2012年12月を起点として米国と比較すると2026年2月末まで終始日本が米国を上回っていることを示した。また、東証要請に基づいて日本企業の改革によってROE(資本収益率)は向上しているが、これまで「10%のカベ」が存在していて10%を超えられないできたものの「遠くない将来に『10%のカベ』を突破して一段とROEを高めるフェースにはいるだろう」と見通した。その予測の背景として説明したのが、ROEの水準別構成比の過去6年(2020年~2025年)の推移で、ROEが0%未満、また、0%以上4%未満という相対的に低い企業のTOPIX(東証株価指数)構成比が徐々に減少し、代わって、ROE8%以上12%未満、12%以上という高い企業の構成比が上昇していることを実績値で示した。
また、日米の株価を比較すると、12カ月先予想PER(株価収益率)の水準は、2011年以降で米国(S&P500)が徐々に上昇していることに対し、日本(TOPIX)は10倍~20倍のレンジの中を横ばいで動いている。このため近年の日本株の割安感は強まっている。そして、PBR(株価純資産倍率)も同様に米国は緩やかに水準が上昇し、2011年当時は2倍程度だったものが2026年には5倍程度にまで上昇。これに対して日本は1倍~1.5倍程度の低い水準で横ばいとなっており、日本株の割安さが際立っている。また、株式の益回りと実質10年金利のスプレッドを比較してみても日本はプラス圏(金利水準に対して株価が割安)にあるが米国は2023年以降マイナス(金利水準に対して株価が割高)であり、この点でも日本株に魅力があるとした。その上で、米国株は全世界株式インデックス「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」の国別構成比が2010年当時は42.6%だったものが2026年には61.6%と約20%増加している。この間、日本は9.0%から5.4%に低下した。「現在、世界の投資家の間で米国株への偏重を分散化する必要性が議論されており、分散先の受け皿として日本株は十分に選ばれる可能性がある」と語っていた。
エンゲージメントについて井川氏は、グローバル投資家として独立系の運用会社であるフィデリティは「企業価値向上のために、その会社にとって何が必要なのか率直に伝えることができる」とし、さまざまなデータや事例に基づいて具体的に改善策を提案しているという。そうしたフィデリティの姿勢が企業からも評価され、数年にわたる継続的な面談、また、提案内容を真摯(しんし)に検討してもらえるような関係になってきたと語った。そして、エンゲージメントによって企業理解も一段と深まっているとした。井川氏は、エンゲージメントを通じて日本企業に今求められていることは「厳格な投資規律の必要性」と指摘した。日本企業は投資拡大を進めているが「無規律な成長投資による資本コストの上昇は、すべてのキャッシュフローの現在価値を押し下げる」として規律ある投資が今後の日本企業の成長を支える重要なポイントになると語っていた。
フィデリティ投信は3月17日、「フィデリティ・日本株メディアセミナー」を開催した。(写真は、左からフィデリティ投信の鹿島美由紀氏、王子田賢史氏、井川智洋氏)
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2026-03-18 12:30