中東紛争で改めて意識される分散投資、「新興国ポラリス」を運用するピクテ・ジャパンが考える「リスクプレミアム」とは?

米国とイスラエルによるイラン攻撃によって原油価格が急騰し、世界の株式市場が大きく揺らいでいる。市場変動に対して資産を守ることが意識される局面になってきた。投資信託の評価機関であるウエルスアドバイザーが毎年発表している「Wealth Advisor Award 2025 NISA成長投資枠」においてピクテ・ジャパンが設定・運用する「ピクテ新興国ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド(愛称:新興国ポラリス)」は「WA優秀ファンド賞」を受賞している。2025年12月末時点において「成長投資枠」に登録されている2092本(ETF、DC、SMA、限定追加型を除く)のファンド中から、アクティブファンドに限定した1453本をユニバースとし、ウエルスアドバイザー独自の定量分析、定性分析に基づき、より中長期の資産運用にふさわしいと判断された合計10本のファンドに選定された。ピクテ・ジャパン代表取締役社長の萩野琢英氏(写真:左)にウエルスドバイザー代表取締役社長の朝倉智也氏(写真:右)が市場変動期における資産運用のポイントについて聞いた。 ◆トップクラスの運用成績を継続 朝倉:「ピクテ新興国ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド『愛称:新興国ポラリス』」は2023年9月に設定し、設定来トータルリターン・シャープレシオともトップクラスです。類似ファンド分類でも常にトップティアに位置しており、素晴らしいパフォーマンスだと思います。難しい相場環境になっていますが、この状況の中でこれだけ良いパフォーマンスを上げられている秘訣、それも含めて当ファンドの特徴を教えてください。 萩野:新興国への投資には、「3つ」の重要なポイントがあります。まず1つ目は、マーケットに波があるため価格変動が大きくなりやすく、まずはそのブレをいかに避けるかという点です。2つ目は、資産の組み合わせです。債券も現在リターンが高いですし、市場環境の変化に応じて、資産をしっかり組み合わせることが大切になります。 3つ目は、最も重要になりますが、下落時のリスクをいかに抑えるかという点です。  それらを踏まえて考えたのが「新興国ポラリス」です。一番のポイントは、「割安なものに投資をする」という考え方であり、その投資対象を「リスクプレミアム」と定義しています。  リスクという価格変動特性に対して、どれぐらいプレミアムが乗っているのか、リターンの期待値からそれが割安かどうかをしっかり見ながら大胆に運用するというのがこの商品の特徴であり、今投資している資産配分がずっと同じ比率で続くわけではない、という点が特徴ですね。 朝倉:このファンドは株と債券と、あと金も入っている。そのアロケーションも結構変わってくるのでしょうか? 萩野:変わってきますね。実際には投資対象として、ほかの資産にも投資ができます。例えば金利が高くなり、将来的に金利が安定してくる局面では、債券の割合が大きく増える可能性もあります。また、金も常に上がり続けるわけではなく、長期的に下がる局面もありますので、そのタイミングで売却することもあります。こうした点をしっかり踏まえながら、「どこにリスクプレミアムが乗っているのか」を見極め、それに合わせて資産配分を大胆に変えていく運用です。 ◆80カ国以上の新興国株が投資対象 朝倉:株式の話から聞きたいのですが、新興国の株でも国の違いもありますし、この場合は高配当と、経済成長・人口が伸びるという国に絞られていますね。この考え方は面白いです。 萩野:実は、新興国のマーケットはアルファが取りやすい市場なのです。まだ成熟し切っていない市場なので、インデックスよりもアクティブの方が高いリターンを狙いやすいのです。そこに注目して、新興国に投資ができるファンドとして、高配当株と、経済成長・人口成長が見込める国の株式を主な投資対象としています。これら2つの大きな枠組みの配分も、市場環境に応じて柔軟に変えていきます。  当ファンドのファンドマネージャーは、ロンドンのマルチアセット運用チームで、ロンドンには新興国株・債券の専門チームだけでも約50名が在籍しています。ピクテは長年にわたって新興国株投資を行ってきましたから、カストディ(保管銀行)も自前で持っており、80カ国以上に投資することができます。  一般的に日本から行う運用では20数カ国程度が限界ですが、それとはまったく異なるストラクチャーになっているのです。 朝倉:やはり新興国って期待値というか夢があると思います。でも、やはりボラティリティが高いのでリスクマネジメントが重要で、やはりこういうバランスが必要なのですね。 萩野:新興国への投資を始めようとする時に、新興国株「1本だけ」だと、価格変動がご自身の許容範囲を超えた局面で、どうしても売却してしまうといったことが起こりがちです。その点、株式だけでなく債券や金などと組み合わせることで、ポートフォリオ全体としては相対的に安定しやすくなります。実は、このファンドの設定来の期間においては、新興国株のインデックス自体もリターンは良好です。  一方で、当ファンドの価格変動特性(ボラティリティ)の水準はおおよそ12%程度であるのに対し、新興国株全体は約18%程度ですので、ボラティリティを3分の2ほどに抑えることができています。特に相場が下落した局面を比較すると、その差はよりはっきり表れています。実際、当ファンドはそうした局面でも、インデックスと比べてそれほど大きくは下がっていないのです。 ◆地政学リスクの時代に重要性を増す「通貨分散」 朝倉:日本はテレビにしても新聞にしても、「日経平均」から始まって、米国の「ダウ」とか「S&P500」の情報に偏り、どうしてもなかなか新興国への関心が向かないですよね。本当はこのような新興国を持って分散するということが重要ですね。 萩野:やはり今後、日本人が投資をする際にまず考えるべきなのは、「通貨分散」をしっかり行うことだと思います。通貨と聞くと、まず自国通貨である円、そしてドルを思い浮かべる方が多いのですが、足元ではドルそのものにも揺らぎが生じていて、ドルから他の地域の通貨へ資金を移し始めている投資家もかなり増えてきています。  特に、今回の米国によるイランへの攻撃なども含めて、そうした地政学的な局面で「どの通貨を持つべきか」を考える際には、先進国通貨だけでなく、新興国通貨も保有しておくことが非常に重要な時代になってきていると考えています。 朝倉:確かに日本の場合は、失われた20年・30年の時は「デフレ」でした。今は「インフレ」になり、すぐにデフレには戻らないでしょうと。なおかつ先進国の中では、GDPに対する政府債務というのが圧倒的に多いということになると、当然やはり金利が上がらざるを得ないような状況になってきます。円もさらに弱くなった場合というのは、日本の投資家は何か防衛しなければならないですよね。 萩野:過去を振り返ると、1970年代のイギリスでは、自国通貨だけでなく周辺国も巻き込むかたちで、通貨の信認が大きく揺らぐ非常に厳しい時期が一度ありました。日本も、将来的に同じような局面に直面する可能性はゼロではないと考えています。そうした事態に備える意味でも、円だけに偏らせるのではなく、他通貨への分散、つまり「通貨分散」をしっかりと考えていく必要がある、というのが私たちの基本的な認識です。 ◆「金(ゴールド)」に投資する意義 朝倉:このポートフォリオで非常に特徴的で面白いと思いましたのは、通常の分散は、株・債券ということで、さらにオルタナティブ、例えば不動産・金という話もありますけど、このファンドには結構な比率で金が入っていますよね。3割ぐらい(2026年2月27日付:月次レポート時点)。ここもやはり重要な資産クラスとして考えていかなければいけないということですかね。 萩野:今後10年、20年、30年といった長い将来を断定してお話ししているわけではありませんが、少なくとも今の環境においては、金というのは非常に重要な資産クラスだと考えています。ピクテは約200年にわたる運用の経験の中で、株式と債券だけではなく、さまざまな資産を組み合わせなければならない局面が何度もありましたが、いままさにそうした局面に入ってきていると見ています。  背景にあるのは、大きく三つです。第一に物価の上昇、第二に地政学リスクの高まり、そして第三に各国の中央銀行が紙幣を“刷り過ぎてきた”という点です。  おそらく景気が後退した局面では、各国の財政はさらに悪化していきます。その状況で国債を発行すると、その主な買い手は再び中央銀行となり、結果として通貨供給が一段と増えることになります。  こうした環境では、「金が上がっている」というよりも、「通貨の価値が金に対して下がっている」と捉える方が実態に近いと思います。 金の供給量は年間2~3%程度しか増えない一方で、各国の通貨供給はそれを大きく上回るペースで増えてきました。そのため、通貨の価値が下がっているのであって、金そのものが一方的に上がっているわけではない、という理解をしていただきたいのです。こうした認識に立って、私たちは金に対して強気のスタンスをとっています。 朝倉:確かに先進国の場合は政権が変わるたびに財政再建はなかなかしづらいですね。日本も積極的財政と言っているわけですから、それなりにやはり出していくことになると、ますますお金の価値というのは下落しそうですね。だからそういった守りを固めるためにもやはりこのようなファンドを持っておくということが重要なのでしょうね。 萩野:将来的には、金の比率を大きく減らす局面もいずれ来るだろうと考えています。  そのようにダイナミックにアロケーションを変えていく際に、リスクに対してどれくらいプレミアムが乗っているかを常に意識する――そこが、このファンドの戦略上の大きな特徴の一つです。ですから、常に同じ比率で運用しているわけではない、という点を改めてご理解いただければと思います。 ◆「米国偏重」から分散を図る選択肢 朝倉:日本の投資家でいうと、まずNISA等の非課税口座から始めていくと思います。NISAが2種類あって、他には401Kという形でもありますけどね。多くの日本の投資家が今キャピタルフライトとして向かっているのはアメリカだと思うんですよね。 萩野:そうなんですよ。「S&P500」、それから「全世界株式インデックス」もありますが、実は全世界株式も約7割が米国株、しかもグロース株中心です。そう考えると、そうした「米国偏重」の投資家の方々にとっても、本ファンドは新興国資産や金などを組み合わせることで、適切なアセットアロケーションや通貨分散を図る一つの選択肢になり得ると考えています。 朝倉:まさしく、そういう考え方もあって作っていただいているのですね。NISAで投資をしている人でも米国株の比率ってかなり高いでしょうしね。 萩野氏:その国選び・通貨選びを長年にわたって行ってきたファンドマネージャーが運用を担当し、さらにロンドンには50人以上の新興国専門家が在籍していて、日々議論を重ねています。 こうした体制は日本国内ではなかなか例がなく、1950年代ごろから新興国を見てきたという長い経験も含めて、しっかりと商品を提供できていることが当社の大きな強みだと思います。 朝倉:改めて振り返ってみますと、昨年の年間トータルリターンの32.18%は、すごく高いですね。 萩野:はい。当ファンドは「バランス型」と呼んでいただいていますが、「バランス型」というと、どうしてもリターンはそれほど高くないのではないか、と敬遠される方がこれまでかなりいらっしゃいました。しかし昨年は、米国株式市場の年間リターンがおおよそ16%程度、日本株はそれを上回る水準でしたが、当ファンドはその日本株よりも高いパフォーマンスを出すことができました。   要は、資産配分の「選択」がうまくいったということですね。株式でもかなり高いリターンが得られましたし、金も同じくプラスに貢献しました。さらに、債券からも十分にしっかりとリターンが出ています。こうした一つ一つの資産クラスについて、結果的に良い選択ができたことが、最終的に30%超のリターンにつながりました。 ◆長期で投資できる商品 朝倉:リスクマネジメントをしっかりやっていただいて、ボラティリティを抑えるマネジメントをしていただいている。為替の通貨のヘッジなんかも機動的にされたりとかもありますね。 萩野氏:そうです。為替やヘッジ比率も含めて、かなり大胆に水準を変えていますが、新興国の個別銘柄選びというのは本当に難しいんです。機関投資家であっても、そこまで細かく対応できるところは多くありませんから、個人の方が同じことをやるのは現実的ではありませんよね。 朝倉:そのような意味では全体のアロケーションの中で、当ファンドは是非持っていただいて。もうそのまま置いていただくくらいです。 萩野:積み立てでも構いませんので、まずは保有を始めていただくことが大事ですね。そのうえで、その資産をプロがしっかりと運用していきます。投資信託の良いところは、ファンドの中身を入れ替えた時点ではキャピタルゲイン課税が発生しないという点です。  新興国や金は、日々上がったり下がったりと値動きがありますから、普通であれば、そのたびにリバランスを行うことになります。どちらか一方に大きく偏ってしまった時には、また少し配分を調整しなければなりません。その際に利益が出ていると、個人で行う場合には、その都度課税されてしまい、およそ20%程度の税金が取られてしまいます。 そこで、あえて「バランス」という1つのカテゴリーのファンドとして設計したことも大きな特徴の一つで、これは個人の方にはなかなか難しい部分なんです。  どうしても、価格が上がると「そろそろ売ろう」と考えて、早めに利益を確定してしまいがちですよね。金についても、すでにかなり上がっているので「さすがに高過ぎるのでは」と感じる方もいれば、「いや、ここから本番だ」と考える方もいる。そうした判断はやはり簡単ではありません。その時々の出来事によって、見通しや判断を変えていく必要がどうしても出てきますから、いまお話ししていることが、例えば1ヶ月後、3ヶ月後も同じことを言い続けられるかどうかは分かりません。特に現在は、米国とイランの問題など、さまざまな変化が起きています。そうした変化に応じて ポートフォリオをしっかりと変えていくことが、実は非常に重要な時代になっていると考えています。 朝倉:そのような意味で、本当の分散の一つとして、非常に魅力が詰まっていると思いますので、ぜひツールとして使っていただけるといいですね。 萩野:この「新興国ポラリス」は、私とピクテの資産運用部門のトップが、さまざまな議論を重ねながら最終的に作り上げてきたファンドです。設定は2023年9月で、その当時は新興国資産の人気が乏しく、割安感が強かった時期でした。  また同時に、利回り水準も高かったことから、長期で投資できる商品として設計しました。このファンドは10年、20年という時間軸でしっかりと成長していくと考えていますので、ぜひ皆さまには、長期投資という観点からじっくりとご活用いただければ本当にうれしく思います。
ピクテ・ジャパンの萩野琢英氏(写真:左)にウエルスドバイザーの朝倉智也氏(写真:右)が市場変動期における資産運用のポイントについて聞いた。
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2026-04-01 13:30