【投資戦略2014】SMBC日興証券、前半に好材料集中し年央高

  SMBC日興証券チーフ株式ストラテジストの阪上亮太氏は、2014年の前半に株式市場にとっての好材料が集中すると指摘し、年央高の相場を見通している。主な好材料は、FRB(米連邦準備制度理事会)による金融緩和の縮小、日銀による追加金融緩和、そして、外国人投資家が注目している日本企業のベースアップ。一方、後半になると、消費税引き上げの影響や米中間選挙が懸念材料になるとした。 ――2014年の日経平均株価の上値とその時期は?   日経平均株価では2万円をうかがう展開を想定しています。TOPIXベースで来期の予想EPSは90ポイント弱ですが、これは、1ドル=100円も織り込みきれていない水準です。来年はさらに円安に進む可能性が高いうえ、設備投資など内需の回復や、円安による輸出競争力の改善などを考慮すると、TOPIXの予想EPSは100ポイント弱にはなると考えます。ピークを付けに行くタイミングではオーバーシュートも考えられ、PER16倍で計算するとTOPIXは1600ポイント。NT倍率を12倍とすれば、日経平均株価で2万円がみえてくることになります。この高値は5月ごろに付けるとみています。   年央高のポイントは、年前半に日本株にとって、3つの大きい好材料が集中するためです。1つめは、米国景気が強いとみられること。また、FRBによる資産購入の減額がドル高要因になってくる。2つめは、日銀による追加金融緩和。4月30日の展望レポートを公表する会合や、消費税引き上げに伴う悪影響を見極めた年後半の追加緩和というのが標準的シナリオかもしれませんが、いまの日銀は、緩和によるアナウンスメント効果でマーケットを動かし、物価の上昇や実体経済の好影響を生み出す政策が中心。マーケットの予想しているタイミングで動いても効果が限定されることを踏まえると、それよりも早く追加緩和を打ち出す可能性があると言えるでしょう。   3つめは、賃上げに関するニュースの増加です。いまの外国人投資家は日本の賃金動向に大きな関心を持っています。今年の日本株高は「アベノミクスによる為替の動きが全て」というのが多くの外国人投資家の認識ですが、これに持続性をもたせる、あるいはデフレ脱却に確信が持てるようになるには内需の回復、特に賃金の上昇が必要です。為替による効果もそろそろ頭打ちですが、賃上げの動きが見えてくるのであれば、もう一段上を試すことになるでしょう。   ニュースが増えるか否かですが、政府がプレッシャーをかけているため、ゼロ回答というのは考えにくく、ベースアップに関するニュースは何かしら出てくるでしょう。大手企業がベースアップに踏み切り、ほかの企業も追随すれば、ベースアップが広がりをみせると考えています。 ――2014年後半に注目しておきたい懸念材料は?   年後半になると、日経平均で1万7000円を割り込む場面もありそうです。後半の懸念材料のひとつは、消費税引き上げです。引き上げ直後の4月や5月は、小売各社の月次速報で2ケタ減収もあり得るでしょうが、すでに想定の範囲内です。肝心なのは6月以降の戻りの強さで、これが数字として見え始めるのは7月以降になります。   また、秋には米国で中間選挙があります。いまは休戦状態ですが、選挙通過後、ねじれ継続ならば、本格的に民主党と共和党の激突が起こると予想されます。一方、民主党が上下院を制した場合、財政規律の悪化に歯止めがかからなくなる可能性が高まり、米国債券利回りの急上昇というリスクが発生します。どちらにしてもマーケットにとって好材料にはなり得ないでしょう。   リスク要因は新興国です。新興国の通貨は米国の債券利回りの動きとリンクしていますから、FRBがマーケットとのコミュニケーションに失敗し、債券利回りが急上昇することになれば、新興国の通貨安を招くでしょう。通貨安はインフレ率を上昇させます。先進国とは違い、新興国の場合、インフレが景気悪化の要因になりやすい。景気が悪化すれば通貨安となり、通貨安となればインフレ率が上昇と、負のスパイラルに陥りやすいので、注意が必要です。   このほかのリスク要因では、行き過ぎた円安です。円安による交易条件の悪化はすぐに顕在化しますが、円安による国際競争力の回復は時間がかかります。交易条件の悪化をカバーするまでに企業の競争力が回復してこないと、経済に打撃を与えかねません。また、欧州における銀行の資産査定も注視しておきたいものです。たとえばグローバルプレイヤーのドイツの銀行と、ギリシャのコミュニティバンクが、一律で資産査定をしてしまうようだと、貸し渋りや貸し剥がしの恐れが出てくるでしょう。 ――来年の注目セクターやテーマは?   銀行、小売、設備投資関連です。同じリフレ関連でも、銀行は不動産よりもパフォーマンスの格差が開いています。貸し出しの伸び悩みや利ざや拡大が見えてこないというのが銀行株の重しになっていますが、設備投資が回復してくれば、能力増強投資も増え、貸し出しも増えてくるでしょう。   百貨店や専門小売、ゲームメーカーや旅行関連なども軸になりそうです。また、設備投資関連では、ITサービスが出遅れており、注目です。工作機械株やリース株はすでに反応していますが、上昇余地は残されていると考えています。   また、注目のテーマは業界再編です。12月に産業競争力強化法が成立しました。国が事業再編などを促す方法で、賛否両論はあるでしょうが、再編が必要でも起こりにくい状況のなかでは起爆剤になる可能性があると思っています。(編集担当:宮川子平)
SMBC日興証券チーフ株式ストラテジストの阪上亮太氏は、2014年の前半に株式市場にとっての好材料が集中すると指摘し、年央高の相場を見通している。主な好材料は、FRBによる金融緩和の縮小、日銀による追加金融緩和、そして、日本企業のベースアップ。(写真は、阪上亮太氏。サーチナ撮影)
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2013-12-27 10:45